「ナイブズアウト」は、2020年に公開された映画。
すでに数多のトリックや推理が出尽くされていて、20年前に隆盛した探偵物はすっかりなりを潜めていたけれど、古参も新参も満足できる1作が出てきた。
ベタなストーリーと見せかけてきちんと練られたトリックには一見の価値あり。 奇をてらい過ぎない王道の名作。
74点
「ナイブズアウト」映画情報
タイトル | ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 |
公開年 | 2020.1.31 |
上映時間 | 130分 |
ジャンル | ミステリー |
主要キャスト | ジェイミー・リー・カーティス アナ・デ・アルマス |
監督 | ライアン・ジョンソン |
「ナイブズアウト」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ブノワ・ブラン -私立探偵 | ダニエル・クレイグ |
ランサム・ドライズデール -リンダとリチャードの息子 | クリス・エヴァンス |
マルタ・カブレラ -ハーランの専属看護師 | アナ・デ・アルマス |
リンダ・ドライズデール -ハーランの長女 | ジェイミー・リー・カーティス |
ウォルター・“ウォルト”・スロンビー -ハーランの末っ子 | マイケル・シャノン |
リチャード・ドライズデール -リンダの夫 | ドン・ジョンソン |
ジョニ・スロンビー -ハーランの義娘 | トニ・コレット |
エリオット警部補 | ラキース・スタンフィールド |
ハーラン・スロンビー -小説家 | クリストファー・プラマー |
メーガン・“メグ”・スロンビー -ウォルターとドナの娘 | キャサリン・ラングフォード |
ジェイコブ・スロンビー -ハーランの長男 故人 | ジェイデン・マーテル |
ドナ・スロンビー -ウォルターの妻 | リキ・リンドホーム |
フラン -スロンビー家の使用人 | エディ・パターソン |
アラン・スティーヴンス -弁護士 | フランク・オズ |
ワネッタ・“グレート・ナナ”・スロンビー -ハーランの母。年齢不詳 | K・カラン |
ワグナー巡査 | ノア・セガン |
「ナイブズアウト」あらすじ
NYの豪邸で世界的ミステリー作家の85歳の誕生日パーティーが開かれた翌朝、彼が遺体で発見される。名探偵ブノワ・ブランは、匿名の人物からこの事件の調査依頼を受けることになる。パーティーに参加していた資産家の家族や看護師、家政婦ら屋敷にいた全員が第一容疑者。調査が進むうちに名探偵が家族のもつれた謎を解き明かし、事件の真相に迫っていく―。
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「ナイブズアウト」ネタバレ感想・解説
「ナイブズアウト」人物相関図
まず、スロンビー家の人物相関図を把握しておこう。
殺されたハーランは85才の誕生日を迎えていた。ハーランの妻については言及はないけれど、3人の子供がいる。
まずはハーランの長女、リンダ。
彼女はちょっとした物音でも目が覚めてしまう。トリックのアリバイ作り担当だ。ミステリートリック縛りにおける大事な要素の1つを持つキャラクターだ。
続いて次男のウォルター。ハーランから出版社を任されているけれど、小説の映像化の反対など、あまり自由にやらせてもらっておらず不満が溜まっていて、誕生日にハーランから会社をクビにされている。
もう1人は、長男にニール。しかし彼はすでに死別している。
この3人がハーランの家族。この3兄妹はみんな結婚している。リンダの夫はリチャード。ハーランに浮気の証拠を押さえられている。
ニールの妻、ジョニ。会社を経営しているようだけど金銭的に困っている。娘の大学費用をハーランから二重にもらっていたのがバレてしまう。
そしてドナ。ウォルターの妻だけど、今回の作品には大して関わらない空気のような存在。犯人候補にはうってつけのような立ち位置にいるけど、本当に何も関わらないかわいそうな役目。
次に彼らの子供達。リンダとリチャードの息子ランサム。
一家の問題児で誕生日当日もハーランと口論になっている、推理小説としてはまず最初に疑われる人物だ。
ジョニの娘のメグ。そしてウォルトの息子は16才で、ナチズムへの傾倒が観られるジェイコブ。
そして最後にハーランの母親、ナナ(年齢不詳)だ。
複雑な家族構成でもないのだけれど、アメリカ人は見た目で年齢が分かりにくいので、人物相関は知っておいた方が話がスッと入ってくる。
あとは、ハーランの専属看護師でもある実質主人公のマルタとスロンビー家で働く使用人フランでスロンビー家は構成されている。
犯人は早々に判明する
「ナイブズアウト」では、犯人は早々に判明する。マルタだ。ただし、恣意的に犯した犯罪ではなく、医療ミスによる過失致死という設定。
