NOPE/ノープは、2022年のSFホラー映画。
エイリアンの侵略映画は多々あるが、いまだ現実世界には現れていない。この映画は、UFOに魅了され、富や名声を得るために正体を追いかけた人間たちの話である。
オプラというアフリカ系アメリカ人のように有名になり、金を稼ぎたいと宇宙人の映像をカメラに収めようとするO.J兄妹や、未知なる遭遇を期待する家電屋の男、そして映画撮影を目的としたものなど、UFOを巡って数多くの人間たちが右往左往する。
いわゆるSFホラーにあたるわけだが、「ゲットアウト」や「アス」のように人種問題とホラーをうまく掛け合わせた不気味さを期待していると肩透かしを喰らうだろう。
いろいろな背景や裏の意図を理解すると楽しめる映画だ。
NOPE/ノープは、数あるUFOの正体に新たな選択肢を与えた映画の一つである。
冒頭に差し込まれるチンパンジーの暴力事件の意味も含めて、「NOPE/ ノープ」に秘められたメッセージ性と、2つの事件の関連性について書いていく。
NOPE/ノープ
2.7点
SF,ホラー
ジョーダン・ピール
ダニエル・カルーヤ
- 2022年版、UFOの正体とは?
- 「ゲットアウト」「アス」の監督が贈るSFホラー
- 怖くないホラー映画でストーリーが弱め
- エヴァンゲリオンなど、日本のアニメをオマージュ
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映画「NOPE/ノープ」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
O.J | ダニエル・カルーヤ |
エメラルド | キキ・パーマー |
トーレス | ブランドン・ペレア |
アントレス | マイケル・ウィンコット |
ジュープ | スティーブン・ユアン |
オーティス・ヘイウッド・シニア | キース・デビッド |
映画「NOPE/ノープ」ネタバレ考察・解説
UFOの正体とは?
(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
「NOPE / ノープ」はUFOの正体に迫った映画。古くからUFO(未確認飛行物体)にまつわるSF映画は人気を博してきた。
スティーブン・スピルバーグの「未知なる遭遇」や「E.T.」、近年では「メッセージ」などUFOを物体とした映画は今もなお登場している。
UFOが登場する意味は主に2つ。
- 地球の侵略
- 人類との対話
敵対するか歩み寄るかに分かれるのだが、「NOPE/ノープ」は少し異なる。目的は捕食なのだ。侵略ほど大きな目的もない。そこにあるのは生存本能による行動のみだ。
しかし、基本的にUFOはあくまで乗り物である。UFOという器に入る何者かがいるのが前提だ。それは銀色で目が大きくて細い姿をしているとは限らない。
人のような形をしている場合もあれば、クリーチャーみたいな化け物もいる。「クワイエット・プレイス」では異形の姿をした怪物だった。
「NOPE/ノープ」はそのどれとも異なる。UFOと思われる物体そのものが意志をもつ怪物だ。
それは雲に擬態する昆虫のようでもある。「ジーンジャケット」とニックネームをつけられたクリーチャーは、擬態しながら空をさまよい、捕食する。それは人間だけでなく、馬や鉄、木材、さまざまな素材を飲み込んでいく。
飲み込まれたものは「ジーンジャケット」の中で溶かされ、吸収され、分解されなかったものが糞尿のように空から落ちてくるのだ。
O.Jの父親が鉄くずの雨に打たれて死んだのは、「ジーンジャケット」の糞尿が原因である。
つまり、UFOの正体は巨大な獣であり、それ自体が意思を持って動く生き物なのである。
エヴァンゲリオンなどのアニメをオマージュ
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同じように意思を持って動くクリーチャーと言えば、エヴァンゲリオンを連想させる。使徒も意思を持つ生き物の一種だ。
視覚効果のスーパーバイザーをつとめたギョーム・ロシェロンは、「ジーン・ジャケット」の形について「地球が静止する日」の影響を受けたと語っている。
しかし、この雲に擬態した「ジーンジャケット」は、エヴァンゲリオンの使徒にもにている。
ジョーダン・ピール監督は、エヴァンゲリオンのファンだということを公言しているため、「ジーンジャケット」は使徒にインスパイアを受けているとされている。
