映画「リコリス・ピザ」感想・解説　知らないとつまらない70年代のハリウッド事情

2022年3月26日2023年11月6日

「リコリスピザ」は2022年に公開される映画。

1970年代のハリウッドを生きた2人の若い男女による恋愛映画。お互い惹かれ合っているのにタイミングが合わず、ヤキモキするタイプの初々しい作品だ。

邦画では30年間すれ違いながら歩んだ映画もあるが、「リコリスピザ」はそこまでじれったくはない。それどころか、キュンキュンするような演出はほとんどなく、映画の大半がこの時代に活躍したハリウッド関係者にフォーカスがあたる。

そして時の流れに対しての補足もないので、この時代のハリウッド事情に詳しくなければ楽しめる要素は少ない。

監督はポール・トーマス・アンダーソン。「マグノリア」という衝撃の映画を作ったクセのある監督は、意味は分からなくても冗長さを感じさせない構成と演出は素晴らしかった。

しかし、何も知らないとやっぱりつまらないので、当時のハリウッド事情は知っておこう。

「リコリス・ピザ」

おすすめ度

48点

2022.7.1

133分

コメディ

ポール・トーマス・アンダーソン

アラナ・ハイム

Amazonで探す

2022年アカデミー賞ノミネート

見どころ

すれ違う男女の恋物語
70年代のハリウッド事情を知らないとイマイチ
ノスタルジーなアメリカンカルチャーなどの演出は良き

テーマ

芸術

エンタメ

雰囲気

暗

明

損しないサブスク動画配信の選び方

映画を観る機会が多い方のために、損しないサブスクの選び方を教えます。

「リコリス・ピザ」映画情報

タイトル	リコリス・ピザ
公開年	2022.7.1
上映時間	133分
ジャンル	コメディ
監督	ポール・トーマス・アンダーソン

映画「リコリス・ピザ」キャスト

登場人物	キャスト
アラナ・ケイン	アラナ・ハイム
ゲイリー・ヴァレンタイン	クーパー・ホフマン
ジャック・ホールデン	ショーン・ペン
レックス・ブラウ	トム・ウェイツ
ジョン・ピーターズ	ブラッドリー・クーパー
ジョエル・ワックス	ベニー・サフディ
ゲイル	マーヤ・ルドルフ
ランス	スカイラー・ギソンド
マシュー	ジョセフ・クロス

映画「リコリス・ピザ」あらすじ

映画「リコリス・ピザ」で実在した人物たちネタバレ解説

リコリス・ピザは事実に基づいたストーリー

「リコリスピザ」のストーリーはポール・トーマス・アンダーソン監督のハリウッドでの経験がもとになっている。

そして、主演のゲイリー・バレンタインはアンダーソン監督の友人であるゲイリー・ゴーツマンを手本にしている。

2人の行動で出会う人々の多くが、当時のハリウッド時代のキャラクターを思い起こさせ、ノスタルジーを感じさせてくれるのだ。

しかし、日本人には馴染みがないので、それぞれモデルになっている人物を紹介していく。

ゲイリー・ヴァレンタインのモデル

ゲイリー・バレンタインのお手本になっているゲイリー・ゴーツマン。映画の中で表現される通り、子役としてハリウッドのテレビに出演し、今はプロデューサーで活躍している。

トムハンクスと共に映画プロダクションを立ち上げ、「羊たちの沈黙」や、最近だとNetflixオリジナルの「茫漠たる荒野で」にも関わっている。

ゲイリーが出演したという「Under One Roof」は、「合併結婚（Yours, Mine and Ours）」という名前のタイトルで実際に存在する。

そして起業家としてウォーターベットやピンボールゲームの会社を経営していたというのも事実である。

ジョン・ピーターのモデル

ゲイリーたちがウォーターベッドを買った家で出会ったジョン・ピーター。ヘアドレッサーからプロデューサーヘ転身した人物で、実際に存在する。

ゲイリーが何度も復唱させられるバーブラ・ストレイサンドという名前の女性も、実際に存在する女優で、2人は12年間付き合っていたそうだ。

ゲイリーを脅したり、アラナにセクハラしたり、ガソリンスタンドでガソリンとライター片手に見知らぬ男に迫る行為はサイコパスのようであるが、事実、悪名高い人間だった。

ジャック・ホールデンとジョエル・ワックスのモデル

バイク乗りとして出てくるジャック・ホールデン。アラナのオーディションで出会い、スタンドシーンではアラナをバイクから振り落とした彼は、ウィリアム・ホールデンがモデル。

