新海誠監督の「天気の子」。
「君の名は」が社会現象となり、次の作品への期待度が大きく跳ね上がっていた新海誠監督。
いささか不安ではあったがそれはどうやら杞憂に終わったようだ。
気づいてみれば興行収入は140億を超えて2019年時点での歴代興行収入ランキングの7位に輝いている。
人気が分かるのは、興行収入だけでない。
映画好きが集うTwitterの2019年映画ベスト10でも邦画の中では1位、洋画を合わせても10位と大健闘している。
「君の名は」からの期待が大きく外れず、着実なファンを獲得したことが今回の結果に繋がったのだろう。
主人公は2人のティーンエイジの男女。
出会いから始まり、RADWIMPSの奏でる美しい音楽に合わせながら展開し、青春を楽しむ。
そこへ大きな問題が立ちはだかり、それを2人で解決していく。
ストーリーこそ違うが大きな展開に差はない。
そして映像美。アニメーションだからできる美しい描写は目を見張るものがあり、これこそがジャパニメーションと誇れるエンターテインメント作品なのだ。
さらに今回は東京の至るところが聖地となっており、いわゆる登場したスポットを巡る聖地巡礼の旅がしやすいのも特徴である。
「君の名は」がハマらなかったのなら、「天気の子」もハマらないだろうし、「君の名は」が好きなら好きになれる作品に仕上がっている。
映画「天気の子」予告
映画「天気の子」あらすじ
「あの光の中に、行ってみたかった」 高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。 しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。 彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。 そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。 ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らす少女・陽菜。 彼女には、不思議な能力があった。 「ねぇ、今から晴れるよ」 少しずつ雨が止み、美しく光り出す街並み。 それは祈るだけで、空を晴れに出来る力だった――。
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映画「天気の子」映画情報
監督 | 新海誠 |
脚本 | 新海誠 |
原作 | 新海誠 |
音楽 | RADWIMPS |
公開 | 2019年7月19日(日本) |
製作費 | 不明 |
興行収入 | 140億円 |
受賞 | アニー賞(ノミネート中) |
アカデミー賞(ノミネート中) | |
映画「天気の子」声優
森嶋 帆高 | 醍醐虎汰朗 |
天野 陽菜 | 森七菜 |
天野 凪 | 吉柳咲良 |
須賀 圭介 | 小栗旬 |
須賀 夏美 | 本田翼 |
須賀 萌花 | 香月萌衣 |
間宮夫人 | 島本須美 |
立花 冨美 | 倍賞千恵子 |
安井刑事 | 平泉成 |
高井刑事 | 梶裕貴 |
佐々木巡査 | 市ノ瀬加那 |
アヤネ | 佐倉綾音 |
カナ | 花澤香菜 |
占いおババ | 野沢雅子 |
ヒロインの森七菜は、2020年1月公開の映画「ラストレター」にも岸辺野颯香役として登場する注目若手俳優だ。
天気の子の興行収入と満足度
「君の名は」の興行収入は250億円を超え、日本の歴代興行収入と比較しても第2位の快挙を成し遂げた。
「天気の子」も超えることこそなかったものの大ヒットであることには間違いない。
日本の興行収入は100億円を超えて、2019年度No1となっている。(歴代7位)
興行収入が評価のすべてではないが、観客の評価も上々で、先日集計した2019年の映画ランキングでは
- 邦画で1位
- 洋画邦画合わせて10位
の快挙を達成している。
映画「天気の子」ネタバレあらすじ
女の子との出会い
天野陽菜は病院にいた。母親が入院していたため連れ添っていた。
東京ではここのところ雨が降り続いていた。窓から景色を見ていると、その中で太陽がある場所だけを照らしていた。
陽菜は気になってその場所を追い、ある廃ビルまでたどり着く。
ビルの屋上につくと、小さな神社があった。
陽菜は鳥居くぐった。ある願いをしながら。
すると、突然雨が止み天気が変わった。
森嶋 帆高は家出していた。船に乗り故郷の島を出ていた。
乗船中、大雨警報により、皆が甲板から避難する中、1人甲板に上がって雨を楽しむ。
すると土砂降りとは言い難いほどの雨の塊が降り注ぐ。足をとられた穂高は甲板から流されそうになるが、すんでのところで男に助けられる。
男の名は須賀圭介。助けたお礼にと食事をおごらされ、名刺を渡される。
穂高は東京に着くとネットカフェで寝泊まりしながら働く先を探す。しかし身分証明もない16歳になかなか働き口は見つからない。
