ウーマン・トーキング 私たちの選択は、2023年公開の映画。
アカデミー賞脚色賞にも輝いた本作は、実際にあった連続レイプ事件をもとに書かれた小説が原作。
南米ボリビアが事件の舞台だが、本作はキリスト教のとある村に設定を変え、男たちが女性を次々にレイプされた犯罪を描く。
映像をみると中世のようにもみえるが、実際に起きたのは21世紀。
なぜ数年間もレイプ事件が明るみに出なかったのか、なぜ犯人たちは捕まらなかったのか。
それは、彼女たちの特異な環境によるものだった。
アカデミー賞を受賞するだけあって、映像や音楽は凝っている。また、男性がほとんど出演しないことで、犯罪を行う男の怪物感が増し、物語に緊張感が増す。
ストーリーを追いながら、物語のテーマについて解説・考察していく。
ウーマン・トーキング 私たちの選択
(2023)
3.5点
ヒューマンドラマ
サラ・ポーリー
ルーニー・マーラー、クレア・フォイ
- 連続レイプ事件が起こった実話ベースの物語
- 与えられた選択は「何もしない」「戦う」「去る」
- あえて男を登場させない斬新な設定
- アカデミー賞受賞作品
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映画「ウーマン・トーキング 私たちの選択」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
オーナ・フリーセン | ルーニー・マーラー |
サロメ・フリーセン | クレア・フォイ |
マリチェ・ローウェン | ジェシー・バックリー |
アガタ | ジュディス・アイビ |
グレタ | シーラ・マッカーシー |
メジャル | ミシェル・マクラウド |
オウチャ | ケイト・ハレット |
ナイチャ | リブ・マクニール |
メルヴィン | オーガスト・ウィンター |
オーガスト・エップ | ベン・ウィショー |
スカーフェイス・ヤンツ | フランシス・マクドーマンド |
映画「ウーマン・トーキング 私たちの選択」ネタバレ考察・解説
ウーマン・トーキングは実話に基づいたストーリー
(C)2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.
「ウーマン・トーキング」は事実に基づいて描かれた小説が原作。
コロニーで連続レイプ事件が発生。
犯されたのは自分の家。しかし、数年間にわたって起きたこの犯罪は、幽霊や悪魔のしわざだと思われていた。
日本人的感覚からするとあり得ない話ではあるが、ドキュメンタリーにもなっている事実である。
舞台は南米のボリビア。そこに住むメノナイトの居住区でおきた事件。
プロテスタントのキリスト教の一派であり、平和主義的な信仰と独自の生活様式を取り入れている。暴力を使わず平和を重視し、電気や自動車を使わずに生活している。
映像をみると近代的な建物や電気が見当たらないため、中世のようにも感じるが、2005年〜2009年に起きた事件だ。映画の舞台は2010年の架空の村として設定されているが、話の中身は本当に起きたことである。
被害者は3歳から65歳という衝撃の犯罪が、なかなか公になることはなかった。女性たちの中には助けを求める声もあったが、被害妄想だとされていた。
理由はいくつかあるのだが、まずレイプ事件は気軽に口外できるものではない。さらに、被害者たちは牛に使う強力な催眠スプレーを使われていた。
意識を戻したときには、身体に激痛が走り血だらけ。何が起きたのかわからない人さえいたという。
しかし、それだけであればもっと早くに発覚してもおかしくない。
そうはならなかったのは、メノナイトの特殊な生き方が影響している。
M・ナイト・シャマラン監督の「ヴィレッジ」を思い出すが、メノナイトの住人たちは、外界と隔絶し、自給自足生活を行っている。
彼らは情報をも遮断する。教育も必要最低限しかありません。ここでは学校教育は中学生になる年には終了する。
たとえ情報にアクセスしても、文字すら認識できないようになっている。
自然と共に生きる彼らにとって、学ぶことは重要ではない。
しかし、そこには現代社会の便利な生活をメノナイトたちに知らせまいとする上層部の狙いが見え隠れしている。
あえて外界の情報を遮断することで、外の世界に興味を持たず、この平和で暴力のない居住区の中での生活をするように仕向けられているのだ。
しかし、暴力は内部に存在した。
日々被害者が増えていく中で、言葉を知らない彼女たちは、ソレらを伝える術を知らない。
これが、事件の発覚が大きく遅れてしまった原因である。
なぜ離れることを選んだのか