ウィリアム・ホールデンは何度かバイク乗りとして映画に登場し、アカデミー賞も授賞している俳優だ。

政治家として登場したジョエル・ワックスは実在の人物と同じ名前で登場している。劇中でマシューという恋人と口論するシーンが登場するように、彼はゲイである。しかし当時彼はそのことを隠していた。

ルシル・ドゥーリトルとメアリー・グレイディのモデル

ゲイリーが出演したテレビ番組のホストをやっていたのがこの女性。ルシル・ボールという女性がモデルになっている。この女性もゲイリー・ゴーツマンの実際の体験談に基づいて演出されているそうだ。

ルシル・ボールはアメリカのコメディで絶大な人気を誇った女性であり、「アイ・ラブ・ルーシー」という番組では視聴率を50%を獲得するほどだった。

参考：海外ドラマboard

電話越しに「No」と何度も言っていたメアリーは、多くのハリウッドスター子役を生み出してきたエージェント。

こんな感じで当時、ゲイリー・ゴーツマンが見てきた子役という立場でハリウッド業界に関わった人物がたくさん出ている。だからハリウッドをよく知る者には楽しいし、アメリカのテレビを見ていた人には懐かしく映るだろう。

しかし、ほとんどの日本人は知らないだろうから何も知らずに見ると楽しみにくい。

映画「リコリス・ピザ」ストーリー解説・感想

リコリスピザのタイトルの意味

リコリスピザというタイトル映画を見ればわかるが、タイトルの意味と内容が全く一致しない。実はこれは、当時LAに存在したレコードチェーン店の名前だそうだ。

他にもいくつか候補はあったようだが、最終的に落ち着いたのは「リコリス・ピザ」。

決定した理由は、アンダーソン監督が子供の頃の記憶を条件反射的に呼び起こすワードからきたとのこと。

聞いただけでノスタルジーを感じるワードというのは、みんなそれぞれ存在するだろうが、アンダーソン監督にとっては「リコリス・ピザ」のようだ。

子供の頃に存在したけど今は存在しないモノの名を聞くと懐かしさを感じるだろう。

無神論者ランスのシーンは実話

アラナが良い関係になりそうだったランス。アラナの家でディナーをしようとしたときに、ランスが無神論者だと分かり、微妙な空気になるシーンがある。

あのシーンはアラナ自身の実際の体験談をベースにしている。この体験談をアンダーソン監督に話したところ、そのシーンを取り入れることが決定したそうだ。

あれも日本人にはわかりにくいシーンになっているが、ディナーの日はユダヤ教の安息日にあたるようで、同じユダヤ人であるランスを食事の席に呼んだ特別な日なのだ。

しかしながら実はランスが無神論者という事実が発覚し、大切な祝いの席を台無しにしたというわけ。

No.12のシャツを着た男は誰なのか

アラナが電話対応をしているときに気づいたNo12.のシャツを着た長髪の男。アラナが確認しにいったが話をはぐらかし、目的は不明だった。

彼については最後まで言及はないが、誰だったのか。

その後、ワックがアラナを食事に呼んだところに答えがある。ワックはゲイのパートナーと食事をしているところにアラナを呼び寄せ、一緒に帰るように命じた。

その場所にNo12.のTシャツを着た男がいたのだ。おそらくジャーナリストもしくは政敵が送り込んだ監視者であり、議員であるワックのスキャンダルを掴もうとしていたと思われる。

そのため、アラナとパートナーであるマシューと恋人を装って帰らせたのだ。

参考：thewrap.com

リコリス・ピザでのアジア人差別表現

「リコリス・ピザ」にはアジア人差別の表現があると批判が上がっている。

問題のシーンは、白人レストランのオーナーが日本人妻の女性の発音を茶化すシーン。

アカデミー賞にノミネートされたことに対してアジア系の団体から反対の声が上がっているようだ。

私としては大して気にも留めなかったが、当時のLAの状況を再現しているのであれば、それはそれで良い気がする。

アンダーソン監督もインタビューの中で以下のように語っている。

途中で飽きさせず、最後まで魅せるのは再現度の高いセットのクオリティや、当時の雰囲気を表現したレベルの高さにあるだろう。

一方で、やきもきしたり、付かず離れずの恋愛要素は少なく、2人の心情に肩入れしづらい。

なんと言ってもハリウッド事情がわからないので面白さを見出すことができなかったのがとても残念だった。

映画「リコリス・ピザ」を見たならこれもおすすめ

この記事が気に入ったら
フォローしてね！

Follow @tolkobamovie Follow Me

よかったらシェアしてね！

URLをコピーしました！