夜ご飯はマクドナルドの飲み物のみ。
それを見かねたアルバイトの女の子がハンバーガーを差し入れしてくれる。
それが陽菜との出会いだった。
そのあとも、キャバクラなどで仕事先を見つけようとするも雇ってくれることはなかった。
ある日、その路地の一角のごみ箱からふいに拳銃をみつけてしまう。
おもちゃだろうと考えるも、お守り代わりとして持ち歩くことにした。
穂高は、どうしてもアルバイト先が見つからないため、須賀圭介のもとを訪れることにした。
須賀圭介は記者をやっていた。
未確認物体や都市伝説などについて取材をしながら記事をまとめていた。
穂高は仕事を手伝いながら住み込みで働くことにさせてもらった。
同じ事務所で働いていたいとこの須賀夏美とともに取材に出かける。その中で晴れ女という都市伝説を耳にする。
天気の子
ある日、穂高はチンピラに連れられる陽菜を見かける。
穂高は勇気を出して助けるも捕まってしまう。
チンピラに殴られ、恐怖と怒りと共にお守りがわりの拳銃を取り出して、チンピラに向けて撃った。
拳銃はホンモノだった。
チンピラも穂高も驚き固まる中、陽菜が穂高を連れて逃げる。
逃げた先はあの廃ビル。穂高は拳銃を持っていることが怖くなり拳銃をその場所に捨てた。
そこで陽菜が、穂高より2つ年上で次の誕生日で18歳になることを知る。
陽菜はマクドナルドをクビになり、お金に困っていてバイトを探していて、キャバクラに誘われていたのだ。
陽菜はビルの屋上にあがり、穂高に自分の力を見せる。
陽菜が願うと雨が降っていた東京を一瞬のうちに晴れにしていった。
それを見た穂高はあることを思いつく。
それは天気を晴れにしてお金を稼ごうというものだった。
それを陽菜に伝え、陽菜の弟の凪とともに実行することにした。
ネット上で募集すると、早速フリーマーケットを晴れにしたいという応募があった。
初めての仕事で緊張したが、晴れにすることに成功した。最初は全く信じていなかったイベンターもその実力を目の当たりにし、ものすごく喜んでくれた。
それからその実力がふれわたり人気が殺到していた。
応募してきた中の1つに立花瀧の祖母の家があった。昨年祖父が亡くなり初盆を迎えるため晴れにしてほしいというものだった。
そこで、穂高は陽菜の母親も昨年亡くなったことを知る。
晴れの代償
花火大会を晴れにしたいという大規模な依頼があった。屋上から陽菜が祈りを捧げると見事に周囲は晴れ、美しい花火があがった。
しかし、それがテレビに捉えられて依頼が殺到してしまったため、穂高たちは依頼を受けきれず休業することにした。
最後に依頼を受けたところは圭介の依頼だった。
圭介は妻を亡くしていた。圭介には娘がいたが義母に養育する能力が不足していると言われて一緒に住めなかった。
依頼は、喘息もちで雨の日になかなか遊べない娘のために晴れにしてくれというものだった。
陽菜が天気を変えて皆で遊んだ。
そこで一緒にいた夏美は晴れ女のことで知った都市伝説を陽菜に伝える。
帰る途中、陽菜が急に空に舞い上がる。
陽菜のカラダが消えかけていた。
都市伝説は人柱になるというものだった。世界を晴れにするために陽菜が人柱となり世界から消える。
陽菜もカラダの異変に気づいていたが、自分が誰かの役に立っていることがうれしく、また穂高といられることが楽しくて誰にも伝えていなかった。
そんなとき、警察が穂高を探していた。
拳銃を発砲した件と家出で行方不明の届けが出されていたためだ。
陽菜の家や、圭介の仕事場にまで警察が来るようになる。
圭介は、自分が親権を得るかどうかの微妙な時期だからと穂高を追い出すことにした。
また、陽菜の家も親がおらず子どもだけで暮らしていることで保護されようとしていた。
凪と離ればなれになりたくない陽菜は穂高と逃げる決意をする。
その日は雨が降り続き、東京中に深刻な警報が発令されていた。
あてもなくさまよう彼らだったが、子どもだけで泊めてくれるところはほとんどなかった。
警察に追われながらも、なんとかとあるラブホテルに辿り着き、3人で泊まることにした。
そこで穂高は誕生日プレゼントにと陽菜に指輪を渡す。
陽菜は喜び、そして聞いた。
「晴れになって欲しい?」と。
穂高は「うん」と答えた。
陽菜は着ていた服を脱ぐと、カラダの半分が消えかかっていた。
夜、陽菜は完全に消えて空に行ってしまう。
穂高と陽菜の決断
翌朝、陽菜が消えたことを知った穂高は探そうとするも、警察に捕まってしまう。
警察に陽菜を探させてくれと懇願するも、取り合ってはくれなかった。
そこで実は陽菜が自分より年下だということを知る。
穂高は警察に着くとスキをついて脱出する。
逃げている最中、夏美と出会い、バイクに乗って一緒に逃げた。
保護された凪もまた、彼女に手助けをしてもらい、施設を脱出した。
雨が降り続けた東京はそこら中が水没していた。
