「イノセンツ」は2023年公開の北欧映画。
大友克洋の「童夢」に影響を受けたという異能の力をもったサイキック映画は、北欧らしい雰囲気をまとい静かなるスリラーに。
ノルウェーにある団地で仲良くなった小学生の子供たちが、能力を開花させたことで、無邪気から邪悪へと変わっていく過程で起こる悲劇を描く。
サイコキネシスやテレパシー、他人を操る能力を駆使しながら始まるバトルはとても静かで北欧らしく洗練されている。
監督は、「わたしは最悪」でアカデミー脚本賞にノミネートされたエスキル・フォクト。撮影を「アナザーラウンド」のシュトゥルラ・ブラント・グロブレンが担当し、シン・童夢として見応えのある出来栄えに昇華されている。
北欧らしく多くを語ることを美としないため、具体的なサイキック能力の内容やラストに何が起きたのか?について考察・解説していく。
イノセンツ
(2023)
3.6点
スリラー
エスキル・フォクト
ラーケル・レノーラ・フレットゥム
- 大友克洋「童夢」に影響を受けたサイキックスリラー
- 無垢な子供たちが力に目覚め、悲劇に突き進む
- 「わたしは最悪」の脚本・エスキル・フォクト製作
- 北欧らしい静かなるサイキックバトル
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映画「イノセンツ」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
アイダ | ラーケル・レノーラ・フレットゥム |
アンナ | アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ |
アイシャ | ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム |
ベン | サム・アシュラフ |
映画「イノセンツ」ネタバレ考察・解説
子どもたちが持つサイキック能力とは
(C)Mer Film
舞台はノルウェーのとある団地。夏休みに引っ越してきたアイダは、サイキック能力を持った男の子と出会う。
その子の名はベン。彼のもつサイコキネシス能力は、最初はビンのフタなどの軽い物体を動かす程度であった。
そこに自閉症をもつアイダの姉・アンナと同じく団地に住むアジア系のアイシャが加わり能力が加速していく。
アイシャはテレパシー能力を持っており、遠く離れた場所でも意思疎通ができる。アイシャは、特にアンナの声がよく聞こえていて、話せない彼女の内なる声が聞こえていた。
これはおそらくシンパシー能力の一部であり、アンナだけでなくベンの家の状況もアイシャは感じるようになっていた。
アイダは、世話の焼けるアンナに両親の目が向きがちだったため、姉に嫉妬していた。
その嫉妬心から皮膚をつねるなど攻撃的な態度をとることがあったが、何の反応もないためは痛覚がないと考えていた。しかし、心の中ではしっかりと悲鳴をあげていたのだと知る。
そして恐るべきはアンナの能力だ。彼女といるとベンの能力も高まった。アンナには他人の能力を押し上げる力があった。
自閉症のアンナが自ら話すことはなかったため、具体的な能力は明らかになっていないが、特有の能力を持っていたようにみえる。
この4人は、最初は純粋に能力の力を使って楽しんでいただけだったが、だんだんと不穏な方向に向かっていく。
幼い無邪気な行動の裏に、子ども特有の邪悪な一面が顔をのぞかせる。
こういった攻撃的な一面が物語の異常性を加速させていく。
子供同士のちょっとしたケンカは、力を増幅させた彼らには命の危険さえあった。気を溜めて周囲の物体を動かす力は、恐ろしく増幅し、大木を折るほどにまで成長した。
ベンはなぜ母親を殺したのか?
(C)Mer Film
小学生は純粋さを持つ一方で、残酷な一面ものぞかせる。10歳ぐらいになると、素直にいうことを聞くだけではない。理不尽なことを言われれば両親に怒りを覚えることだってある。
しかし、身体的にも敵わず、言語化もうまくできない彼らはひっそりとストレスを溜めている。
母親との関係性は、ほんの1シーンであるがゆえに、具体的な背景はわからない。しかし、シングルマザーで愛情の薄い家庭環境にあることは想像に難くない。
ベンがネコの首を無慈悲に折ったシーンの悲しみと悪意の移り変わりは、彼のストレスや情緒の不安定さを表現している。
無垢で純粋な子供は、「死」という感覚すらまだ疎い。
強い力に目覚めたベンは、いっときの感情でサイコキネシスの力を使い、ナベを母親の頭上に落とし、助けを求める母親を見殺しにしてしまう。
そのドス黒い感情とともに、さらに他人を操る能力を身につける。
そこからベンは狂い始めた。気に入らない上級生の足をサイコキネシスの力で他人を使って折ったり、他人に襲わせて殺したりもした。
母親という歯止めがいなくなったことで、幼いベンを止める障害はなくなっていた。
それを止めようとしたアイシャも、彼女の母親を利用して殺してしまう。遠く離れた人間ですら意のままに操るのだ。小学生がこの力を覚えたらどうなるだろうか。
アンナとベンはどうなったのか?
(C)Mer Film
アイシャが死に、次に狙われるのはアイダとアンナだった。力を持っているはずのアンナだが、アイシャがいなくなってしまったことで再び意思疎通ができなくなってしまいった。
しかし、意思疎通はできなくなったものの、自閉症のアンナはベンがアイシャを殺したことを知っていた。
ベンが家の近くに現れたとき、アンナは明確に意思をもってベンを追いかけ、池を隔てて対峙する。
アンナの力は、おそらくベンと比べると少し微力である。ベンのサイコキネシス能力の前にアンナは一度倒れる。
しかし、アンナは、他の子供達の能力を増幅させることができる力を持っているのだ。
団地に住む子供たちの力を自分に集中させ、また、アイダと手を繋ぐことで、さらにパワーを高めた。
そのパワーは、ベンの呼吸を止めるには簡単だった。
休日中の家族が集まる中で行われた静かな闘いは、アンナたちの勝利に終わった。
アンナは何事もなかったように日常に戻ったが、アイダは人を殺したという恐怖に震えた。
痛みも感じないと考えていたアンナの心のうちに、確かな怒りを感じ取り、自分がしてしまったことの重圧に押しつぶされそうになっていた。
純粋で無垢な感情が崩壊していく第一次思春期を残酷に描き、不気味なスリラー映画として完成度の高い作品だった。
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