それは第4使徒のシャムシエルや、第5使徒のラミエルのようでもあり、第10使徒サハクィエルのような上空から攻撃するタイプの使徒にも似ている。
AKIRAのバイクシーンもしっかり取り入れられていて、AKIRAに関しては、ジョーダン・ピール監督がインタビューの中ではっきりと語っている。
また、「鋼の錬金術師」に登場するこちらのショットは、O.Jが住んでいる家を思い起こさせるだろう。
このように日本のアニメにインスパイアを受けた映画がNOPE/ノープなのである。
チンパンジーの意味とUFOの関連性
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「NOPE/ノープ」はホラー映画を期待していると楽しめないと冒頭でも伝えたが、もう一つ、UFOの存在とチンパンジーの出来事がうまくミックスせずに消化しきれない点も楽しめない要素に含まれる。
UFOが物体ではなく生物なのはわかった。その発想はおもしろいわけであるが、チンパンジーの事件とは繋がっていないように見える。
しかし、チンパンジーの事件は、映画の冒頭で描かれるほど重要な意味合いをもつ。チンパンジーと「ジーンジャケット」は獣という共通点があるのだ。
その共通点をもとに、古くから人間がチンパンジーを飼い慣らしてきた経緯から、人間が獣を飼い慣らすリスクについても描かれている。
冒頭の文章で聖書の一節が表示される。
わたしは、お前に憎むべきものを投げつけ お前を辱め、見せ物にする。
人間に飼い慣らされたチンパンジーが、シットコムコメディの撮影中に暴力沙汰を起こすというシーンが差し込まれる。
チンパンジーのゴーディのテレビ番組に出演し、殺戮をまぬがれた唯一の出演者がジュープである。
ゴーディは、ジュープに気づいたが、暴力を振るわれなかった。獣と信頼関係を築けたという勘違いに基づく成功体験は、ある意味でジュープに自信を植え付けることになった。
だから彼は、同じ獣の類である「ジーンジャケット」も飼い慣らせると考えていた。
ジュープは、馬をエサに「ジーンジャケット」を呼び寄せ、それを見せ物に呼び寄せようとしたのだ。
馬がO.Jの牧場から逃走したり、O.Jがジュープに馬を売り渡していたのも、「ジーンジャケット」が影響している。
しかし、ゴーディが風船が割れる音をきっかけに自然の姿に戻り暴れたように、飼い慣らされていない「ジーンジャケット」がジュープの言うことを聞くわけがない。
また、ジュープがゴーディに危害を振るわれなかった理由は、テーブルクロスのおかげで直接目を合わせることがなかったためであり、決して信頼関係を築いていたわけではない。
つまり、ジュープとゴーディの間には信頼関係があったわけでもなく、ただ運が良かっただけなのだ。目が合うという行為は、ジーンジャケットにO.Jが目を合わせないことで、攻撃を回避していたことからも、その類似性が読み取れる。
また、ジュープが自身の展示室に飾るほど印象に残ったのは、犠牲となったメンバーの立ったままになっていたシューズ。トラウマ級の出来事に遭遇した場合、ほんの小さな出来事が心の中に残ると言う。
猿の暴力は実在した事件なのか?
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2009年にトラヴィスというチンパンジーが、飼い主の友人を傷つけるという事件が起きている。
風船ではなく、トラヴィスが持っていた人形をあやまって掴んでしまったため、敵意を感じたトラヴィスが女性に暴力を振るった。
駆けつけた警官によって射殺されることとなった事件は、被害者が一命をとりとめたものの、NOPE/ノープに酷似している事件だ。
映画の中でも「ジーンジャケット」のショーを見に来た、ゴーディの被害女性と同じように、顔中にキズが残る重傷になったという。
「NOPE/ノープ」の面白さは、いろいろな背景や裏の意図を理解すると楽しめる。
しかし、ホラーを見に来たと思ったら、UFOの話を見せられて、ゴーディの関係性も分からぬままになってしまうと、非常に残念な映画になってしまうと感じた。
また、全体的にストーリーとしての魅力は不足していた感は否めない映画だった。
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