ノック 週末の訪問者は2023年に公開されたM・ナイト・シャマランの映画。
結論から言うと、シャマラン好きなら言わずもがなで見ればいいし、そうでなければ過度な期待は厳禁な映画。
シャマラン好きなら慣れているだろうが、良くも悪くも期待を裏切らない作品である。
ストーリーは、ゲイのカップルであるエリックとアンドリュー、その養女のウェンの3人家族が山間の山荘でバケーションを過ごしていると、4人の男女に押し入られるところから始まる。
その侵入者たちは、3人のうち誰かが犠牲にならなければ世界が滅亡するという。
家族と世界の因果関係も分からなければ、4人の男女の意味不明な言動も不可解な点が多い。
前設定も魅力的だが、開始数分でミステリアスな世界にグッと引きずりこんでいく展開は、さすがはシャマラン監督といったころ。
そしてなにより期待をある意味で裏切らないストレートなオチも含めてシャマラン節は炸裂。
「ノック 終末の訪問者」は、ヨハネの黙示録をモチーフにし、宗教的な要素を含むサスペンス映画。4人であることの意味や、彼らの目に見えていたもの、そしてラストの結末まで考察・解説していく。
ノック 終末の訪問者
(2023)
3.3点
ホラー
M・ナイト・シャマラン
デイブ・バウティスタ
- 家族を犠牲にするか世界の終焉かの究極の2択
- 開始数分でミステリアスにグッと引きずりこむ世界観
- M・ナイト・シャマラン監督作品
- ある意味期待を裏切らないストレートなオチ
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映画「ノック 終末の訪問者」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
レナード | デイブ・バウティスタ |
エリック | ジョナサン・グロフ |
アンドリュー | ベン・オルドリッジ |
サブリナ | ニキ・アムカ=バード |
ウェン | クリステン・ツイ |
エイドリアン | アビー・クイン |
レドモンド | ルパート・グリント |
映画「ノック 終末の訪問者」ネタバレ考察・解説
ノック 終末の訪問者 あらすじ
(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
物語は、突然始まる。
避暑地にきたエリックとアンドリュー、そして養女のウェンのもとにレナードという男がやってくる。その背後に武器を持った男女4人が現れ、ロッジを一気に占拠する。
レナードたちは、エリックたちに危害を加えるわけではなく、3人に選択を迫る。「家族のうち誰かが犠牲にならないと世界は滅亡する」と。
当然、エリックたちは耳を貸さない。彼らは直接的に危害を加えてはこなかったが、そのうちのレドモンドだけは怒りをあらわにしていた。
突然現れたレナードたちの強引な依頼を拒否していると、4人のうちの1人であるレドモンドが他の3人に殺される。
その直後、テレビでは、地震による津波の被害が報じられ、一気に終末感が押し寄せてくる。
なぜ、家族を犠牲にしなければならないのか。なぜ、レドモンドは殺されることを受け入れているのか。
その理由は、彼らにはビジョンが見えているからだった。
彼らは同じビジョンを共有し、世界が滅亡することを知っている。レナードは自分の教え子を救うため、エイドリアンは息子が焼かれるのを阻止するためにロッジへやってきたのだ。
そしてレナードは語る。エリックたちが自分たちの意思で誰かを犠牲にしなければならないと。
元ネタはヨハネの黙示録
(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
終末に関する話は、聖書が生まれた遠い過去から存在する。「ノック 終末の訪問者」も、宗教的な要素を含んでいる。
ベースになっているのは、ヨハネの黙示録。新約聖書の一部で、キリスト教の終末論について書かれているくだりだ。
ヨハネの黙示録では、キリストの再臨、最後の審判、悪の勢力との最終的な戦い、そして新天地の創造といった、終末に関する一連のビジョンを描いている。
このビジョンを共有したのがレナードたちである。
レナードたちによれば「街が水に沈み、疫病が蔓延し、空が落ちてきて、髪の指が大地を焼き払い、永遠の闇が人生を覆う」災厄が降りかかるという。
ヨハネの黙示録には4人の騎士が登場する。彼らは本の中で終末の時代に起こるとされる災厄を象徴している。
彼らは支配・暴力・飢饉・病を象徴し、終末の世界に厄災をもたらすとされている存在だ。
そして彼らの乗る馬の色は、レナードたちのシャツの色に置き換えられてもいる。
しかし、エリックが話していたように「ノック 終末の訪問者」では、4人をこう置き換えている。
- 指導