劇薬にもなるモルヒネとそれ以外の薬のパッケージが似過ぎていて間違えたということで、これだけ似ているなら毎回パッケージ確認するのが当然のような気もするけれど、まぁこの問題はラストのネタバラシで一応の説明がある。
マルタはウソをつくと吐いてしまうという設定で、真実を悟られないようにしなければならないという流れに持ちこみ、観客を楽しませる。
何をもってウソになるのか、デスノートばりに曖昧な設定なのだけれど、いつブランに核心に触れられるかわからないまま一緒に行動されられることでちょっとしたドキドキ感を味わえるのもこの映画のおもしろい要素の1つ。
早々にブランが「君は犯人じゃないよね?」と聞けば瞬殺するわけだけど、これまた探偵話によくある「最初から疑っていた」が発動されて、あえて泳がせていたということで一件落着。
ハーランはなぜ、マルタに全財産を渡したのか
犯人はわかった。じゃあ次はどういう展開になるかというと、「ブランに悟られないようにする」という視点に変わる。トリックですら完全にネタバレしているので、この時には観客が推理できるのはせいぜい、「誰がブランを雇ったのか?」ということぐらいだ。
マルタの吐き待ちみたいなシーンを経た後に、まさかの全財産をマルタに譲るというサプライズ。ハーランがマルタにとてつもない信頼を寄せていて、家族がお金によってバラバラな状態を防ぐためにした行為とはいえ、なかなか酷な展開へ。
そして、予想通り全財産をとられた家族が「それなら仕方ないよね」となるわけもなく、マルタになんとか財産分与を諦めさせようと必死になりはじめる。ここが3つ目の見どころ。
ハーランの急死により専属看護師のマルタは職を失うことになりそうだった。ただ家族はマルタの功績を買って今後も面倒を見たいと言っていたのに、遺産のおかげで余裕満々に助けてあげたいと言っていたのに、立場が完全に逆転してしまった。
確かに急な変わり身は見ていて醜いところもあるのだけれど、さすがに不憫にも感じる。実の子どもには一切財産を渡さずに、看護師に全部あげちゃうと言われたらそりゃ混乱もするし、マルタさんちょっと分け前ちょうだいねってなるのも気持ちはわかる。
ハーランは、マルタが私利私欲のためだけに使うのでなく、家族のことを考えてくれることを見抜いていて、そもそも親身になってくれたマルタのことが好きだけど、ハーランは自分の子どもを愛していたし、だからこそ家族が堕ちていくのを避けたかったから金を渡さないことにした。
つまり、ハーランが出来なかった財産分与の意思をマルタに継がせようとしたのだ。
すると、もともと財産分与しないと言われていたランサムがうまいことマルタに迫り、真実を話させるところからまた話が変わっていく。
マルタを脅迫したのは誰なのか?
マルタが家に帰ると、名前も書かれていない封筒が置いてあった。そこにはハーランの血液検査の結果とともに、「おまえがしたことを知っている」とのメッセージがあった。
マルタは、誰かが知っていると怯え、それをランサムに伝えて助けを請う。実はこれはランサムの仕業だった。
ランサムは、ハーランがマルタに遺産を相続させることを知ったため、薬の中身を入れ替えてマルタに過失致死の罪を着せようとしていた。
ランサムと言えば最初に真っ先に疑われそうな怪しい人物であり、推理小説で言えば「かませ犬」的な役割なんだけれど、「ナイブズアウト」ではそのまま犯人だという裏の裏をついてきた。
昨今の推理小説はほんとうに大変。。
フランはなぜ殺されたのか
フランはランサムに殺されていた。ランサムはフランに薬をすり替えているところを見られて、脅されていたから。
なぜ、あんな危ない場所に呼び出すのかというミステリー特有のご都合主義も健在で。
彼女が死をマルタに発見させた後に、匿名で電話してマルタに罪を着せようとしたが、警察に逮捕されて未遂に終わってしまった。
ベタな展開を逆手にとったストーリー
なぜこの映画が評価されるかというと、推理小説としては露骨にベタベタな設定や展開を含みつつも、うまく逆手にとったネタバラシをしているから。
私立探偵が警察よりも幅をきかせ、トリック成立のためにロボットのように正確に動くリンダの覚醒設定。
唯一の目撃者ナナの信憑性のない断片的な証言。
ランサムというあからさまに怪しい人物の投入と、お金にまつわる家族の動機付け。
それらを全て逆手にとってネタバラシを早々にしたかと思うと、推理小説では絶対に犯人にならないはずのランサムがやっぱり犯人だというオチ。
最後は安心の「最初からあなたを疑っていた」という探偵の鋭い観察力。
水戸黄門のように安心できるベタな展開に加えて、きちんと観客を驚かせる仕掛けもつくり満足させる作品となっていた。
あと、マルタがかわいい。
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