「ビバリウム」のロルカン・フィネガン監督が、アイルランド家族を見舞った不幸を、東洋の呪いの演出とともに描いた禍々しいホラー映画。
ビバリウムではカッコウの習性を人間に置き換え、なんとも不気味な世界観を表現し、観る者たちを困惑させた。その気持ち悪さは「NOCEBO/ノセボ」でも健在。
しかし、「ビバリウム」と違いストーリーはわかりやすく、おおよそ何が起きたのかは類推できる内容になっている。
今回は、アイルランドにある華やかなファッションデザイナー業界と、メイドインフィリピンである製造現場を対比。分かりやすく批判するわけではないが、映画を観るものたちにその現実をつきつけていく。
ビバリウムの世界観が気に入っている人は少し物足りなさを感じつつも、90分程度でサクッと観られる良質ホラーになっている。
というわけで、あらすじからラストに何が起こったのかまでネタバレしながら考察・解説していく。
悪夢に取り憑かれた女性の末路
NOCEBO / ノセボ
(2023)
3.2点
ホラー
ロルカン・フィネガン
エバ・グリーン、マーク・ストロング
- アイルランド家族に起きた不幸を東洋の呪いの演出とともに描くホラー
- 「ビバリウム」のロルカン・フィネガン監督作品
- ストーリーはわかりやすいが、パンチが弱い部分も
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映画「NOCEBO / ノセボ」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
クリスティーン | エバ・グリーン |
フェリックス | マーク・ストロング |
ダイアナ | チャイ・フォナシエル |
ボブス | ビリー・ガズドン |
映画「NOCEBO/ノセボ」ネタバレ考察・解説
あらすじ
ファッションデザイナーのクリスティーンは、夫フェリックスや幼い娘ボブスと共にダブリン郊外で順風満帆な生活を送っていた。
ある日、クリスティーンは、とある電話を受けた直後に、ダニに寄生された犬の幻影に襲われる。
8カ月後、クリスティーンは筋肉の痙攣や記憶喪失、幻覚などを引き起こす原因不明の体調不良に悩まされていた。
そんな彼女を助けに来たというフィリピン人の家政婦ダイアナ。雇った覚えはなかったが、記憶喪失のこともあり、家に迎え入れてしまう。
あやしげな民間療法を行うダイアナは、クリスティーンの体調を一時的に快方に向かわせたことで信頼を勝ち取っていく。
クリスティーンは次第に民間療法にのめり込んでいき、おぞましい恐怖を経験するという話。
最初から怪しげなダイアナの狙いはやはり別にあった。そしてそれは、クリスティーンのファッションデザイナーという仕事に関係している。
一見華やかなファッション業界。しかし、その実情はあまり知られていない。物語は、クリスティーンのいるアイルランドと、ダイアナの過去を遡るシーンを交互に行き来する。
フィリピンでは、ダイアナとその子どもが映し出される。戦争で住む家を追われたり、写真一枚撮影するにも悩まなければならないほどに貧困な親子の姿が垣間見える。
美しくかわいいファッションを着こなし、軽快にダンスをするアイルランドの子役と対照的に、ダイアナ親子は暗い映像とともに表現される。
しかし、ダイアナ親子の関係性は美しく微笑ましいものであり、貧困=不幸とはならない。むしろ、クリスティーン親子の方がお互いのコミュニケーションにズレを感じる。
クリスティーンが不調を訴えるきっかけとなった冒頭の電話のシーンから、何かが起きたことを暗示させている。結果的にこれがダイアナがやってきた理由でもあり、物語の終盤まで明らかにはされない。
劇中は不可思議でイヤーな音楽が流れ、観客の不安を煽り続ける。
ダイアナの能力はなんだったのか?
ダイアナの治癒能力は、子供の頃出会った老婆の口から出てきたヒヨコが、彼女の口の中に入ってきたからだという。
しかし、その回復力とは裏腹に夫のフェリックスは懐疑的。クリスティーンの持つ西洋医学の薬を隠したことを知ったフェリックスは、ダイアナを家から追い出してしまう。
ダイアナが離れたことで再び症状を悪化させたクリスティーン。
また、ダイアナはすでに娘のボブを味方に引き入れることに成功し、クリスティーンがフェリックスを疑うような嘘をつく。
ボブの嘘もあってフェリックスを信じられなくなるクリスティーン。その夜、フェリックスが階段から転落。病院に運ばれ不在になった隙をついてダイアナが再び現れる。
しかし、ダイアナの持つ能力は治癒ではなく呪いだった。クリスティーンは治癒されたというよりは、一時的に呪術の力が弱まっただけだ。
このタイミングで、ダイアナの娘に起きたことが発覚する。
クリスティーンがデザインした服は、フィリピンで生産されていた。環境が良いとは言えない場所での仕事場に、シングルマザーのダイアナは、娘も連れてきていた。
視察にきたクリスティーンは、入退室のセキュリティに言及し、カギをかけるように伝える。しかし、ある日同じように娘を連れていたダイアナは、買い物に行っている隙に工場が火事になってしまう。
カギがかかっていたことで逃げ遅れた娘は焼死してしまう。
ダイアナはクリスティーンに同じ苦痛を与えた。閉じ込められた部屋で裁縫を強制させられ、呪いの力によって生きたまま焼かれることになる。
ラストシーン、ダイアナは家の屋上から飛び降りる。口の中から出てきたのは、かつて老婆の口からダイアナに移ったヒヨコだった。ソレはつぎにボブスの口の中へ入っていった。
ボブスに力を与えたのだ。この世界を1人で生き抜けるように。
華やかな世界しか見えないアイルランドのファッション業界の裏側には、低賃金で過酷な労働を行っているアジアの途上国が存在する。私たちはそれらについて見て見ぬふりをすることで美しくかわいいものを与えられ、日々暮らしている。
その世界をホラーへ調理したのが「NOCEBO/ノセボ」である。
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