「ドリームプラン」は2022年の映画。
女子プロテニス界のトップに君臨するビーナスとセリーナを育て上げた父リチャード。テニス未経験のリチャードがプロへの育成を計画したドリームプランの内容を描く実話ベースの映画。
ウィル・スミスを主演に据えて2022年アカデミー賞の有力候補でもあるがゆえ注目度も高く、テニス好きなら現役で活躍するテニスプレーヤーの半生を見るだけでも楽しいだろう。
黒人であるがゆえの差別や偏見も含み、単なるスポコン映画にとどまらない。リチャードの行動も決して賞賛されるものばかりではないからこそ映画には魅力がある。
テニスに詳しくなくても楽しめる内容にはなっているが、なぜリチャードがかたくなに娘たちの大会出場を拒否した理由や、当時の人種差別などの話も交えて知っておいた方が楽しめることを書いていく。
「ドリームプラン」
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「ドリームプラン」映画情報
タイトル | ドリームプラン |
公開年 | 2022.2.23 |
上映時間 | 144分 |
ジャンル | スポーツ |
監督 | ライナルド・マルクス・グリーン |
映画「ドリームプラン」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
リチャード | ウィル・スミス |
オラシーン | アーンジャニュー・エリス |
ビーナス | サナイヤ・シドニー |
セリーナ | デミ・シングルトン |
リック | ジョン・バーンサル |
ポール | コーエン・トニー・ゴールドウィン |
映画「ドリームプラン」あらすじ
2人の娘を世界最強のテニスプレーヤーに育てる夢を持つ破天荒な父親リチャード。テニス未経験の彼は、姉妹が生まれる前から常識破りの「計画=ドリームプラン」独学で作成していた。その無謀なプランと娘の可能性を信じ続けた父は、どうやって 2 人の世界チャンピオンを誕生させたのか?
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映画「ドリームプラン」ネタバレ感想・解説
ビーナス&セリーナ姉妹とは
(C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
ビーナス、セリーナ姉妹を知らない人もいるだろうが、女子プロテニス界のトップに10年以上にわたり君臨し、テニス界では知らない人はいないほど有名な選手だ。
ビーナスはグランドスラムを7回、セリーナは23回(女性歴代2位)、オリンピックでは2人で5つの金メダルを獲得している。
映画の中では5人姉妹として描写されているが、他の姉妹とは異父姉妹であり、他に出てくる3姉妹はオラシーンの連れ子。
今も現役の選手であり、大阪なおみも影響を受けるなどテニス界では最強のプレーヤーである。
女子プロテニス史に名を残す2人の偉大なプレーヤーは、大坂なおみにも影響を与えた。その大坂が、2021年の全豪オープン女子シングルス準決勝ではセリーナに勝利。試合後、両者が抱擁するシーンに、世界中のファンが歓喜したことも記憶に新しい。
引用:fashion-press.net
当時はまだテニスは白人中心のスポーツだった。それゆえにビーナス、セリーナのような黒人たちの活躍は好奇の目にさらされることもあったり、見下しの対象となることもあった。
白人たちにはっきりとした差別意識があるわけではなかったとしても、リチャードには言葉の端々に“黒人”を特別扱いするニュアンスを感じ取ってしまう。
そんな逆境にも負けない彼女たちのポジティブさが映画の魅力の1つである。
ドリームプランとは
(C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
リチャードがテニスコーチのポールと会話している時にサラッと話しているが、娘が生まれる前からプロテニスプレーヤーとして育て上げる計画を練っていて、その計画書は78ページも及ぶという。
テニスプレーヤーにしたい理由はお金。テレビを見ていたリチャードは、テニスプレーヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿を見て決意したのだという。
黒人で貧困、成り上がるのが難しい環境で人生を変えるには、テニスのプロのような狭き門でしか叶えられないのだ。
しかし、テニスはすること自体にお金がかかる。だからこそリチャードは有名なプロコーチに交渉をし、ヴィーナスとセリーナの才能を見せつけてフリー(無料)でコーチをつけたのだ。
映画の中ではあっさり有名コーチを味方につけているが、泥臭い努力があったに違いない。
親子のサクセスストーリーは、天才の育成メソッドとしても需要は大きいだろうが、残念ながら「キング・リチャード」を観ていてもその秘訣を知ることは難しい。
映画を観ただけでは78ページに及ぶ計画書には何が書いてあったのかは全く分からない。わかるのは、娘をプロにするために最大限にやれることをやった父の奮闘があったことだけだ。
リチャードは賞賛される男なのか?
