映画「ストーリー・オブ・マイライフ」は2020年公開の映画。
「レディバード」のグレタ・カーウィグ監督とシアーシャ・ローナンが再びタッグを組んだ作品で、「レディバード」が田舎に住む思春期女子校生の心情を描いたのに対して、「ストーリー・オブ・マイライフ」は南北戦争時代の固定化された女性像に対する心の葛藤を描く。
結論から言うとあまり好みの映画ではなかった。おもしろさの問題というより、好みの問題だと思う。
けれどもこの作品の質が高いのは認めよう。
52点
「ストーリー・オブ・マイライフ」映画情報
タイトル | ストーリー・オブ・マイライフ-私の若草物語- |
公開年 | 2020.6.12 |
上映時間 | 135分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ、家族 |
監督 | グレタ・カーウィグ |
映画「ストーリー・オブ・マイライフ」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ジョー(次女) | シアーシャ・ローナン |
メグ(長女) | エマ・ワトソン |
エリザベス(三女) | エリザ・スカンレン |
エイミー(四女) | フローレンス・ビュー |
ミセス・マーチ | ローラ・ダーン |
マーチおばさん | メリル・ストリープ |
ローリー | ティモシー・シャラメ |
ローレンス | クリス・クーパー |
ジョン | ジェームズ・ノートン |
フリードリヒ・ベア | ルイ・ガレル |
ミスター・マーチ | ボブ・オデンカーク |
映画「ストーリー・オブ・マイライフ」あらすじ
19世紀、アメリカ、マサチューセッツ州ボストン。マーチ家の四姉妹メグ、ジョー、ベス、エイミー。情熱家で、自分を曲げられないため周りとぶつかってばかりの次女ジョー(シアーシャ・ローナン)は、小説家を目指し、執筆に励む日々。自分とは正反対の控えめで美しい姉メグ(エマ・ワトソン)が大好きで、病弱な妹ベス(エリザ・スカレン)を我が子のように溺愛するが、オシャレにしか興味がない美人の妹エイミー(フローレンス・ピュー)とはケンカが絶えない。この個性豊かな姉妹の中で、ジョーは小説家としての成功を夢見ている。ある日ジョーは、資産家のローレンス家の一人息子であるローリー(ティモシー・シャラメ)にダンス・パーティで出会う。ローリーの飾らない性格に、徐々に心惹かれていくジョー。しかしローリーからプロポーズされるも、結婚をして家に入ることで小説家になる夢が消えてしまうと信じるジョーは、「私は結婚できない。あなたはいつかきっと、もっと素敵な人と出会う」とローリーに告げる。
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自分の選択でありながらも、心に一抹の寂しさを抱えながらジョーは小説家として自立するため、ニューヨークに渡る――。
映画「ストーリー・オブ・マイライフ」ネタバレ感想・解説
さすがはアカデミークオリティ
南北戦争時代の女性のあり方を、マーチ家の4姉妹それぞれの生き方を描いた話。女性が結婚し、仕事をせずに家庭に入ることが当たり前だった時代の話。
アカデミー賞を取るだけあって、それぞれの女優が見せる心の微妙な揺れや、現実と夢の間で葛藤する姿はとても見応えがあった。
結婚しないと言っても、生きていくために女1人で食べていくのは難しかったり、好きでもない人と結婚しようとしたり、少女の頃に思い描いた夢は、現実と照らし合わせるとなかなかうまくいかない。
とは言え、現実がそれほど過酷かというとそうではない。贅沢ができなかったり、そんなに好きでもない人と一緒にいたり、ちょっとした日常で感じる不満の数々。
分かりやすい敵を作るわけでもなく、涙を誘うような表現も少ない。
ドラマを見ているのではない、この時代のリアルを見ているようだった。
盛り上がりどころはないけれど、この時代の女性の気持ちを正直に表している映画が「ストーリー・オブ・マイライフ」だ。
3つの差別
「ストーリー・オブ・マイライフ」には3つの差別が表現されている。
男と女
映画の軸は女性の自立に対する考え方の話だ。南北戦争のあった19世紀。女性は結婚して家庭に入ることが一般的だったこの時代にあえて未婚を選んだ次女のジョー。
その時代に合わせるように結婚した長女のメグ。愛していない男と結婚しようとする末っ子のエイミー。身体が弱く家にいることの多いベス。
男の甲斐性によって人生が決まってしまう世の中で、それが当たり前だとされていたけれど、そこに一石を投じたジョーや、甲斐性よりも愛する人を選んだエイミー。同じく贅沢よりも一緒に誰と過ごすかを選んだメグ。
これは決して結婚を否定しているわけではなく、この先人たちの迷いや選択の連続が今のダイバーシティの世の中を作り出していったのだと考えると感慨深くもある。
半自伝のようなストーリーだけど、独身を貫いたジョーが、自身の小説では物語では最後に愛する者と結婚してハッピーエンドにしたのもなんだかかわいい。
本人がいくら独身暮らしがハッピーエンドだと思っても大衆の心を掴めないのだ。
裕福と貧乏
四姉妹のマーチ家は富豪とまではいかないけれど、家政婦的な立場の非白人を雇っていて、貧しい人の家に差し入れを持っていく程度には裕福。
対照的に描かれているのが、ローリーの住む家と、隣に住むフンネル一家。近所に住むがその貧富の差は絶対的だ。
白人と黒人
時代が南北戦争時代だということで白人と黒人についても言及される。マーチ家の母親は差別の根深い国を恥じている。
北軍なので黒人に対する差別は南ほどではないけれど、マーチ家の家政婦がいるのとがすべてを物語っていて、やっぱり身分の恩恵は受けている。
女性が結婚するのと同じように、黒人は白人に仕えることには疑問を持たれなかったりする。
ハイクオリティ=おもしろい映画ではない
時代は違えど同じアメリカ女子高生の思春期を表現したレディバードもおもしろかった。
でもこの映画に興味が持てなかったため、レディバードと何が違うのかを考えてみた。
思い当たる節は1つ。共感だ。
レディバードのような思春期は男でも共感できる部分があったからだ。
ストーリーオブマイライフにはそれがない。
あくまで女性視点だし、この話で男は完全に脇役だ。女性を引き立てるための存在でしかない。ジョーたちの父親なんて空気のような存在だった。
もちろん、男を卑下するような映画ではない。映画の軸に不要だから影は薄いけれど、大切な存在として扱われているし、一人一人のキャラクターも魅力たっぷりだ。
父親なんて2シーンしか登場しないのに、その愛され方が伝わってくる。
でもあくまで女性視点。だから共感には欠けていた。
すごくうまく表現されている感情表現も、興味がなければ響かない。俯瞰でしか見られないから届かない。
エマワトソンはめちゃくちゃキレイだし、観ているだけで目の保養にもなった。
脚本もテーマも素晴らしい。ただ、クオリティの高さがおもしろい映画とはならないことが証明される映画だった。
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次女役のシアーシャ・ローナン演じる田舎の高校生。監督も同じグレタ・カーウィグ。
現代の思春期女子校生の内面を描いた映画。
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