「燃えよ剣」は2021年に公開された原田眞人監督による映画。
司馬遼太郎による同名小説を映像化。幕末に6年だけ存在した新撰組の結成から、その最期までを描く。
2時間30分に及ぶ長編であるも、幕末の濃密な時間を描くには尺が足りず、駆け足感は否めない。そのため、新撰組や池田屋事件ぐらいのワードしか知らない人には意味がわからない部分も多く、言葉の聞き取りにくさもあり、面白くないと感じる人もいるだろう。
しかし、土方歳三という信念を貫いた男の一生は、新撰組が敗者だと理解していてもこみあげるものがあるし、岡田准一や周りを固める役者たちも魅力。そこに原田眞人監督の独特な演出に、過剰な演出のない殺陣なんかは一見に値する。
ここでは、なぜおもしろくないのか感じてしまうのかについて詳細に語っていく。
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「燃えよ剣」映画情報
タイトル | 燃えよ剣 |
公開年 | 2021.10.15 |
上映時間 | 148分 |
ジャンル | 時代劇 |
監督 | 原田眞人 |
映画「燃えよ剣」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
土方歳三 | 岡田准一 |
お雪 | 柴咲コウ |
近藤勇 | 鈴木亮平 |
沖田総司 | 山田涼介 |
松平容保 | 尾上右近 |
一橋慶喜 | 山田裕貴 |
井上源三郎 | たかお鷹 |
孝明帝 | 坂東巴之助 |
山南敬助 | 安井順平 |
東堂平助 | 金田哲 |
佐藤のぶ | 坂井真紀 |
斎藤一 | 松下洸平 |
山崎蒸 | 村本大輔 |
岡田以蔵 | 村上虹郎 |
清河八郎 | 高嶋政宏 |
芹沢鴨 | 伊藤英明 |
映画「燃えよ剣」あらすじ
江戸時代末期。黒船が来航し開国を要求した。幕府の権力を回復させ外国から日本を守る佐幕派と、天皇を中心に新政権を目指す倒幕派の対立が深まりつつあった激動の時代-。武州多摩の”バラガキ“だった土方歳三(岡田准一)は、「武士になる」という熱い夢を胸に、近藤勇(鈴木亮平)、沖田総司(山田涼介)ら同志と共に京都へ向かう。徳川幕府の後ろ盾のもと、芹沢鴨(伊藤英明)を局長に擁し、市中を警護する新選組を結成。土方は副長として類まれな手腕と厳しい法度で組織を統率し、新選組は倒幕派勢力の制圧に八面六臂の活躍を見せる。お雪(柴咲コウ)と運命的に出会い惹かれあう土方だったが時流は倒幕へと傾いていき・・・池田屋事件、鳥羽・伏見、五稜郭の戦い・・・変革の世で剣を手に命を燃やした男たちの、信念と絆。愛と裏切り。そのすべてを圧倒的スケールで描き切る、歴史エンタテインメント超大作!!
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映画「燃えよ剣」ネタバレ感想・解説
お雪は実在する人物なのか?
(C)2021「燃えよ剣」製作委員会
土方歳三の愛する人として登場するお雪。戦い続ける土方を精神的に支える人物として描かれるが、実在する人物ではない。
お雪は司馬遼太郎原作に登場する架空のキャラクターで、実際の土方歳三と仲の深い関係にあったのは琴という女性だ。
土方歳三は妻を持たず、生涯独身であったといわれており、誰かと結婚したという記述はない。映画の中では新撰組の副長として献身的に働いた渋い生き様が前面に出ており、雪に対して一途のように見えるが、実際には女性との浮名は絶えなかったそうだ。
ただ、「燃える剣」のような男臭さ全開の物語にお雪と恋を育むシーンは良き中和剤として作用していた。
また、お雪の存在を描いたのは、司馬遼太郎の妻がモデルになっているとのこと。
お雪さんよいうのは司馬先生の最愛の奥様をイメージしているところがいくつかあるわけですよね。
歴史人
ええじゃないか運動
(C)2021「燃えよ剣」製作委員会
土方歳三たちが大政奉還後に野道で出会った「ええじゃないか」と叫びながら踊り回る集団。幕末に起きた民衆運動の1つだ。「ええじゃないか」と言いながら、男性が女装、女性は男装をしながら歌い踊り続ける様は映像のように異様な光景だったという。
土方歳三が刀を抜いて群衆の間を抜けたときは、疑問がわいた。なぜ彼らは刃を向けられても怖がらないのか、そしてなぜ土方歳三は刀を抜いて歩く必要があったのか。
