「サイレントトーキョー」は2020年に公開された映画。
爆破予告のあった渋谷ハチ公を舞台に繰り広げられる大がかりなクライムサスペンス。
原作はドラマで大ヒットしたアンフェアシリーズの秦建日子。
国の暗い部分を描いた本作は、冒頭から始まるサスペンスシーンから息継ぎさせずにラストまで展開する流れはよくできていた。
ただ、色々説明が不足している部分もあり、よくわからないところも。
そのポイントで登場人物に感情移入もしづらく、脚本と構成には理解に苦しむ部分もあった。
監督が「SP」の波多野貴文氏ということもあり、アンフェアと同じような思想の2人が混ざった結果、現実味の薄いプロパガンダ映画が出来上がったという感じは否めない。
大きな流れは把握できるのだけれど、混乱する部分もあったので、細部について説明しながら頭を整理していきたい。
サイレント・トーキョー
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「サイレント・トーキョー」映画情報
タイトル | サイレント・トーキョー |
公開年 | 2020.12.4 |
上映時間 | 99分 |
ジャンル | サスペンス |
監督 | 波多野貴文 |
映画「サイレント・トーキョー」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
朝比奈仁 | 佐藤浩市 |
山口アイコ | 石田ゆり子 |
世田志乃夫 | 西島秀俊 |
須永基樹 | 中村倫也 |
高梨真由美 | 広瀬アリス |
来栖公太 | 井之脇海 |
泉大輝 | 勝地涼 |
里中の妻 | 白石聖 |
田中 | 野間口徹 |
須永尚江 | 財前直美 |
磯山首相 | 鶴見辰吾 |
映画「サイレント・トーキョー」あらすじ
クリスマス・イブの東京。突如勃発した≪連続爆破テロ事件≫でパニックに陥る日本、そして事件へと巻き込まれていく登場人物たちの様々な思惑が交錯する、複数の視点で展開されるノンストップ・クライムサスペンス。
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映画「サイレント・トーキョー」ネタバレ感想・解説
渋谷スクランブル交差点は巨大なセット
3億円をかけた渋谷駅前はなんとセットだという。栃木県足利市に突如現れたセットは、Netflixで爆発的にヒットしたシリーズ「不思議の国のアリス」でも使用されている。
だが残念なことに、ここの爆破シーンは最大な見どころであるが、見どころの終わりでもある。
爆破予告が出ているのにも関わらず、平和ボケした日本人は爆破なんてないと決めてかかり、渋谷ハチ公でお祭り騒ぎ。
ユーチューバーなんかもこぞって出てきて、ある種のイベント会場に成り下がる。その平和を一瞬にして無にした爆破シーンは見せ方を含めて圧巻であった。
しかし、ユーチューバーならその行動原理は理解できるが、一般人がわざわざ来る意味がわからない。
基樹がバカだと罵るのも無理はない。
直前に犯行予告と実際に爆破があったのだから渋谷に来る人はあまりに考えが浅はかだと言わざるを得ない。
昨今の世界情勢から見るに、隣国との関係性はあまり良ろしくないし、国内の無差別な凶悪事件だってたびたび発生している。
今の日本人はもうちょっと利口では?という気はする。
確かに世界と比べたら平和ボケはしているけれど、感覚的に90年代か00年代初めぐらいの国民のイメージを受ける。
この辺りから少し違和感を感じ始めていた。
野間口徹は何役なのか?
基樹と会っていた男。野間口徹が演ずる彼は探偵役だ。
須永基樹は、母親が再婚するにあたり父親の行方について調査依頼していた。
実際に父親とも会う約束を取りつけたが会えずじまいで終わっている。
基樹が真奈実達と会っていた際に来た「田中」という男のメールがそれで、約束を取りつけたのでイブに調査の結果と父と子を会わせる約束をしていた模様。
多分、爆破予告のことを知る前は母親に迷惑をかけないように念押ししたかったのだろう。
ただ、なんだか含みを持たせたようなメール文面や行動は、無理矢理怪しい人物に仕立て上げたいように見えてしまった。
基樹と犯人との関係は?
基樹は犯人と直接繋がりはないが、犯人が父親だと思って行動している。
それが怪しさにつながることで、ミスリードを誘っているが、それが強引すぎてしっくりこない場面が多々あるのだ。
クリスマスイブに渋谷スクランブル交差点に向かったのは父親の留守電を聞いたから。
もしかすると父親が現れるのかもしれないと考えたからだ。
結局会えずじまいだったが、その時に撮影していた動画を真奈実に見られて疑われてしまう。
撮影行為が犯人としての怪しさを助長しているけれど、単に父親が現れるのを証拠として撮りたかったと思われる。
ただ、別に撮影しなくても良かったし、最初の容疑者として強引に仕立て上げるため、行動原理が謎のまま進むからこの映画は不可解なのだ。
基樹は、感情を表に出さないほんとうに誤解されやすいタイプで、女性にも警察にも誤解されている。
ちょっとアクが強すぎると言うか、「ほら、こいつ怪しいだろ?」感がモロに出てしまっていて、ネタバレした時の腑に落ちなさが消えなかった。
成功者の証のようなタワマンに招いて、だだっ広い部屋で自前の焼き鳥用コンロを使ってちまちま焼き鳥焼いてたのはかわいかった。
あなたの仕事は食べることですとか不器用すぎるだろ。
朝比奈は犯人なのか?
