キャッシュトラックは2021年のガイリッチー映画。
前作「ジェントルメン」から半年で次回作リリース。コロナ禍の影響で公開時期が乱れたのが原因だろうけど、いずれにせよガイリッチー好きなら嬉しい限りだ。
現金輸送車の警備会社に雇われたジェイソン・ステイサムが、現金強奪犯とバトルを繰り広げるクライムサスペンス。
てっきりガイ・リッチー節が炸裂したコメディ要素を入れてくると思っていたら終始シリアスでハードな展開に。
凡人かと思わせておいて、実はめちゃくちゃな能力隠してました的な流れは男心には激アツ。
無敵のステイサムに、ガイリッチーのハードボイルドな演出が決まり、よくある展開のストーリーなのにがっつりのめり込んでしまった。
どれだけストーリーが使い古されていても扱う人や役者が違えばここまで調理できる。まだまだ映画の進化は止まらない証明をしてくれた最高の映画だった。
キャッシュトラック
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「キャッシュトラック」映画情報
タイトル | キャッシュトラック |
公開年 | 2021.11.8 |
上映時間 | 119分 |
ジャンル | クライム、サスペンス |
監督 | ガイ・リッチー |
映画「キャッシュトラック」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
パトリック・”H”・ヒル | ジェイソン・ステイサム |
バレット | ホルト・マッキャラニー |
ジャクソン | ジェフリー・ドノヴァン |
ボーイ・スウィート・デイヴ | ジョシュ・ハートネット |
カルロス | ラズ・アロンゾ |
サム | ラウル・カスティーリョ |
ブラッド | デオビア・オバレイ |
テリー | エディ・マーサン |
ジャン | スコット・イーストウッド |
トム | クリス・ライリー |
ダナ | 二アム・アルガー |
ザ・キング | アンディ・ガルシア |
映画「キャッシュトラック」あらすじ
LAにある現金輸送専門の警備会社フォルティコ・セキュリティ社。日々、現金輸送車/キャッシュトラックを運転するのは、特殊な訓練を受け厳しい試験をくぐり抜けた強者の警備員たち。そこに雇われた新人パトリック・ヒル(ジェイソン・ステイサム)、通称“H”。試験をぎりぎりで合格した彼は周りから特に気に留められる存在ではなかった。しかし、彼の乗ったトラックが強盗に襲われた時、驚くほど高い戦闘スキルでそれを阻止する。さらには、再びHの乗るトラックが強盗に襲われると、彼の顔を見た犯人たちはなぜか金も奪わずに逃げてしまう。彼は一体何者なのか?周囲が疑心暗鬼に陥る中、全米で最も現金が動く日“ブラック・フライデー”にフォルティコ・セキュリティ社に集まる1億8,000万ドルの大金を狙う強奪計画が進行していた…
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映画「キャッシュトラック」ネタバレ感想・解説
ヒーロー(英雄)かヒール(悪党)か
まず掴みからしてアツい。
凡人そうに見える奴が実はめちゃくちゃ強いという設定は少年ジャンプだけでなく、数あるストーリーの中に組み込まれている。
「Mr.ノーバディ」の映画も同じような設定だったが、ガイ・リッチーは見せ方がまた上手いのだ。
舞台はLAにある現金輸送専門の警備会社。
入社試験を受けにきたパトリック・ヒルが主人公だ。
厳戒態勢で運ばれる現金輸送車の警備の仕事にはかなりの訓練を必要とするので要求される能力の水準は高い。
その試験を受けるものの銃の精度は悪く、運転技術もいまいち。しかしギリギリの合格点で入社したヒルは仲間に通称Hと呼ばれる。
そんな感じで大した人材じゃないよと思わせつつも、何かに思い詰め、覚悟を決めているようなそんな不気味さを醸し出していく。
そこに漂う音楽もまた最高だ。ずっと不穏な重低音が響き、ただの新人だと思わせない。しかし何者なのかはわからない。そんな時がしばらく続く。
この重低音は最後まで一貫して続くのもたまらない。ずっと彼の奥底にくすぶり続けるドス黒い憎悪が渦巻いているかのように。
そして能あるタカがついに爪を見せる。