彼らは踊り狂いながら無銭飲食や富裕層から金銭を要求したらしい。恐ろしいのは世の中を変えようという暴動やデモの類ではなく、ただ目的なく踊り歩くのみだったこと。
「ええじゃないか」が特徴的なのは、そればかりではありません。この運動には、ハッキリした目的がないのです。
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人間による目的のない行動ほど不気味なものはない。土方歳三は彼らを警戒していたし、彼らは刀を向けられたことを意に介していないのだ。
「検察側の罪人」でもあったが、異様な踊りを撮ることには定評のある原田眞人監督の手腕により、数十秒のシーンであったが、非常に印象的だった。
燃えよ剣が面白くない原因は何言っているかわからないから
(C)2021「燃えよ剣」製作委員会
「燃えよ剣」が面白くないと感じてしまう最大の理由は、会話が聞き取れないというストレスにある。
流れるような早口の会話が聞き取りにくく、さらに難解な単語も多いため、日本人でも理解しにくくなっている。
そこに嫌気がさして「つまらない」と断言してしまう人も一定数いるだろう。
原田眞人監督は、戦国時代の「関ヶ原」や日米戦争の「日本で一番長い日」のように古い話を映画化する場合、話し言葉を決して理解しやすくしない。
「関ヶ原」では、古めかしい言葉を交わし続けるので日本語字幕がないとまともに聞き取れなかったし、「日本で一番長い日」は難解な文章を早口でまくし立てて理解が追いつかなかった。
「燃える剣」は方言にはそれほどクセはないものの、難しい言葉をテンポ良く使っていくため理解が追いつきにくい。
あえてこの手法をとっているのは明白で、ウーマンラッシュアワーの村本の起用はそれを象徴しているといえよう。実際にインタビューの中では弾丸トークが特徴の村本の漫談が気に入ってオファーしている。
僕のカミさんに「面白いコメディアンがいて、普通の吉本の芸人さんとちがう。マシンガントークで絶対あなた好みよ」といわれ見てみたら、確かに面白いんですよね。
歴史人
1つ1つのセリフの意味に立ち止まって深く理解にいそしむのも良いけれど、それをしてしまうと映画の持つ良い意味での間が崩れてしまう。
ここはもっと気軽に楽しむのがいい。言っている意味が追いつかなくてもリズム感がいいので聴いていて心地よい。カメラアングルも飽きさせないように構成されているから退屈することはない。また、もっと単純に岡田准一や山田涼介の殺陣を堪能するのもいい。
面白くないのは駆け足感が強いから
(C)2021「燃えよ剣」製作委員会
「燃えよ剣」は新撰組の結成から終わりまでを描いた映画。150分という長尺ながらも新撰組を語り尽くすにはあまりに長さが足りず、全体の駆け足感は否めない。
実際に二部作にするというアイデアもあったぐらいだ。
脚本を書く段階で最初は東宝の方からも前後編の二部構成で、っていうアイデアもあったんで、だったらあれも入れられるこれも入れられるってなったんだけど、最終的には一本になりました。
歴史人
結局一部にまとまってしまったので、小学校の授業でも習うような池田屋事件まではかなり詳細に描かれているが、そのあとの展開が早すぎて歴史を知らないものにはちょっと難解だ。
池田屋事件後は、長州藩がピンチと思ったら、いつの間にか幕府の力が弱まりサクッと大政奉還。新撰組は分裂し気づいたら逆賊化し敗戦が続く。
必然と人間関係の細かい描写も減っていくので、人間ドラマとしては物足りなさを感じる。
出てくる人物もあまりきちんとした紹介がないため、誰が出ているかわからない。長州側の岡田以蔵もエンドロールまで誰だか分からなかった。
ちなみに岡田以蔵役の村上虹郎は、「るろうに剣心」で沖田総司役を務めている。
「言葉の理解が難しい」「物語の駆け足感」がつまらないと思ってしまう理由の1つなのだが、ベテランの原田眞人監督だけあって、撮影手法にはこだわりが見られ、1つ1つのシーンに飽きがこない。
明治維新や新撰組についてはるろうに剣心ぐらいの知識しかない人や、岡田准一や山田涼介が出ているから見たという人でも十分楽しめる要素はある。
テンポの良い会話や間の取り方、オーバーアクションにならない濃密な殺陣は素晴らしい要素の1つである。
ハマるとクセになるので、途中で疲れてやめてしまったなら、あまり深く考えずに、まずは流し見してみてほしい。
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