続いて朝比奈。彼は犯人の幇助的役割を担っていた。
2人で組んで行動していたと見られるが、共犯というよりは真犯人・アイコのサポート兼あわよくば暴走を止められないかという立ち位置で動いている。
だから彼は解除コードを知らなかった。しかしどこで爆破するのか、音声認識タイプの爆発物を使っていたということは認知している。
爆発物の範囲や、自身もバッグの中に爆発物を詰めていたことから、ある程度知っていいて、コンタクトも取っていた可能性は高い。
レインボーブリッジに向かう途中でようやくアイコの真意を掴んでいるので、最初から2人で計画立てていたわけではないはずだ。
最初から知っていたのであればすでに聞いているだろうから、途中で察知して接触を試みたというのが正しいだろう。
自衛隊として海外派遣中に小さな女の子が自殺したことがトラウマになり、そして尊敬していた上司の死により大きなショックを受け、今回の犯行に絡んだものと思われるが、思わせぶりな行動が大きい。
彼もまたミスリードを誘うために誇張されたキャラクターなのである。
家を出て行った背景も理解しにくい部分だ。
国だの戦争だの言ってないで、まず守るべきは家族だろうと言いたくなるし、共感できない人物だった。
最後にアイコを説得するために「もう少し国民を信じてもいいんじゃないか」と言ってるけど、渋谷スクランブルの人々の行動は確かに危機意識が欠如していたし、ほかに日本人を見直すようなシーンはなかった。
まさか息子を見て思い直した訳でもあるまい。彼に一体何があったのか。
ちなみに自衛隊の回想シーンで、アイコの夫が朝比奈に「クリスマスに計画を実行しようと思う」と言ったのは、本当にただのデートのこと。ちょっと匂わせがキツすぎる。
真犯人アイコは生きているのか?
アイコを真犯人として目立たせないために誇張されたキャラクターが必死にがんばっていたが、冒頭の行動からして怪しさ満点だったアイコ。
夫が自衛隊活動の帰任後から自殺までの間の異常行動から戦争というものの怖さを痛感している。
それにもかかわらず、自衛という目的で戦争への道を突き進む日本に絶望して、テロを計画した真の黒幕。
夫は頭がおかしくなっていたと言っていたが、おかしくなっているのはアイコ本人である。そうじゃないと行動が不可解すぎて納得できない。
まず、あれだけの犯罪をしでかしておいて、要求するものが首相との対話であったなら、もう少しやり方があったのではないか。
浅草では手榴弾が見つかり、二つ目では光と音で混乱させた。
その次の渋谷スクランブル交差点ではついに爆破。このまま東京タワーとレインポーブリッジを爆破してまで彼女は何を成したかったのだろうか。
渋谷スクランブルでは手動の起爆スイッチが見つかっていることから、彼女自身が直接爆破している。
だからこそ6時ちょうどから爆破までに数秒の間を挟んでいる。おそらくそれは彼女にまだ迷いがあったのだろうが、あの時点で人を捨てている。
しかし、自業自得と言われても仕方のない行動とはいえ、多くの民間人を巻き込むことに意味があったのか?最終目的が首相との対話であればあれほどの爆破を見せつける必要性はない。
夫はそもそも理不尽な暴力に巻き込まれないように爆弾についてのノウハウを教えているのだ。なぜ無差別殺人へ繋がる?
渋谷スクランブルで亡くなった人には家族や恋人、子どもだっていただろうし、警備にら当たった警官だって一生懸命に職務を全うしようとしていた。
なぜ、まだ、総理大臣が代わり、彼が政策について語っている段階だというのに、すでに国民全体がバカで無知だという思想に陥るのか。夫が国家の犠牲者になったことは憂慮する事態であるが、大量殺戮をするような動機には到底繋がらない。
この場合納得できるのはすでにアイコがサイコパス状態になっている場合のみであり、渋谷の後に実はこんな悲しい過去があったと言われても、「そうだったんだ、辛かったね(涙)」となるわけがない。
いくら美しさと可愛さを兼ね備えた白石聖でもそれは無理だ。
そしてアイコが生きているかどうかだが、生きている可能性は高い。
転落した車から死体が上がらなかったことと、派遣社員の来栖にメールが送られているからだ。
メールの内容に朝比奈との車の中の会話が含まれていることから、送ったのはその後だ。あの状況で彼女はあれだけの長文を打ち始めるのはおかしいし、時間もないだろう。
したがって彼女は生きて、この事実を信頼できる報道局員を通じてメッセージを送る道を選んだ可能性が高い。
1つ気になるとすれば、あのテレビ局派遣社員はどうやって基樹と接触できたのか。
あの事件は一般人に知られることはなかったはずだし、山口アイコにしたって、彼とは面識がなかったはずで、そこから情報が流れるはずがないからだ。
渋谷スクランブル交差点は流石の迫力だったので、そこに関しては良い点だったがあとは残念な映画だった。
現政権への批判的な映画かと思ったが、アイコの行動があまりに身勝手で理解しがたい。
憲法改正賛成派が、反対派のイメージを下げるためのプロパガンダ映画なのではと陰謀論さえ考えてしまうほどだった。
「新聞記者」のようなきな臭さは漂わせつつも、脚本の弱さが評価に繋がらない映画だった。
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