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しかし、ついに事件が発覚したのは、被害者の1人が顔を見たからだ。妄想と切り捨てられてきた犯罪は、メノナイトに住む男性だった。
加害者の保釈のために街に出ていった2日間、彼女たちは話し合いを試みる。
犯人がすぐそばにいて明日の安全も保証されない。
考えられる行動は3つ。
- 何もしない
- 戦う
- 離れる
女性だけで投票が行われ、3つの選択肢を選ばなければならない。
その選択肢に向き合ったメノナイトの女性たちは、議論を交わす。というのが映画の主軸である。
結果的に「離れる」ことを選んだのだが、オーナ、サロメ、マリチェの3人は違う意見を持っていた。議論だけで最終結論が出たのは、メノナイトの平和を愛する心ゆえなのか、それとも女性同士の協調性の高さなのかはわからない。
どの選択肢もメリット・デメリットがある。各々の立場により意見も違う。
「何もしない」ということは、男たちを赦(ゆる)さなければならなくなる。
「男たちを赦さなければ破門される」そう語るのは、メノナイトの思想が罪を認め、悔い改めれば赦されるという教えがあるがためだ。
だから女性たちはいくら強姦されようとも、明日の暮らしが不安でたまらなくても赦さなければならない。
破門されたら天国へ行けず地獄行き。宗教は人を救うこともあれば、人を殺すこともある。
もう1つの選択肢は残って戦うこと。しかし、戦うからには女性が平和で安全な生活を生きていくための権利を勝ち取る必要がある。
サロメは「戦う」ことに積極的だった。他の女性と違って攻撃だったのは、サロメの4歳の娘は男に強姦されていたからだ。
そして、3つ目の選択肢はコロニーから「離れる」こと。
しかし、この選択肢もまた難しかった。必要最低限の教育しか受けず、今自分が世界のどこにいるのかすら知らない。東西南北の意味すら習っていない。
地図もなければ生きていける場所があるかどうかも不透明だった。
しかし、オーナたちは離れることを決める。
自分たちの信念に基づいて行動するために、残るわけでも戦うわけでもなく、離れることを優先した。
男たちと離れることで、いつか赦せる日が来るかもしれないとオーナは話す。
オーガストはなぜ破門されたのか
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物語の中に唯一、男性として登場するのがオーガスト。
彼の親もメノナイトだったが、破門されている。
その理由はオーガストの母親とメノナイトの共同体との意見が食い違ったためだ。
男性が一方的に優位な社会。厳しい規律をもつ組織など自由が乏しいコロニー。
特に、オーガストが、一般社会に戻り大学へと進んだことから、教育が軽視されるコロニーに対して異議を唱えた可能性が高い。
現状を変えていくことを嫌う共同体は、オーガスト一家を破門する。
一度はコロニーを離れたオーガストだったが、大学を出たのち、オーガストはコロニーに戻った。幼馴染のオーナを愛していたためである。
そのオーナがレイプされたという事実を知ったオーガストのショックは計り知れない。
オーガストは男性の良心を担う役割として登場する。
ラストの意味
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3つの意見に分かれていたが、多くの女性たちは「離れる」ことを選んだ。
オーガストとオーナはお互いに惹かれあっていた。
しかし、2人は別の道を歩むことになる。オーナはお腹にいる新たな子供と、オーガストは残った子供たちを導くために。
男の支配から逃れ、自分たちで決断する自由を得るには責任が伴う。
唯一外の世界を知っているオーガストは同行せず、教育もまともに受けていないオーナたちが、安定した生活を手に入れるには多くの困難が予想される。
しかし、ラストでオーナに子供が生まれたことは、一筋の希望をさし示している。
少なくとも外の世界で子供を無事に産んだことは間違いない。自由を手にした彼女たちは未来への切符を掴んだのだと期待したい。
「ウーマン・トーキング」は女性の困難や男性優位社会を描いた作品である。現代社会に生きる私たちには誇張した創作映画のように見えてしまう。
しかし、これはまぎれもなく実際に起きた事件であり、起こったのは21世紀である。
女性たちの意見は実に多様だった。スカーフェイスのようにコロニーの中で生きていくことを断固として選んだ者もいる。
しかし、彼女もまた迷っていたのだろう。娘や孫たちは離れたものの、引き止めることはしなかった。
正解のない出口の中で、女性たちが自分で考えて選択を行った。その行動こそが正解なのだ。
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