スクーターで進めなくなると、大雨の影響で停止してしまった電車の線路沿いに走り、廃ビルを目指した。
廃ビルには圭介がいた。
事情を知らない圭介はこれ以上自体を悪化させまいと穂高を止めようとする。
感情を抑えられない穂高は、以前捨てた拳銃に気づいて発砲する。
そこへ圭介を追尾していた警察がやって来た。
拳銃を持つ穂高を見て、穂高を取り囲む。
捕まりそうになる穂高を見て圭介も助けてしまう。そしてそこへやってきた凪も穂高を助け、穂高は1人屋上まで上がる。
屋上の鳥居をくぐると穂高は空に舞い上がる。
空の上で陽菜を見つけ、穂高は世界中が雨のままでも陽菜と一緒にいたいと伝える。
陽菜はもう一度願った。
東京はそれから3年間雨が降り続け、多くの地域が水没した。
穂高は保護観察処分とされ、執行猶予つきで故郷に戻されて高校を卒業した。
あれから陽菜には会っていなかった。
高校を卒業すると、東京へ向かった。
圭介の仕事場を訪れると、以前までの汚いビルに変わり、きれいなビルに住み、従業員を雇えるほどに事業は拡大していた。
圭介から夏美や凪が元気にやっていることを聞いて安心する。
陽菜の元へ向かう前に、以前初盆を迎えた瀧の祖母の元へ向かう。
家は水没して住めなくなっていて、マンションに引っ越していた。
責任を感じる穂高に祖母は言った。
東京も昔は海に沈んでいた。江戸時代のころから少しずつ今のように地形が変わってきたと。
この雨でまた昔に戻っただけだと。
穂高はついに陽菜のもとへ向かう。
陽菜はまだ祈っていた。
晴れにはならなかったが、祈り続けていた。
穂高は陽菜と再会し、喜びを分かちあいながらこの世界を生きることを決意した。
映画「天気の子」ネタバレ感想
「天気の子」は広告が非常に多かった。
この辺りは賛否両論別れるところだが私はおおむねポジティブな意見だ。
今回は、現実とうまく融合されているように見えたし、それに下手に企業をもじった違う名が出てしまう方が気になってしまう。
飲み物はサントリーだとか、カップ麺は日清のように限定され、それに気づいてしまうと違和感を覚え始めてしまうのですべてがうまくいくとは限らないが、これはこれで新たな映画の在り方の1つだろう。
映画業界も新しい試みを行っていると考えるとポジティブに受け止められる。
「君の名は」も同じように青春エンターテインメント作品であり、その青臭さはぬぐえない。
だが、ティーンエイジの男女が好きな人のために一生懸命になる姿はやはり見ていて気持ちがいいし、昔を思い出し、もしくはその願望が実現されるという意味では非常に出来栄えの良い作品だ。
大人のキャラクターのテンションもちょうど良かった。
若者の行動に対してあくまで客観的で冷静に話す彼らは、熱くなりすぎて観客が冷めてしまわないように演出されていた。
熱く語る穂高に対し、「うぜぇな」などぼそりとつぶやく刑事は、大人の大部分は共感を得ただろうし、穂高たちと同じ年齢層の若者は怒りを覚えるだろう。
就職先を探す大人と子どもの境界線にいる夏美は、両方の良いとこどりをしているところも良かった。
色々なキャラクターが幅広い層の観客に対して共感を得る部分を作るため、この映画は大成功を収めるのだろう。
歴代興行収入の多くを占めるジブリ映画よりも
- 分かりやすく
- 感動できる
- エンターテインメント
としてはやはり良い需要を掘り起こしていると思うし、この部分はプロデューサーの川村元気が大きく関わっているに違いない。
それに加えてアニメーションとしての完成度で新海誠監督のすばらしさがあいまって良い相乗効果を生み、今回の興行収入に繋がっている。
1つネガティブなことを言わせてもらうと、「君の名は」も「天気の子」もテイストは同じであった。
どちらを見ても良い作品だねとなるし、表現やメッセージはどちらも大差がないわけだ。
次回作品ではもう少し新海誠監督の色を濃くした作品を見させてもらえればと願う。
映画「天気の子」を見たならこれもおすすめ
2019年のTwitter上で人気が高かったほかの映画も抑えておこう。
同年に人気の高い映画は抑えておこう。
アニメ作品としては前年も人気の高かった「この世界のさらにいくつもの片隅に」。
前作「この世界の片隅に」の続編ではなくさらに30分程度の未公開シーンを加えた作品のため、すぐにレンタルで見たい方は前作でも全く問題ない。
「あの花」や「心が叫びたがってるんだ」の監督が描く「空の青さを知る人よ」も2019年は人気が高かった。
単純に泣きたいかたはこちらがおすすめ。2019年10月なのでまだレンタルが開始されていないから、先にこちらを見ておこう。
企画・プロデュースは川村元気。疾走感のある話の展開と分かりやすく感動的なストーリーで多くの人を魅了する。
「君の名は」にも関わっていて、アニメだけでなく多くの邦画に関わっているため観ておいて損はない。
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