映画「スペンサー」は2022年公開の映画。
1995年に事故で亡くなったダイアナ妃。波乱に満ちた人生の中でとりわけ大きな決断をすることとなった1991年のクリスマスの祝賀会に焦点を当てた作品。
すでに夫のチャールズ皇太子との関係は冷え切っており、夫の不倫や王室での抑圧的な生活を強いられる日々。そしてパパラッチによる私生活の侵害に辟易としていたダイアナは精神的に参っていた。
冒頭から不可思議な言動をとるダイアナと、それに呼応するかのように奏でられる不協和音の混じったクラッシックが王室の異常性を浮き彫りにする。その不気味さは観ている者もだんだんと巻き込み、いつしかその悪夢の中に取り込まれていく。
ダイアナ妃を知らないと、スリラー要素のある映画にも感じてしまうが、ダイアナ妃の内面を描いたヒューマンドラマ。庶民に人気のあったダイアナ妃の内幕を知ることのできる一作。
主役をつとめるのは「パニック・ルーム」で逃げ惑う子役を務めたクリステン・スチュワート。
この記事では、当時の背景をもとに映画を楽しむうえで知っておくとより映画を楽しめる7つのことについて語っていく。
「スペンサー ダイアナの決意」
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「スペンサー ダイアナの決意」映画情報
タイトル | スペンサー ダイアナの決意 |
公開年 | 2022 |
上映時間 | 111分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | パブロ・ラライン |
映画「スペンサー ダイアナの決意」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ダイアナ | クリステン・スチュワート |
映画「スペンサー ダイアナの決意」あらすじ
1991年のクリスマス。ダイアナ妃とチャールズ皇太子の夫婦関係はもう既に冷え切っていた。不倫や離婚の噂が飛び交う中、クリスマスを祝う王族が集まったエリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウス。ダイアナ以外の誰もが平穏を取り繕い、何事もなかったかのように過ごしている。息子たちとのひと時を除いて、ダイアナが自分らしくいられる時間はどこにもなかった。ディナーも、教会での礼拝も、常に誰かに見られている。彼女の精神はすでに限界に達していた。追い詰められたダイアナは、生まれ育った故郷サンドリンガムで、今後の人生を決める一大決心をする――。
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映画「スペンサー ダイアナの決意」で知っておくべき7つの事実 ネタバレ解説
ダイアナ王妃の人気の理由
©️映画「スペンサー ダイアナの決意」
映画「スペンサー ダイアナの決意」として映画化されるまでに人気のダイアナ妃。イギリス王室を離れたダイアナ妃になぜこれほどまでに人気があるのか。
1997年8月にパパラッチから追われる途中で事故で亡くなったのが37歳。当時、日本でもセンセーショナルに報じられ、暗殺や陰謀論まで噂されたほど。
ダイアナ妃は王家のルールを次々と破る自由奔放で型破りな性格の持ち主。抑圧された庶民にとって特権階級への反逆を行うダイアナ妃に人気が集まっていた。
息子たちには普通の生活をさせ王室と庶民の暮らしの違いをわからせようとしていた。多くのチャリティ活動に参加し、一線を引いていた王室の態度とは異なり、自ら現地に赴き自身の目で確認する姿勢を崩さなかったという。
当時不治の病として恐れられていたエイズ。エイズに対する偏見をなくすために、彼らと握手して抱き締めることすらしていたりと分け隔てなく思いやりをもって接していたことも好感を持たれている女性だった。
しかし、自由を得ながら生きていくのは簡単ではなかった。英国王室内のゴタゴタや夫の不倫、マスコミからのバッシングなど、多くのストレスを抱えていた。そのギリギリのところを描いたのが「スペンサー ダイアナの決意」である。
チャールズ皇太子の不倫は見て見ぬふりがマナーとされていた
©️映画「スペンサー ダイアナの決意」
ダイアナ妃が20歳のときに結婚した。その頃、チャールズ皇太子は30歳。その後、ウィリアム王子とヘンリー王子を2人の間にもうけるも結婚生活はうまくいっていなかった。
チャールズ皇太子は女性遍歴があまりよろしくなく、何人も愛人がいたからだ。
しかし英国王室では愛人の存在は見て見ぬふりがマナーとされていたため、その振る舞いも自由だった。
ダイアナ王妃は高貴なスペンサー家の出身でありながら、幼少期に両親が離婚したことで「見て見ぬふり」という高貴なマナーを理解できないまま育ったという。
そこにチャールズ皇太子のダイアナ王妃への無関心さもあいまって悲劇を生んでしまったのだ。
映画の中で黒いドレスを着ようとして、「喪に服しているわけではないでしょ」とマギーに止められるシーンがあるが、これは黒の嫌いなチャールズ皇太子へのあてつけでもあり、ダイアナ自身が好きなファッションでもある。
価値観がそもそも合わない夫婦だったのだ。
