「ノマドランド」は2021年の映画。決まった家を持たずにキャンピングカーやバンで暮らすノマド生活をする人々をフランシス・マクドーマンドが演じるロードムービー。
ほとんどすべての登場人物が役者を使わずにドキュメンタリー調で進む。
でも、メランコリックでもあり、エモーショナルな音楽をふんだんに使っていることで情緒感が増し、飽きさせることもない。
そしてなんといっても、アメリカのロードムービーで目を見張るのは圧倒的な大自然である。
社会問題を提起しつつも、映画としての娯楽性を失わせない絶妙なバランスの取れた作品だった。
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「ノマドランド」映画情報
タイトル | ノマドランド |
公開年 | 2021.3.26 |
上映時間 | 108分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | クロエ・ジャオ |
映画「ノマドランド」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ファーン | フランシス・マクドーマンド |
デヴィッド | デヴィッド・ストラザーン |
リンダ | リンダ・メイ |
スワンキー | シャーリーン・スワンキー |
ボブ | ボブ・ウェルズ |
映画「ノマドランド」あらすじ
リーマンショック後、企業の倒産とともに、長年住み慣れたネバダ州の企業城下町の住処を失った60代女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)。彼女の選択は、キャンピングカーに全ての思い出を詰め込んで、車上生活者、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩くことだった。その日その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流とともに、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく。大きな反響を生んだ原作ノンフィクションをもとに、そこで描かれる実在のノマドたちとともに見つめる今を生きる希望を、広大な西部の自然の中で探し求めるロードムービー。
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映画「ノマドランド」ネタバレ感想・解説
ノマドランドは実話をベースにした話
物語の始まりは、USGという建設用資材の材料の製造をしている会社のカンパニータウン、エンパイアの放棄にある。
「カンパニータウン」とは、日本では馴染みが薄いけれど、企業が町ごと作り上げて従業員をそこに住まわせることを言う。
2008年の大不況の煽りを受けて、2011年にUSGは土地を放棄する。そして、エンパイアという町はなくなった。郵便番号でさえもだ。
キャンプサイトで知り合った人に、ファーンは庭には砂漠が広がっていると言っていた。
物語のラストでその光景を見られることになるわけだけど、まさに家の外には砂漠が広がっているのだ。外には何もなく、「捨てられた町」がそこにある。
大恐慌が生み出した甚大な被害は日本も襲っていたけれど、アメリカでは町が1つ消滅したのだ。冗談ではなく地図からその名が消えたのだ。
ちなみに2021年現在、エンパイアには人が戻っている。エンパイアマイニング社が2016年にその土地を買ったためだ。
最盛期のような賑わいはないけれど、改めて街に住む人は戻っている。
マクドーマンド以外は本当にノマド生活をしている人たち
この映画は2012年の実話をベースにしていて、映画の中に出てきたボブウェルズというサンタクロースみたいな人も実在している。ノマドやミニマリズムの先駆け的な存在だ。
末期ガンを宣告されたスウィンキーもリンダも自分自身を演じていて、病気というのは役設定ではあるけれど、実際にノマド生活をしている。
だから「ノマドランド」に出てくる人はほとんどがリアルノマド生活をしているので、リアリティは半端ない。そこにマクドーマンドとともに大自然とメランコリックな音楽があいまって、単純なドキュメンタリーではないドラマが生まれるのだ。
ホームレスではない、ハウスレス
フェルンが家庭教師をしていた子どもに言った「ホームレスじゃない、ハウスレスだ」という言葉。どう違うのか。
ハウスとは、その場所にある家のことだ。ただの物理的なスペースのことを指す。
ホームとは故郷というニュアンスが含まれている。スペースのことを指すのではなく、そこにあるコミュニティも含める。
人と人との繋がりや記憶も含んでいる。だからフェルンにとってホームとはバンの中に詰まっている。父からもらったお皿や、夫が使っていた釣りケース。
だからファーンはホームレスではなくハウスレスなのだと伝えている。
ノマド生活の中にもコミュニティが根付いていて、たまたま偶然出会った人と再び全然別の場所であったりする。
同じ価値観を共有し、誰かが亡くなれば皆で偲ぶことだってできる。彼らに家も場所も関係ない。バンがホームであり、集まる場所のすべてがコミュニティなのだから。
すべての人がハウスは持ってないけれど、ホームは持っているのだ。
アメリカの現状とハウスやその土地から解き放たれて自由な生活を手に入れたノマド生活、そして目を見張るような大自然。
メッセージを伝えるだけではない。多くの人にこの現状や新たなる価値観を共有するために、大自然とともに切なくて心地の良い音楽を入れて観客を魅入らせる。
それが「ノマドランド」が圧倒的な評価を得る理由なのだ。
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