映画「黒い司法 0%からの奇跡」は2020年に公開された映画。
無実の罪で収監された黒人ジョニー・Dと、その無罪のために戦った弁護士ブライアンの事実に基づくストーリーだ。
アメリカの黒人差別は少し日本人感覚には理解しにくい部分もあるけれど、この映画は日本でも起こりうる「冤罪」をテーマにしているので感覚的に分かりやすい。
映画としての盛り上がりはそれほど大きくはないけれど、実際にあった事件を知るには良作だった。
60点
映画「黒い司法 0%からの奇跡」映画情報
タイトル | 黒い司法 0%からの奇跡 |
公開年 | 2020.2.28 |
上映時間 | 136分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | デスティン・ダニエル・クレットン |
映画「黒い司法 0%からの奇跡」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ブライアン・スティーブソン | マイケル・B・ジョーダン |
ウォルター・マクミリアン | ジェイミー・フォックス |
エバ・アンスリー | ブリー・ラーソン |
ハーバード・リチャードソン | ロブ・モーガン |
ラルフ・マイヤーズ | ティム・ブレイク・ネルソン |
トミー・チャップマン | レイフ・スポール |
アンソニー・レイ・ヒントン | オシェア・ジャクソン・Jr |
リンジー・エイリフ | |
ジョン・マクミリアン | C・J・ルブラン |
ウッドロウ・インカー | ロン・クリントン・スミス |
ダグ・アンズリー | ドミニク・ボガード |
ジェレミー | ヘイズ・マーキュア |
ミニー・マクミリアン | カラン・ケンドリック |
ライナス | ドリュー・シャイド |
デヴィッド・ウォーカー | カーク・ボヴィル |
ジミー | テレンス・ローズモア |
映画「黒い司法 0%からの奇跡」あらすじ
黒人への差別が根強い 1980年代アラバマ州、犯してもいない罪で死刑宣告された黒人の被告人ウォルターを助けるため、新人弁護士ブライアンは無罪を勝ち取るべく立ち上がる。しかし、仕組まれた証言、白人の陪審員たち、証人や弁護士たちへの脅迫など、数々の差別と不正がブライアンの前に立ちはだかる。果たしてブライアンは、最後の希望となり、彼らを救うことができるのか―!? 可能性0%からの奇跡の逆転劇に挑む!
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映画「黒い司法 0%からの奇跡」ネタバレ感想・解説
黒い司法はアメリカの冤罪事件の実話
「黒い司法」はアメリカで実際に起きた冤罪事件元にした映画。場所はアラバマ州。いわゆる南部の黒人への差別が根深い地。
黒人というだけで犯人だと決めつけられ、死刑宣告をされた男を助けるために北部から来た黒人弁護士が南部で苦しんでいる人たちを助けようと、副題の通り奇跡を起こす映画。
冤罪を晴らすのが「0%の奇跡」というのは盛りすぎではないかと思いきや、全く盛っていないのが恐ろしい。
黒い司法の真犯人は?
1993年、州の最高裁判所にて無罪を勝ち取ったジョニー・D。ここまでの経過から無罪は明らかだった。じゃあ気になるのは真犯人。それは一体誰なのだろうか。
結論から言うと、犯人はわからないままの未解決事件になってしまっている。
それもそのはず、ジョニーDをめちゃくちゃな理由で犯人に決めつけて、証拠を捏造して解決済事件として捜査が終了してしまっているのだから。
事件の被害者は、ロンダ・モリソン。クリーニング店で働いている18歳の女性だった。
1986年11月、いつもと同様にクリーニング店で働いていたが、10:45にある客がクリーニング店を訪れたところ、店の中で倒れているロンダを発見した。衣服は乱れた状態だったというが性的暴行を加えられた後はなかったという。
解剖の結果3つの弾丸が検出された。
店のレジから金を盗まれていたため、当時の捜査では強盗事件として捜査された。しかし、服は破られていなかったけれど、服のボタンが外されて、ブラジャーは胸から外され、下着も降ろされた状態だったことから強盗ではなく性犯罪だった可能性が高いことが分かっている。
自分の娘が誰かに一方的に命を奪われ、犯人だと思われていた黒人は6年後に無実の罪だと分かった時の胸中は計り知れない。いっそのことジョニー・Dが冤罪であっても捕まっていてほしいと思ったのかもしれない。
6年で娘を失った悲しみが風化するとは到底思えないけれど、振り出しに戻されて、真犯人が見つかることも絶望的な状態となった両親は、一体誰を恨めばいいのだろうか。
黒い司法の差別は日本人感覚でも分かりやすい
人種差別、特にアメリカで起きている人種差別は日本人感覚では理解しにくいところがある。日本で差別がないとは言わないけれど、アメリカのような人種のるつぼと言われる場所はとても複雑だからだ。
でも「黒い司法」は日本人感覚でも理解しやすい。なぜなら「冤罪」という日本でも起こりうることがテーマになっているから。
日本で「それでも僕はやってない」という映画があった。それは痴漢の冤罪を取り扱った映画で、やってもない犯罪を認めなずに裁判を起こしたことで職を失い、周りから人が離れていく、人生が一変してしまうような悲惨な話だった。
「黒い司法」で起きていることはレベルが違う。犯罪を犯していないのはもちろん、現場にすら行ってないし、数ある無罪を主張する証言がいるにも関わらず無視されている。
そして判決は死刑だ。
レベルは違うけれど、無実の罪で捕まり、ろくに捜査もされず、人生が一変してしまうという点では一緒だし、その恐ろしさは遠い国の出来事でもなく、日本でも起こりうるのが「冤罪」の恐ろしさだ。
漫画「ヴィンランドサガ」で、「差別とは愛だ」と神父が説いていたけれど、差別なんて人間がいるところにはどこにでも生まれる意識の1つではある。
愛の反対は無知だとするならば、知らないから嫌いになり、無知だから非道なことが平気でできる。
刑務官の白人が、最初は見下していた黒人たちをいつしかある種の敬意を払っていたように、人と人は結局のところお互いが知ることをしない限りこういうことは続いていくのだろう。
それを少しでも減らしていくために世界に発信していくことが重要であり、それは映画の持つべき役割の1つなのだと改めて感じた。
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植民地時代のオーストラリアで家族を殺されたアイルランドの女性が現地のアボリジニに案内役を頼み、殺したイギリス人に復習をする話。
アイルランド人女性が最初はアボリジニは野蛮で汚らわしいものだとして忌み嫌っているけれど、一緒に行動していくことで、段々と心変わりをしていく。
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60年代の南部でピアノの演奏のためにアメリカ各地を白人のボディガードと回るロードムービー。
単純な差別悪いよねっていう話でもない。差別や孤独感を無くすためには、知ろうとする努力も知ってもらおうとする努力も必要だと分かる話。アカデミー賞を受賞するのも納得の映画。
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