ダイアナがウィリアム王子とヘンリー王子の子育てをするのは普通じゃなかった
©️映画「スペンサー ダイアナの決意」
ダイアナ妃は王室のルールを破り、人道支援に献身的であったことから多くの庶民から尊敬の念を抱かれ続けている人物だが、子育てこそすべてに優先される最重要事項であった。
ダイアナ妃は自分の息子たちにも人道支援に参加させ、王室の暮らしがいかに特別なものかを理解させようとしていた。
また、若くして女王に即位したエリザベス女王とは異なり、子育てを乳母にまかせず、自身で積極的に行ったとこも英国王室としては異例だった。その精神はウィリアム王子やヘンリー王子の子育てにも受け継がれている。
参考:婦人画報
ダイアナ王妃はうつ病の症状があった
©️映画「スペンサー ダイアナの決意」
映画冒頭から奇行が目立つダイアナ妃。これは1991年にサンドリガム宮殿で王家の人間と過ごしたクリスマスの3日間が舞台。王室の中ではスタッフに常に監視され、外に出ればマスコミに付け狙われる彼女にとってストレスは尋常ではなかった。
ある夜、お城の冷蔵庫に忍び込み、食べ物を口に詰め込んでいたのは過食症が理由だ。
1995年のBBCドキュメンタリー「Panorama」のインタビューでそのこちについて本人の口から明かしている。当時の私たちには知られざる事実がこの映画で浮き彫りになっている。
彼女の精神的に不安定な様は口調や奇行にも現れているが、その不安の現れを不協和音をつかったクラッシック音楽で、効果的に観客へそのストレスを伝えているのは印象的だ。
愛する我が子と夫とイギリス王室への不信感をギリギリの精神状態でバランスを保ちつつ、崩壊寸前の部分だけを切り取ったのが「スペンサー ダイアナの決意」である。
しかし、何も知らない人が見るとダイアナ妃の奇行ばかりが目立つあまり気持ちの良い映画ではないだろう。
アン・ブーリンとは誰なのか?
©️映画「スペンサー ダイアナの決意」
ダイアナ妃が幻覚として見た人物、アン・ブーリン。
16世紀のイングランド王・ヘンリー8世の妃であり、男の子を流産したがために斬首刑に処された女性。
エリザベス1世の母でもある。不遇な人生を送り、幽閉されていたロンドン塔ではアン・ブーリンの幽霊が出るという噂で有名でもある。ダイアナは、アン・ブーリンに降りかかった出来事と自らを重ね合わせる。映画の肝の部分である。
エリザベス女王は、イギリスと英連邦の君主であるだけでなく、16世紀にローマカトリック教から分離した英国国教会の最高権威者でもある。そのきっかけを作ったのはアン・ブーリンでもある。
参考:BAZZAR
マギーは実在しない女性
©️映画「スペンサー ダイアナの決意」
映画の中でダイアナ妃の着付け役であり数少ない王室での親友の1人、マギーについて。マギーが王室の仕事から外された時、ダイアナは他の着付け役を拒否するほど精神的に追い込まれていた。
そして、ラストシーンでダイアナ妃のことを想っていたと告白したマギーという人物。彼女は実在しない女性だ。
Spencer screenwriter Steven Knight confirmed that Maggie isn’t based on a “specific” person.
(脚本家スティーブン・ナイトはマギーが実在の人物ではないことを認めている。)
引用:stylecaster.com
しかし、サンドリンガム宮殿にいるスタッフからの情報をもとにしていて、確かにダイアナが好んでいるスタッフが中にいたという。
全ての行動を監視され、息の詰まる思いだったのは映画の中からわかるが、誰を信用していいかわからない状態でも数少ない信用できる人を周囲に置いていたという。マギーは特定の誰かではなく宮殿の中にいた複数の人物をモチーフにしている。
1人はダイアナが王室を離れたあとも執事として働いていたポール・バレル。
ポール・バレルは2017年にゲイをカミングアウトしていて、そのことを知っていた唯一の女性がダイアナだったことも、映画の中でのマギーとダイアナの関係を想起させる。
もう1人はダイアナのスタイリストであるアンナ・ハーヴェー。いくつかのシーンでアンとダイアナの親密性を連想させるシーンが挿入されていて、黒いドレスの件もその1シーンだ。
ラストはダイアナがスペンサーになることを決意するまで
©️映画「スペンサー ダイアナの決意」
イギリス王室の伝統行事であるキジ撃ちに現れたダイアナは2人の息子を連れてサンドリガム宮殿から抜け出す。
ダイアナ妃がイギリス王室と決別することを決意したことを示している。
2人の息子を連れ出してファストフードで食事をする。そして旧名である「スペンサー」と名乗るのだ。
91年クリスマスの出来事をきっかけに92年には別居、そして96年に正式に離婚している。
とうわけでダイアナ妃のことを全く知らない人が見ても楽しめる映画ではないが、現代のインフルエンサー的な立場の人間がいかに精神を蝕まれていたのかがわかる作品。
最初は意味不明な言動が多いものの、特徴的な音楽やクリステンスチュワートの渾身の演技に魅了されればいつの間にか引き込まれていく映画だろう。
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