「CLOSE / クロース」は、2023年公開のフランス映画。
第75回カンヌ国際映画祭(2022)でグランプリを受賞し、第95回アカデミー賞(2023)では国際長編映画賞にノミネートされた注目の作品。
思春期のちょっとした出来事をきっかけに親友と疎遠になってしまったレオ。そのことから取り返しのつかない大きな後悔につながってしまう辛めのヒューマンドラマ。
誰しも経験がありそうな青春時代の心の痛み。集団に属することで起こりうる心理状況を13歳のレオとレミを通じて描く。
多かれ少なかれこんな経験をしたこともある人も少なからずいるはず。クロース(近しい)な親友であるはずなのに他人を気にしてしまった結果の悲劇は言葉に言い表し難い。
マイノリティに耐えられない人、マイノリティでも1人心を許せる人がいれば良い人。多様な社会のなかで苦しみもがいた少年たちの映画である。
「クロース」は、ちょっとした人間の弱さが引き起こした最悪の結末を、エモーショナルな映像にのせて伝えていく、A24が配給した心を握りつぶすようなヒューマンドラマだ。
レオとレミの関係性を紹介するとともに、レミに何が起きたのか、レオはなにを感じていたのかについて語っていく。
CLOSE クロース
(2023)
4.9点
ヒューマンドラマ
ルーカス・ドン
エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル
- 親友だった13歳の2人がちょっとした出来事をきっかけに最悪の結末を引き起こす
- 集団に属することで起きる心理状況を描く
- 誰にも経験しうる青春ドラマ
- A24配給のアカデミー賞国際長編映画賞ノミネート作品
CLOSE クロースを視聴するには
配信サービス | 配信状況 | |
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映画「CLOSE クロース」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
レオ | エデン・ダンブリン |
レミ | グスタフ・ドゥ・ワエル |
ソフィ | エミリー・ドゥケンヌ |
ナタリー | レア・ドリュッケール |
チャーリー | イゴール・ファン・デッセル |
ピーター | ケビン・ヤンセンス |
映画「CLOSE クロース」ネタバレ考察・解説
なぜ、レオはレミと距離を置いたのか?
(C)Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022
レミとレオは小学生時代から親友だった。毎日、一緒に遊び、お互いの家を行き来し、一緒にくっついて寝ることもあった。
そんな2人は中学生となり、環境が変わる。2人は一緒に登校し、同じクラスで仲良い関係を続けていた。
しかし、クラスメイトは距離の近さに違和感を抱く。ある日、女子はレオに聞く。「付き合ってるの?」と。周りから見れば仲の良いというには物理的な距離感が近すぎるように見えていた。
レオにとっては兄弟のように仲の良い関係をいじられることが心外だった。男性が好きだとか女性が好きといった感情はまだない。ただ仲がいいだけだった。
同級生からしてみれば些細な一言だったのかもしれない。
しかし、それをきっかけにレオの気分はモヤモヤする。その後もレミが近づいてくると周囲を気にするようになった。親友のスキンシップが異様に映ってないか誰かが見ていないか気にするようになってしまった。
その後も2人は仲の良い関係を続けていた。少なくとも2人のときや家族といるときは。
しかし、学校生活ではタチの悪い同級生が2人の関係をからかった。明確なイジメがあったわけではないが、ちょっとした言動がレオの心を次第に狂わせていった。
やがて、レオは2人のときも距離を置きはじめる。お互いの気持ちは少しずつ離れ、ケンカに発展していくことになる。
(C)Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022
レミは少しセンチメンタルなところがあった。夜、眠れないときはレオが優しくさとし、抱きしめるようにして一緒に寝た。
しかし、中学生になり、レオの心がだんだんと離れていくことを感じる。レミにとってはからかわれようが、レオが親友だった。
レオの言動はレミを激しく傷つけた。ある日、一緒に寝ていたベッドをレオがこっそり離れたことでケンカになる。
それからレミもレオを遠ざけるようになった。レオにとっては物理的距離感を遠ざけようとしていただけだったが、レミにとってはそれは拒絶だった。
すれ違いを続けた後、レミの心は壊れていく。
レミの死因は?
