「ノースマン 導かれし復讐者」は2023年公開の映画。
「ウィッチ」「ライトハウス」のロバート・エガース監督による北欧神話をモチーフにした壮大な歴史スペクタクルである。
9世紀ごろのスカンジナビア半島やアイスランドで活躍したヴァイキングにまつわる話でストーリーはシンプル。
王である父親を殺された仇を打つため、そして誘拐された母親を救い出すために、復讐に身を投じる物語である。
王道のように聞こえるが、単なるファンタジーアクションではない。生々しい殺戮の表現やスピリチュアルな世界観に関してはエガード節が炸裂している。
「ロード・オブ・ザ・リング」のような王道冒険アクションと思ってみると、面食らうだろう。
ストーリーの流れから元ネタとなった時代背景までを解説する
ノースマン 導かれし復讐者
(2023)

3.1点
アクション
ロバート・エガース
アレクサンダー・スカルスガルド、アニャ・テイラー=ジョイ
- 北欧神話をもとにしたアクション大作
- 「ライトハウス」のロバート・エガース監督最新作
- ただのアクションとしてみると物足りない
- ストーリーは単純だが、映像のクセが強い
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映画「ノースマン 導かれし復讐者」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
アムレート | アレクサンダー・スカルスガルド |
グートルン王妃 | ニコール・キッドマン |
フィヨルニル | クレス・バング |
オルガ | アニャ・テイラー=ジョイ |
オーヴァンディル | イーサン・ホーク |
預言者 | ビョーク |
ヘイミル | ウィレム・デフォー |
映画「ノースマン 導かれし復讐者」ネタバレ考察・解説
ヴァルハラとは
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「ノースマン 導かれし復讐者」は、ヴァイキングたちが活躍した時代の物語。
物語の中で、アムレートや、その父親たちが口にしていた”ヴァルハラ”という言葉。これは、北欧神話に住むオーディンの住む館の名前を指している。
「よろこびの家」とも呼ばれる。 540の門があり,各門とも 800人の騎士が並んで入れる幅をもつ。天井は目も届かないほど高く金色の楯 を並べたように輝いている。ここでは毎日,宴会が催され,食べきれないほどの料理や蜜酒が出る。
勇敢に戦った戦士たちだけが、死後、迎え入れられる場所であり、病気で死んだり老いた者たちは来られない場所とされている。要するに天国のような場所としてこの時代の戦士たちには認識されており、だからこそ父親は戦いの中で生きることを強く望んでいた。
この時代の北欧ではヴァイキングと呼ばれる海賊たちが権力を握っており、その残虐な侵略は、序盤で子どもや女性を焼き殺したシーンにもあらわれている。
現代社会でヨーロッパで広く伝わっているキリスト教はヴァイキングたちの生きる世界にはまだ届いていなかった。その代わりに普及していたのがオーディンを神とする北欧神話なのだ。
映画の中でも幻想的なシーンが多数存在する。これは北欧神話の世界観を取り入れているためだ。
この頃の時代背景な、マンガ「ヴィンセントサガ」をみるともう少し深く理解できる。
シェイクスピアのハムレットが元ネタ
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「ノースマン 導かれし復讐者」は、シェイクスピアの”ハムレット”を元ネタにしている。
“ハムレット”は、シェイクスピアの4大悲劇の1つであり、最高傑作と言われている。
父を毒殺し、母と再婚して王位についた叔父への復讐劇の中で、ハムレットの感情の揺れ迷いを描き出した作品
そもそも”ハムレット”の元ネタは、スカンジナビアに伝わる北欧神話のアムレット伝説からきているので、両者を混合したような内容だ。
なぜ、アムレートはオルガと離れたのか?
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叔父に父を殺され国を追われ、母を奪われたアムレートは復讐者となりヴァイキングの世界に身を投じる。
大人になり、ヴァイキングとして活躍していると、叔父のフィヨルニルがアイスランドに向かったことをつきとめたアムレートは、復讐のために単身で乗り込むことになる。
しかし、すでにフィヨルニルは他の侵略者に国を奪われていた。スカンジナビア半島を追われ、向かった先がアイスランドだったのだ。
国を取り戻すという復讐の1つを失ったアムレートは、さらに母親が叔父に父を殺すことを差し向けたという事実を知り、驚愕する。
復讐が生きるためのエネルギーだったアムレートの根幹が揺らぎはじめていた。
そんなアムレートに安らぎを与えたのはオルガだった。アムレートはオルガと一緒に生きることを選択し、アイスランドを離れようとする。
しかし、向かう途中、アムレートはオルガが自分の子を妊娠していることを知る。
アムレートは復讐の連鎖のことを理解していた。すでにフィヨルニルの息子を殺していたアムレートは、いずれ自分が見つかり、生まれてくる子どもも含めて皆殺しにされると考えたのだ。
それほどに復讐がもたらす負のパワーの威力は大きいものだとわかっていたため、その連鎖を断ち切るべく、フィヨルニルと、自分の母親も含めて殺すために戻ったのだ。
ラストはハッピーエンドなのか?
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アイスランドに戻ったアムレートは、母親もフィヨルニルも殺すことに成功する。しかし、フィヨルニルとは相打ちになることで、アムレートもまた死んでしまった。
死の間際、オーディンの館であるヴァルハラの門が開き、そこに向かうアムレートの姿が映し出される。つまり、勇敢に戦ったアムレートは、ヴァルハラに迎え入れられることになったのだ。
そして、北欧神話の世界を表すユグドラシルを連想させる巨大樹には、アムレートとその子供たちが繋がっていた。1人は王冠をかぶり、王を継承していた。
アムレートの血筋は途絶えずに未来へと繋がっていったのだ。その未来が見えたアムレートは微笑んでいた。
ストーリーは単純だが、アイスランドの美しい景色や生々しい表現の数々は見応えがあり、さすがはロバート・エガース監督といったところ。
1つ1つのシーンをじっくり楽しみ見たい映画だ。

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