映画「Pearl パール」は「X エックス」の続編 スプラッターホラー ネタバレ考察・解説

パールは2023年のホラー映画。2022年に公開された「X エックス」のタイ・ウェスト監督が制作したA24フィルム。

「X エックス」の続編にあたる作品であり、前日譚という位置付け。「X エックス」で登場した狂気の老女パールの若かりし頃を描く。

第一次世界大戦末期、厳しい家庭に育てられたパールがシリアルキラーへと変貌を遂げたきっかけを描いた作品。前作が好きならこれもみておきたい作品だ。

前作を観てないとついていけない部分はないので、「パール」を観た後に「X エックス」に繋げてもおもしろい。むしろその方が老女パールの心理描写の理解に深みが増すだろう。

ここでは、パールがなぜ、シリアルキラーに変貌したのか、当時の時代背景や、家族環境を説明しながら解説・考察していく。

映画「Pearl パール」キャスト

登場人物	キャスト
パール	ミア・ゴス
映画技師	デビッド・コレンスウェット
ルース	タンディ・ライト
パールの父	マシュー・サンダーランド
ミッツィ	エマ・ジェンキンス＝プーロ

映画「Pearl パール」ネタバレ考察・解説

なぜ、パールは農場を離れたかったのか？

(C)2022 ORIGIN PICTURE SHOW LLC. All Rights Reserved.

物語の始まりは1918年。第一次世界大戦も終わりにさしかかった頃で、テキサスの農場で暮らしていたパールの若い頃にスポットがあたる。

母親は敬虔なクリスチャンで、厳しいルールをパールに課していた。父親は戦争で障害を負ったことで介護なしには生きられない身体になっていた。

農場の仕事、父親の世話に追われていたパールだったが、町の映画館で映画を観ることが好きで、銀幕のダンサーになることを夢見ていた。

また、パールにはハワードという夫がいたが、戦争にいってしまい、生死も不明の状態だった。

結婚生活もままならず性欲は溜まるばかり、親からは抑圧を強いられ、不自由な世界から解放されたいという思いがパールの残虐性に繋がっていったのだ。

1918年はどんな時代だったのか？

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1918年は、第一次世界大戦の終戦の年である。実は、パールの家はドイツ人であったため、敵対するアメリカの地では肩身の狭い思いをしていた。

そのせいで日々の暮らしは安定せず、父親は障害を負って働けない状態だったため、貧しい暮らしが続いていた。

映画の冒頭で、アメリカ含む連合国の勝利という報せがはいる。しかし、戦争は終わったものの、スペイン風邪という流行病が始まっていた。

映画の中の人たちがマスクをしているのも、私たちにも馴染み深いパンデミックが発生していたからである。

•1918～1919年のスペイン風邪にはアメリカの人口の約25%が感染し、人口の0.65%にあたる67万5000人が死亡した。

Buisiness Insiderより引用

戦争・疫病からくる社会不安は、現代の私たちに身近に感じられるだろう。

なぜパールは人を殺すのか？

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パールはアヒルのような小動物を殺し、ペットとして扱うワニに餌としてあげていた。そこには罪悪感などなく高揚感すらあった。

しかし、ある日パールは禁忌を犯してしまう。口論中に母親の衣服に暖炉の火が移って大火傷を負った母親を、助けずに地下に閉じ込めてしまう。

自分を抑圧する者がいなくなった世界で、パールは自由を得た。

町の映画館で仲良くなった映画技師と肉体関係を結ぶ。ハワードと会えない中、パールは新たな出会いに興奮していた。母親という障害がいなくなったことで、パールのタガは外れていた。

しかし、家にやってきた映画技師がパールの暴力性を感じとり、そこから逃げ出そうとしたところを激昂して殺してしまう。

今までは小動物までしか手をかけていなかったパールは、母親がいなくなったこと、1人の人間を殺したことでシリアルキラーとして確立していくのだ。

ラストの意味

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ずっと農場で生きてきたパールは、ダンサーという夢を叶えるために、オーディションに臨む。そこで彼女は名声を手に入れるはずだった。しかし、結果は落選。

激しく落ち込む彼女をミッツィは励ますが、合格したのはミッツィだった。パールは、自分の殺人衝動を打ち明けるとともにミッツィを殺してしまう。

ミッツィは、パールが持っていないものをすべて持っている女性だったのだ。

これをきっかけに彼女はシリアルキラーの完全体となる。身体をぶつ切りにし、すべてワニの池に放り込んだ。そして、死体となった両親を椅子に座らせ、料理を作ってハワードの帰りを待つ。

ハワードが戦争から帰ってきたときのパールの笑顔は、私たちがずっと感じていた得体のしれない恐怖を存分に感じさせてくれる。

パールは「X エックス」の続編なのか？

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このエンディングから60年経過した舞台が「X エックス」である。

「X エックス」は、農場でただ1人生き残ったパールが老婆となって登場する。戦争が終わったハワードと暮らし、ダンサーとしてではなく、母親と同じような暮らしをしていた。

あのエンディングからどうしてハワードがパールと一緒に暮らすことができたのかは謎であるが、これは戦争とシリアルキラーの心理がほとんど近い位置にいるからかもしれない。

戦争でおかしくなった人間はたくさんいたという。第一次世界大戦は、死亡者数の最も多い戦争である。

ハワードの中にも狂気をはらんでいた。パールと同じく抑圧された世界で2人はともに狂い、ともに愛し合っていた。

というわけで60年後、狂気の殺人老婆として登場するわけだ。映画「パール」を観ると、パールが若い女性をうらやんでいた意味もわかるし、人一倍強い性欲にも納得感が増す。

パールは60年経っても何一つ変わらず、狂気のまま生きてきた。しかし、シリアルキラーにおいて少なくとも自分は普通ではないという自覚はあったし、映画技師を殺した最初の殺人は本人の中でも大きな出来事だった。

パールをシリアルキラーに導いたのは生まれつきなのか、環境要因なのか定かではない。しかし、良い人のはずのハワードが戦争で狂ったのだとしたら、パールもまた抑圧された家庭において狂っていった可能性が高い。

映像は昔のフィルムを思い起こすような懐かしのセットが並び、その美しさとスプラッターの感じが気持ち悪い映画だった。

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