「アルキメデスの大戦」は2019年の映画。
数学の力で大艦巨砲主義を否定しようと、大和のモデルとなる建造費の不正を暴くという話。
原作が「ドラゴン桜」の三田紀房だけあって、話の惹き込みかたはうまい。
大艦巨砲主義を否定する意味で武力闘争でも、外交でもなく、数学を使うあたりが三田氏らしい着眼点だ。
それに対して残念だったのは、映像と演出。
VFXといえば山崎貴監督というぐらい迫力がある映像を作れる人だけれど、「アルキメデスの大戦」では、作り物感が強かった。
脚本はおもしろいのに、テンションがうまくかみ合っていないのか、登場人物の熱も伝わりきらなかった。
カラダとココロが離れているような、そんな映画だ。
52点
「アルキメデスの大戦」映画情報
タイトル | アルキメデスの大戦 |
公開年 | 2019.7.26 |
上映時間 | 130分 |
ジャンル | 戦争 |
監督 | 山崎貴 |
映画「アルキメデスの大戦」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
櫂直 | 菅田将暉 |
田中正二郎 | 柄本佑 |
尾崎鏡子 | 浜辺美波 |
大里清 | 笑福亭鶴瓶 |
宇野積蔵 | 小日向文世 |
永野修身 | 園村隼 |
嶋田繁太郎 | 橋爪功 |
平山忠道 | 田中泯 |
山本五十六 | 舘ひろし |
セツ | 木南晴夏 |
映画「アルキメデスの大戦」あらすじ
日本と欧米の対立が激化の一途を辿っていた第二次世界大戦前の昭和8年…。日本帝国海軍の上層部は超大型戦艦「大和」の建造計画に大きな期待を寄せていた。そこに待ったをかけたのは、海軍少将・山本五十六。山本はこれからの戦いに必要なのは航空母艦だと進言するが、世界に誇れる壮大さこそ必要だと考える上層部は、戦艦「大和」の建造を支持。
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危機を感じた山本は、天才数学者・櫂直(菅田将暉)を海軍に招き入れる。櫂の数学的能力で、「戦艦大和」建設にかかる莫大な費用を試算し、その裏に隠された不正を暴くことで計画を打ち崩そうと考えたのだ。「軍艦の増強に際限なく金が注がれ、やがて欧米との全面戦争へと発展してしまう。そんなことはあってはならない!」と、櫂は日本の未来を守るため、海軍入隊を決意。持ち前の度胸と頭脳、数学的能力を活かし、前途多難な試算を行っていく。だがそこに、帝国海軍内の大きな壁が立ちはだかっていく・・・。
映画「アルキメデスの大戦」ネタバレ感想・解説
VFXは限界なのか?
この手の映画を観ると、比べても仕方ないと言いつつ、ハリウッド映画がちらついてしまう。
アメリカが作る戦争映画は、現実に起こっているかのような迫力だからだ。
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「アルキメデスの大戦」の舞台となる昭和8年と同じく、アメリカと日本の予算費は数十倍も違う。立ち向かうこと自体に限界があるし、まぁ立ち向かっているつもりもないだろうけど、同じ舞台に上がられるとどうしても比べてしまう。
邦画の良さは壮大で迫力あるところではない。でも、壮大さで勝負を挑まれるとどうしても戦うしかないのだ。
実際に飛行機を購入して爆破させるなどといったムチャクチャをやる予算は到底ない。だからこそVFXという技術を駆使するわけだけど、
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そうするとやっぱり映像の粗さが目立ってしまう。
戦争を描くにはキレイすぎる。どこかリアルさが少ない。
遠目から見る分には現実と区別がつかないほどの美しさがあるけれど、近くで見てしまうとやっぱりそれは現実に存在するものとは思えないのだ。
日本の象徴と呼ぶ「大和」を映像化するには、どうしても壮大さ、厳かさといった雰囲気が重要だからこそ、冒頭からガッカリしてしまった。
演技が悪いのか、演出が悪いのか
「アルキメデスの大戦」の脚本は間違いなくおもしろい。原作は途中まで読んだけれどぐいぐい惹きこまれたし、映画もどんでん返しの応酬なんかは胸アツの展開なのだ。
映画は原作の途中で終わっているはずなのに、うまくまとめて終わっていたように思う。
中途半端に終わるでもなく、区切りをつけたところには称賛を送りたい。
でも、なぜだろう。
巨砲対艦vs空母の会議の場には緊張感などまるでなく、罵りあっていても観る側には何も伝わってこない。
もっと、こう日本の未来を決める重要な会議の場なのだから、役者の演技とともに盛り上げがあってもいいようなもの。
大げさに盛り上げるドラマティックな映画な展開がラストに待っているのだから、全体のテンションも同じにしてほしかったけれど、そういうのはまるでなく、ちょっと冷めた印象を受ける。
山本五十六の人物像も、どうも普通の人にしか見えないのも残念。太平洋戦争では必ずと言っていいほど取り上げられて称賛される並外れた偉人という雰囲気はまるでなかった。
柄本佑という熱い演技も冷めた演技も両方こなせる役者や、田中泯の只者ならぬ迫力のある演技は最高に良かった。柄本が抑えた演技から高ぶった演技まで見せてくれたおかげで田中泯への熱い演技にスムーズに移行できていた。
ただ、これは演出と演技がうまくかみ合っていなかったように思う。役者1人1人の上手い下手ではなく、ラストの演出以外はずっとスベッていた。
菅田将暉の熱のこもった演技もいいはずだったし、
橋爪功なんて、めちゃくちゃおもしろいキャラクターだったのに、なんでこんなにすべるのか。
空気をうまくいかせなかった演出に問題のある本作。
脚本がいいだけに、実に残念な映画だった。
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