- 悪意
- 養い
- 癒し
黙示録を匂わせながらもそれぞれの解釈は変えている。
黙示録はキリスト教の教義や信仰において重要な役割を果たしており、キリストの勝利と最終的な救済の希望と捉える者もいる。解釈は専門家によっても分かれているのだ。
つまり、この4人は災厄をもたらすものではなく、人類の希望として残った。彼らもまた普通の人間で、ナニカのチカラによって選ばれたのだ。
レナードたちがロッジを訪れたときに7回ノックした点もヨハネの黙示録をオマージュしている。
黙示録には、7人の天使がラッパを順に吹いていく話がある。これらは災害のきっかけとなり、ラッパを吹くごとにあらゆる災害が起こる。
- ヒョウと火により地上を焼き尽くす
- 隕石が海に落ちる
- 星が空から川に落ちてくる
- 太陽と月がなくなる
- イナゴによる飢饉
- 殺人騎士の登場
- 獣による支配
それらは地震、津波、パンデミック、飛行機の墜落、火事につながっている。
ラストのどんでん返し
(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
エリックたちが犠牲を拒否する間に4人は次々に死んでいく。その間も災厄は止まらない。そして、レナードまで自殺した後、世界中の飛行機が制御できずに墜落しはじめる。
しかし、このときエリックにも未来のビジョンが見えた。それはアンドリューと大人になったウェンの未来の姿だった。
ウェンは大人になり、幸せそうにしていた。アンドリューとの関係も良好のようだった。しかし、そこにエリックの姿はなかった。それが視えたエリックは、なんの後悔もなく死を選んだ。
エリックの死後、飛行機は落ちることがなくなった。津波による水位の上昇は止まり、疫病の感染者も広まらなくなった。エリックはアポカリプスから世界を救ったのだ。
しかし、人類を救った英雄は、誰にも知られることはない。
アンドリューとウェンはレナードたちの車に乗ると、キャビンに来る時に3人で歌っていた曲を再び流れる。
その歌はエリックを思い出したため、ウェンはラジオを止める。しかし、アンドリューが再び曲をつけなおす場面は2人の喪失感を表すには十分だった。
エリックたちが選ばれた理由
(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
しかし、ここまで、ヨハネの黙示録を連想させるキーワードを散りばめておきながら、エリックたちが世界を救う鍵となる因果関係についてはどこにも説明されていない。
彼らの家族関係が特殊であることも、終末に影響を与えたとは思えない。ゲイ、養女、ウェンの口唇裂口蓋裂という先天異常も世界を救う話と繋がりが見えない。
それだけでなく、エリックの死が世界を救ったことですらただの偶然なのかもしれない。
特別でもないただの人間が山荘で死んだのと、災害が止まったことには因果関係はない。しかし、ただの偶然にしてはできすぎている。
そう、この映画はアメリカによくあるヒーローとは一線を画す。選ばれたものが注目される中、ピンチを救ってヒーローになるわけではない。
私たちと同じただの一般人がひっそりと世界を救う話なのである。M・ナイト・シャマランは「アンブレイカブル」シリーズ3部作でも、ひねくれたヒーローを描いていた。
あえて因果関係を説明しないことで、特別ではないことを印象付けているのだ。
一方で、この映画のテーマは「愛」になっている。エリックたちは特別でもなんでもない普通の家族だ。家族の関係性はマイノリティであるが、それぞれが大切に思い合う家族である。
原作では、ウェンは死ぬ。レナードとアンドリューが銃を取り合って揉み合ったときに誤って撃たれるのだ。
しかし、その脚本はシャマラン監督によって変えられた。
両親には冷淡な反応をされ、レドモンドのように同性愛を嫌悪する者もいる。レドモンドは過去にバーでエリックを殴った男だった。
同性愛者の人生はいまだにハードである。そして、養女のウェンとともに、世界は彼らにとって決して生きやすいものではない。
何も終末世界でなくても厳しい人生であるが、エリックは幸せな2人の未来を垣間見た。
そんなハッピーエンドをシャマラン監督は示したかったのだ。
「ノック 終末の訪問者」は、愛の形はいろいろあれど、本物の愛は世界を救えるパワーがあると主張する。
M・ナイト・シャマランは、「サイン」でも同じような未来を暗示し、愛の力で乗り切った映画を作っている。
いろいろな矛盾を抱え、かつどんでん返しも少なかった本作は、評価はイマイチであるものの、M・ナイト・シャマランのブレない映画づくりは、良くも悪くも次回作を期待してしまうものだ。
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