ある日現金輸送車が襲われた時、見事な手つきで犯人たちを一掃する。この辺りが少年誌を見てきた身としては最高にクールで胸アツな展開だ。
スナイパーライフルでもないただのハンドガンで狙ったところに必ずヒットさせ、一撃で仕留める。
もはやHがヒーロー(英雄)でもヒール(悪役)でも関係ない。とにかく痺れる憧れる状態だ。
2度目の襲撃では、ステイサムが顔を晒しただけで、犯人たちが恐れおののき逃げ出す始末。
男なら一度は夢想した無敵の男がそこにいる。
“H”の目的はなんだったのか
Hの目的は復讐だった。彼は現金輸送車を狙う組織のボスだった。
部下からの依頼で次のターゲットであるフォルティコセキュリティの偵察に来た際に、一緒にいた息子が巻き添えになり殺されてしまう。
犯人の顔を見たHは、組織を動かして必死に捜索するも見つからず、最終的に内部通告者がいると睨んで潜入捜査に向かったのだ。
だからめちゃくちゃ場慣れしているし、根性も座っていれば、拳銃の扱い方もうまいのだ。その素性を隠すためにあえて能力を隠していたが、一旦強奪が来たら関係ない。
彼らが息子の命を奪った者かもしれないと容赦なく殺す。
そして彼の顔を見て逃げたものは同じ組織の部下だった。彼は誰にも言わずに組織に潜り込んでいたから知らなかったのだ。
また、これらの情報はザ・キングと呼ばれるFBIのトップと思われる人物から渡されている。
“H”の思惑と犯罪者を一掃したい?FBIの思惑がからまり、血みどろ合戦が起きるのも見どころの1つである。
息子を殺した犯人は誰なのか?
犯人はアフガニスタンに派遣されていた帰還兵。
アフガニスタンからアメリカ兵士が完全撤退したのは記憶に新しい。
治安維持のために20年に渡り駐留してきたが、撤退と同時にタリバンに乗っ取られたことが治安の悪さとアフガニスタン派兵の失敗を物語っている。
そんなやるかやられるかの世界にいながら帰還してきたのがジャクソンたちだ。
「退屈は銃弾よりも危険」というように、命の危険を伴う状態に慣れていて、アメリカでの生活はあまりに退屈だった。
加えて帰還兵に対する処遇も悪く、これが原因で強盗を行い始める。内部協力者の協力を仰ぎながら進めていくうちに、仲間の1人であるジャンがHの息子を殺してしまうのだ。
そして彼らの最後の大仕事として、フォルティコセキュリティの本部から金を全て奪い取るという計画を立てる。
その日が全米で1番現金が動く日がブラックフライデー。
日本にはあまり馴染みはないけれど、Amazonを使っている人なら聞いたことあるかもしれない。
11月の第4週目にあり、アメリカ感謝祭の翌日のため、小売業界における最大の商戦。
だからこの日は多くの現金がキャッシュトラックに集まってくる。
「キャッシュトラック」のラスト
内通者はHとバディ関係にあったバレットだった。彼はジャクソンたちを手引きし、本部の中に潜り込ませる。
そして、内部から金を強奪しようとするも、激しい銃撃戦の中、最終的に生き残ったのはジャンだけだった。
Hはバレットに撃たれたものの脅威の精神力で生きていた。周到な計画の中、強盗犯は警察やSWATを出し抜いて逃げおおせたものの、Hはしっかり追い詰める。
そして、息子の死因と同じように肝臓、肺、脾臓、心臓を撃ち抜いて復讐を遂げるのだった。
しかし彼の表情からは満足感も充足感もない顔のままだった。
何も残らない復讐劇の果てに、仲間の車に乗り込み去っていく構図が哀愁を表している。
この激しい銃撃戦の中で、マネージャーは「オレらの金じゃないから逃げろ」と言っていたけれど、何人かは正義感のために銃撃戦に参加する。
武装した相手に敵うはずもないのに、隠れていることはプライドに触るのか応戦して殺される。
最初の強盗にあった時に散々ビビっていたボーイは、ヘタレを克服しようとしてあえなく撃沈。
この辺りの伏線をサラッと潰すあたりがたまらない。
有名な沈没船ジョークがあるが、アメリカ人を海に飛び込ませるため場合、「英雄になれますよ」だが、まさにそれを表していた。
ちなみに日本人は「みんな飛び込んでますよ」だ。
とにもかくにも、ガイ・リッチーらしいネタバレまでの展開手法はそのままに、コメディ要素を消したシリアス版ハードボイルド映画は最高だった。
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