(C)Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022
レミの死因は自殺である。
映像の中では壊れたドアノブしか見えず、なぜ死んだのかについてははっきりとした答えを示していない。そもそも死というワードすら登場させていないが、周囲の反応や状況がレミの死を匂わせる。
自殺だと決定的にわかるのは、レオがレミの母親に「自分が遠ざけたせいだ」と言ったからである。その前にも何度も母親の前に現れ、何かを言いかけていたことから自殺だと推定される。
レミの部屋はカギがかかるようになっていた。おそらく不審に感じた両親がドアをこじあけたのが壊れたドアノブであろう。
レミはナーバスになることがあった。ある日急に唯一無二の親友に遠ざけられ、ショックに耐えられなくなった。
レオは決して嫌いになったわけではなかった。しかし、近くにレミを感じるとモヤモヤしたものを感じてしまう。レオは普通でいたかった。マジョリティのグループから外れてしまうのが嫌だった。
もう少し時間があれば、思春期さえ過ぎてしまえば元の関係に戻れたのがもしれない。しかし、そうなる前にレミは死んでしまった。レオは取り返しのつかない後悔を背負うことになる。
中盤以降は、レオの後悔が渦巻く映像が続く。レオは現実を直視できず、目の前のことに没頭した。アイスホッケーも、家の手伝いも、動いていないと頭からレミが離れなかったのだ。
ときには友人と笑い合うこともあったが、ふとした瞬間にレオを思い出す。隣にいる兄の寝姿をみるといつも隣にいたレミの姿を重ねた。レオはレミを遠ざけた事実に向き合わなければならなかった。
しかし、自責の念の感情はどこにも出せなかった。レオはレミの母親を見るたび苦しくなった。必死に逃げていたがレミの母親は何かを察知していた。どこにも吐き出せない感情を持ったままレミの母親に会うことでいっそう苦しくなった。
アイスホッケーで手の骨を折る怪我をする。その手の痛みは生の実感だった。しかし、レミはもうそれを感じることはない。痛みを分かち合う友人と二度と会えない。
レオはレミが死んだ後、泣くことはなかった。全ての感情は、あの日、レミの家に置いてきたようだった。
しかし、腕の痛みとともに大粒の涙を流す。手の痛みではなく、大切な友人をつきはなしてしまった自分に後悔する。
アイスホッケーは、周囲にからかわれないように選択した部活だった。本心で選んだわけではない。
入学から1年が経過し、レオはレミの母親に会いにいき、真実を伝える。ずっと心の中に溜まっていたものが吐き出され、レミの母親から拒絶された瞬間に自分のおかした事の重大さを改めて感じる。
レミを死に追いやった自分は、生きていてはいけない存在なのだと。
しかし、レミの母親はレオを抱きしめる。最愛の息子を失った悲しみは消えないけれど、レミが大切にしていた友人を突き放すことはできなかった。
それはレオがレミにしたことになってしまうし、レミの母親もまたレオのことを我が子のように愛していたから。
レオとレミはゲイだったのか?
(C)Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022
レオとレミの関係性について具体的な言及はない。物理的な距離感は少し近いように思えるが、思春期前の小学生であればそもそも距離感は結構近い。
2人はこの時点では具現化された感情はなかったはずだ。まだ”恋愛感情”を理解しておらず、ただ親友だから距離が近い、兄弟のように仲が良いという理由で物理的にも距離が近かった。
しかし、それが普通とは違うことをレオは知ってしまう。
この距離感は周りからみると違和感になる。また、2人は中性的だった。2人が疎遠になりつつあったころ、レオは男同士でつるんでいたが、レミは女子の周囲にいることが多かった。
しかし、レオは周囲を気にして男とつるんでいた。
男女の差を意識しはじめる頃、男子は女子に惹かれたり、それをさとられまいと反発し合う時期だ。この時期は同世代の男女間の仲が悪くなることすらある。
レオは周囲に配慮して行動しようとしていた。マジョリティから外れることを恐れるレオは、感情のままに動くことはベストではないと考えていた。
対してレミはありのままに受け入れていた。この2人の考え方の違いが溝を深めることになる。大切な人に拒絶されたと感じたレミは、深く心を傷つけることになっていったのだ。
しかし、「クロース」は決して同性愛をテーマにした映画ではない。少なくとも映画の中にステレオタイプな同性愛嫌悪者は登場しない。
「クロース」は、子供たちの思春期という多感な時期において、2人の微妙な関係性をうきぼりにした。
口論やすれ違いのすえ起きた最悪の結末は、ふとした出来事が純粋な子供の心理に重大な影響を与えることを物語っている。
2人が思春期を経て、恋愛感情が続くかどうかはさだかではない。しかし、その未来を見ることはもう叶わない。
学校のような集団社会では、同性愛に関わらず、異質なものは破壊されていく。
その悲劇をありのままに表現したのが「クロース」。最悪な出来事は偶然にも起きていないだけで、いつ誰の身にも起こりうると映画は主張する。
同性愛というキーワードに関わらず見てほしい傑作だ。
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