映画「ラストレター」 ネタバレ感想 ラストの手紙は希望か絶望か

映画「ラストレター」は、岩井俊二監督作品。

「リリィシュシュのすべて」「花とアリス」「スワロウテイル」など、映画に芸術とエンターテイメント性を持たせた日本でも重要な監督の1人だ。

小林武史の音楽にのせて、岩井俊二がキャストの魅力を120%にまで引き上げるのがこのタッグの醍醐味だ。

ストーリーはそれほど幸せな内容ではない。「リリィシュシュのすべて」なんかはイジメを題材としているため鬱展開のオンパレードだ。

しかし、それでも多くのファンを獲得しているのは、映画を芸術として表現する力とそれをエンターテイメントにのせて伝える力が圧倒的に突き出ているからだ。

彼らにかかると、主役はもちろん、助演、サブキャラ、モブキャラに至るまで、すべてにおいてひかり輝く

特に少年少女に対するみずみずしさ、自然体の演技を見せてくれることで、変に役者口調にならないのもリアル。

この映画でも岩井俊二による鬱ストーリーが花を咲かせるが、その雰囲気は若干優しく感じるように見える。

しかし、受け取り方によっては絶望ともとれるのだ。

ということで妄想全開で絶望だととれる理由を書いていく。

映画「ラストレター」予告

映画「ラストレター」あらすじ

裕里(松たか子)の姉の未咲が、亡くなった。裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美(広瀬すず)から、未咲宛ての同窓会の案内と、未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)と再会することに。

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映画「ラストレター」映画情報

監督岩井俊二
脚本岩井俊二
音楽小林武史
主題歌森七菜「カエルノウタ」
公開2020年1月17日
製作国日本
製作費
興行収入
受賞

映画「ラストレター」キャスト

岸辺野裕里松たか子
岸辺野裕里:幼少時代森七菜
遠野鮎美広瀬すず
遠野未咲広瀬すず
岸辺野宗二郎庵野秀明
岸辺野颯香森七菜
乙坂鏡史郎福山雅治
乙坂鏡史郎:幼少時代神木隆之介

キャストに福山雅治、松たか子、広瀬すず、神木隆之介と、誰が主役でもおかしくない豪華キャスト。

それに加えて、エヴァンゲリオンの庵野秀明というおもしろそうなキャストや、「天気の子」でヒロイン役を務めた森七菜の新しい若手の活躍が見られるため、キャストだけでいえば当たりとしか言えないだろう。

特に森七菜の透明感あふれる演出は、監督の手腕もあるが森七菜本人の湧き出る魅力によるところが大きいのだろう。

映画「ラストレター」ネタバレ感想

冒頭で書いたがこの映画を希望ととって良いのかはラストの解釈次第だ。

ストーリーは、乙坂鏡史郎が、高校時代に初恋をした未咲の周囲にいる人達と再開したり、未咲の娘と出会いながら、諦めかけていた小説家をもう一度目指すというもの。

話の流れは暗い部分もあるもののエンディングはプラスに転じている。

ではなぜ、絶望だと思うのか。

それは未咲が鮎美に宛てた遺書の中身に、卒業式の答辞が入っていたからである。

その中身はこうだ。

本日私たちは、卒業の日を迎えました。

高校時代は私たちにとって、おそらく生涯忘れがたい、かけがえのない想い出になることでしょう。
将来の夢は、目標はと問われたら、私自身、まだ何も浮かびません。
でも、それでいいと思います。
私たちの未来には無限の可能性があり、数え切れないほどの人生の選択肢があると思います。
ここにいる卒業生、ひとりひとりが、いままでも、そしてこれからも、他の誰とも違う人生を歩むのです。
夢を叶える人もいるでしょう。
叶えきれない人もいるでしょう。
つらいことがあった時、生きているのが苦しくなった時、きっと私たちは幾度もこの場所を想い出すのでしょう。
自分の夢や可能性がまだ無限に思えたこの場所を。
お互いが等しく尊く輝いていたこの場所を。
卒業生代表 遠野未咲

ラストレター 答辞全文

全校生徒の前で読んだこの答辞は、乙坂鏡史郎と一緒に考えたものだ。

若い頃のかけがえのない思い出なわけだ。

つらいことがあった時、幾度も想い出していたはずの答辞だ。

しかし、なぜ答辞を娘に宛てたのか。

母が一番輝いていたころを伝えたかったのか。

それとも、

つらい時も今の若い時を思えば乗り越えられると言いたいのか。

しかし、未咲の死因は自殺。

ほんとうに辛いことがあったときはどんなにかけがえのない想い出があろうとも乗り越えられないと言いたいのではないだろうか。

阿藤が言っていた。

子どものころ夢見た自分は、何かになれると信じていた自分は何者にもなれず、何者でもない自分をよしとした。

未咲も同じだ。阿藤から逃げられず、その場所で何者にもなれずただ過ごしていた。

美しい顔立ちと知性で人気のあった未咲は、学校生活という特別な場所で光り輝き過ごした場所と、今いる場所の大きな差に耐えかねて命を絶ったのかもしれない。

光り輝いていた日があったとしても、苦しみから逃れるわけではなく、世界には絶望しかないと伝えているのかもしれない。

そしてそれはあなたに語りかけられているのかもしれない。

「あなたは何者になれましたか?」

映画「ラストレター」を見たならこれもおすすめ

映画「ラストレター」は、岩井俊二と小林武史が手掛ける切ないラブストーリー。

豊川悦司と中山美穂が出演しているが、これは1995年に映画「love letter」から実に25年ぶりの共演となる。

他の映画も透明感がたっぷりで、美しい映像と儚い音楽に評価が集まっているのでぜひ見て欲しい。

芸術とエンタメを混ぜた作品としては「ア・ゴーストストーリー」も観て欲しい。

ほとんど会話のシーンがなく、映像と1つのメッセージだけで進むこの作品は負けず劣らずの芸術作品だ。

映像の美しさを表現した「恋愛寫眞」もおすすめ。

カメラマンを目指す松田龍平と広末涼子が織りなす恋愛ドラマをとても美しく表現している。

かなり芸術的な要素が強いのだけれど、宮崎あおいと瑛太主演の「好きだ、」もいい世界観。

エンターテイメント性はかなり少ないので、人を選ぶ作品にはなるが宮崎あおいと瑛太のすばらしい演技を堪能できる。

「何者」というキーワードで話すと浅井リョウ原作の映画「何者」もおすすめ

高校の頃、何者になれると思っていた人たちが挫折する第一フェーズの就活をテーマにした鬱展開の映画です。

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