「聖なる鹿殺し」は2017年の洋画。
普通の話が展開されていると思いながらも不気味な効果音と不自然なアングル。そして感情が排除された人形ような役者たちの演技に、言いようもない不安に駆られる映画だ。
初見ではちょっと混乱するけれど、ギリシャ神話が元ネタとなっている。
コリン・ファレル、ニコール・キッドマンという名だたる俳優を起用した最高にサイコな映画に仕上がった。
映画だからこそできる表現が詰まった名作。
今回は謎多き「聖なる鹿殺し」の真実に迫る。
90点
「聖なる鹿殺し」映画情報
タイトル | 聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア |
公開年 | 2018.3.3 |
上映時間 | 121分 |
ジャンル | サスペンス |
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
「聖なる鹿殺し」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
スティーブン | コリン・ファレル |
アナ | ニコール・キッドマン |
マーティン | バリー・コーガン |
キム | ラフィー・キャシディ |
ボブ | サニー・スリッチ |
マーティンの母 | アリシア・シルヴァーストーン |
マシュー | ビル・キャンプ |
「聖なる鹿殺し」あらすじ
心臓外科医スティーブンは、美しい妻と健康な二人の子供に恵まれ郊外の豪邸に暮らしていた。しかし、彼らの特権的な生活は、ある少年を家に招き入れたときから奇妙なことが起こり始める。子供たちは突然歩けなくなり、目から赤い血を流す。そしてスティーブンはついに容赦ない選択を迫られることになる…。
filmarks
「聖なる鹿殺し」行動の意味をネタバレ考察・解説
ギリシャ神話「イーピネゲイア」がネタ元
「聖なる鹿殺し」というなんだか分からないタイトル。東洋に住む日本人にはあまり馴染みのない話だけれど、ギリシャ神話が元になっている。
映画の中で、キムは歴史にも長けていて、彼女が書いた「イーピネゲイア」の作文は評価されているという話が出てくる。そこからこの映画がギリシャ神話が元ネタになっていることがわかる。
イーピネゲイアというのは、ギリシャ神話に出てくる女性のこと。
神話の中で、イーピネゲイアの父、アガメムーンは女神アルテミスの怒りを買い、イーピネゲイアを生贄に捧げよという予言を受ける。
アルテミスの怒りを買い、軍の全滅を恐れたアガメムーンは、予言通りイーピネゲイアを生贄に捧げ、彼女自身もまた家族を守り、また英雄として死ぬことを承諾した。
そのアルテミスの聖獣が鹿なのだ。
それを裏付けるように、「聖なる鹿殺し」のところどころのシーンは、俯瞰で撮影されている。それは横からであったり、上からであったり色々あるけれど、それは全て神の目線かのような撮られ方をしている。
キムだけが死を望んだ意味
物語の後半、迫りゆく死を免れないと知った家族は、父にすがりつきはじめる。
妻は父の好きなドレスを着て誘惑し、子どもはまた産めるとはっきりと伝える。と同時に息子のボブは父に指摘されても聞かなかった髪を切り父に懇願する。
その中でキムだけが別行動をとる。一度はマーティンに一緒に逃げるように懇願するが、それが叶わないとわかると腹をくくり家族の犠牲になることを望む。これもギリシャ神話のイーピネゲイアと同じ流れになっている。
マーティンのパスタは何を意味する?
妻のアナがマーティンの家を訪れて、なぜ父親ではなく家族が犠牲にならなければならないのかと問いただす場面がある。
マーティンは、「父親とパスタの食べ方が似ていると言われたけれど、結局パスタの食べ方なんて誰しも同じなんだ」とアナ伝える。
つまり、食べ方のクセこそあれど、フォークでパスタをぐるぐる巻いて口に運ぶ動作は大きく変わらないように、父親の身代わりに家族の誰が死んでも同じなのだということを暗示している。
フェアかどうかはともかく、それが正義に近づいていることには違いないと。
マーティンの呪いに母親がかからなかったのはなぜか
マーティンは、
- 足が痺れ
- 食欲不振となり
- 目から血が出て
- 死ぬ
と言っていた。
ボブとキムの2人は彼の言ったように全身麻痺となった。ではなぜ、母親だけがかからないままだったのか。
これもギリシャ神話と照らし合わせると正解が見えてくる。ギリシャ神話では、アガメムーンの妻は他の男と関係を持っていて、この事件の後に不倫相手と共謀して浮気相手を殺している。
今回の呪いが父親の大切な人を殺すという呪いであれば、浮気をしている女は難を逃れた可能性がある。
事実、アナはスティーブンの同僚に対して性の処理をしている。
ラストのオチは?
ラストは少しギリシャ神話と話が違う。イーピネゲイアにもオレステスという弟がいるけれど、神話の中で身代わりで死ぬことはない。
あくまで神話が元ネタになっているだけなので、ストーリーは少し変わっているようだ。
ラストでは、スティーブンの家族がマーティンに出くわすことになる。
喫茶店でボブがいなくなった後のスティーブンの家族と再会する。
マーティンの呪いによってボブが死ぬことになり、心の奥底で煮えたぎる憎悪をアナとキムが向ける。
次に死ぬのはあなたたちの番だと。
ポテトにかかる血の色をしたケチャップが印象的なラストシーンだった。
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「聖なる鹿殺し」ネタバレ感想
ベッドシーンの妻と娘の男の誘惑の仕方や、同僚の真顔での手コキシーン、父親が最後にぐるぐる回って鉄砲を打つシーンなど、シュールでコミカルな動きがまた不気味さに拍車をかけていた。
音楽なんて最後までほぼなし。ときどきなる不安を煽る効果音以外には一切のバックミュージックを流さない。
映像から受ける不安要素に対してほとんどが無音で進行する場合、人は混乱するという。
不気味な効果音がそこかしこで響き渡り、物語に異常が起きていることを知らされる。グロいシーンなんてほぼないのにこの気持ち悪さを生み出している。
そしてたまに来る圧倒的な不協和音。
神の視点のアングルや、シャイニングを思い起こす廊下でのシーン、登場人物は支配されたように無感情に動く。
だから映画はおもしろい。
「聖なる鹿殺し」を観たならこれもおすすめ
「ウィッチ」はA24制作の映画。
19世紀のアメリカを舞台に、キリストに伝わる悪魔の話をベースに家族の周りにおこる不可解な現象に晒される。魔女の話を知らなくても十二分に楽しめるし、主演のアニャ・テイラー=ジョイはめちゃくちゃ可愛い。
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70点以上
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