(C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
めちゃくちゃ家族愛が強く、一家7人が仲良く暮らしている場面しか映されないが、実はリチャードは3回も結婚していて、子供も他にたくさんいる。
ヴィーナス、セリーナ姉妹と異母兄弟のサブリナは「キング・リチャード」の公開に反応し、インタビューで強烈に批判している。
「キングリチャード(洋題)」は誇張しすぎだ。彼は自分のことをそう考えているが、リチャードの周りの人はそんなこと思ったこともない」
引用:insider.com
しかし、キング・リチャードというタイトルが正しいかどうかは別にしても、確かにリチャードの行動が正しいかどうかは議論を挟む余地がある。
リチャードは、結果的にヴィーナス・セリーナ姉妹を育て上げた成功者として映画化されている。
しかし、周りから見るとその行動に関しては懐疑的な部分も多い。
プロテニスコーチをつけたのにも関わらず、テニス未経験の彼がコーチの意見に反することを堂々と言ってのけるし、大会にも出場させようとしない。
晴れでも雨でも練習漬けの日々、大会で優勝した彼女らが盛り上がっていると、負けた相手のことを考えていないと車から降ろして置いてけぼりにしようとする。
周囲の目から見るとちょっと逸している行動だと感じるのは仕方がないところ。おせっかいな隣人が警察に通報するのもありえないことではないだろう。
大会に出場させないのは、彼が幼少期に経験したトラウマが原因ではあるが、それ以外は娘たちも進んで参加している。だから外野がとやかくいうことではないだろうが、育成に失敗していたらどんな批判を食らっていたのか分からない。
本人や妻とも相談なくコーチとの契約を切ったり、サポートも断る。マスメディアの対応も最悪で、ヴィーナスが気まずそうにしているシーンもある。
しかし、聖人君子とは決していえないリチャードだからこその魅力が詰まっていると言っていい。単なるビーナス・セリーナの成功物語や、お涙頂戴ものの家族愛にしないからこそアカデミー賞候補として取り上げられているのだ。
なぜリチャードはジュニアツアーへの出場を許さなかったのか?
(C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
プロにすると言いながら、ジュニアツアーへの出場を許さなかったリチャード。
ヴィーナスも出場を望んでいるのに許さないことに怒りを覚えた人も多いだろう。
ここについては映画の中で触れられることもなかったが、実際には早くから注目されることでライバルたちから研究されることを避ける狙いがあったという。
さらに、大会に出るような子供たちは大人たちに相当なプレッシャーをかけられていたという。親からコートから、うまくいかないと叱責され、テニスを楽しむことよりも勝ち負けの方が大事だった。
映画でも登場したジェニファーが逮捕された事件もその一例として紹介されている。
女子テニスは、ウィリアムズ姉妹以前も以後も、短命に終わった天才少女を何人も見てきた。中でも衝撃的だったのはジェニファー・カプリアティだ。16歳でバルセロナ五輪の金メダルを獲得した超天才少女がマリファナ所持で逮捕されたのは、まさにビーナスのプロデビューの数ヶ月前だった。
引用:number.bunshun.jp
将来有望な選手が道を踏み外したのは、彼女自身ではなく周囲の大人たちに問題があったことは想像にかたくない。
だからこそリチャードはコーチの指示に背くようなことをしたり、テニスだけでなく学業や信仰にも取り組ませ、一般的感覚を失わないようにしていたのだろう。
勝ち負けで自慢げにする子供たちにはシンデレラストーリーを見せ、無料の食事にも手をつけさせない謙虚さを教え込んだ。
だからこそ今でも2人は現役で活躍する偉大なテニスプレーヤーになったとも言えよう。
そんなリチャードが、別の家族では子どもを捨てて恨まれているのは興味深いところでもある。
アカデミー賞にふさわしい映画
「キング・リチャード」は、テニスに詳しくない自分としては、そこそこだったというのが正直な感想。
テニスに詳しい人なら自伝的な映画として受け入れられるだろうが、あまり詳しい説明はない。
10歳ごろから14歳でヴィーナスがプロになるまでの数年間のことがどれだけすごいことなのかあまり理解できない部分もあった。
しかし、感動させるサクセスストーリー、どちらかに偏ったマウント映画でもなく主人公のリチャード自身にも落ち度はあり、正直さもある。
貧困や犯罪についても描かれていて、道端で急に銃で撃たれる危険地帯は、さすがは伝説的なヒップホップグループNWAを生み出したカリフォルニアのコンプトンだけある。
他にも人種差別に子どものスポーツ育成に対する問題提起など、アカデミー賞にふさわしい要素もたくさんあった。
ウィル・スミスっぽいコミカルな要素もあるが、おおよそ本人には見えない憑依的な演技も楽しめる映画だった。
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