映画「フェイブルマンズ」は2023年のスピルバーグ監督による作品。
「ジョーズ」「ジュラシック・パーク」などの名作を生み出し、近年でも「レディ・プレーヤー1」など面白い作品を次々に世に送り出す鬼才・スピルバーグ監督による半自伝的作品。
幼少の頃に映画館に連れられて以来、映画に没頭し、父親からは「ただの趣味」だと言われながらも映画監督の夢を諦めなかったサクセスストーリーの序章を描く。
スピルバーグ監督がいかにして名匠となり得たのかがわかる作品になっている。
そのストーリーには、父の仕事の都合で引っ越しを繰り返し、母親は不倫、そしてユダヤ人差別などさまざまな苦難を乗り越えた先につかんだアメリカンドリーム。
スピルバーグ作品が好きなら観ておきたい作品である。
しかしながら、アカデミー賞作品賞など7部門にノミネートされたこの映画は、スピルバーグファンでなければちょっと退屈な部分も。
カメラワークや演出、役者の魅力もあり、飽きるといったことはないが、脚本自体に盛り上がり所が少ないのは、よりリアリティ要素が強めだからだ。
監督になることを笑われただの、壮絶ないじめをうけていただのといった煽り部分はかなり抑えられていて、スピルバーグを投影したサムという少年自身の内面にフォーカスしている部分が多い。
また、わりと断片的なイベントの連続なので、感情移入もしづらく難しい映画でもある。
あらすじを含めて、ネタバレしながら内容を補足していく。
フェイブルマンズ
(2023)
3.0点
ヒューマンドラマ
スティーブン・スピルバーグ
ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ
- スティーブン・スピルバーグ監督の半自伝的映画
- 幼少期から高校卒業までの原体験を描く
- アカデミー賞7部門ノミネート
- 脚本に盛り上がりがなく、退屈な部分も
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映画「フェイブルマンズ」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ミッツィ・フェイブルマン | ミシェル・ウィリアムズ |
バート・フェイブルマンズ | ポール・ダノ |
ペニー・ローウィ | セス・ローゲン |
サミー・フェイブルマン | ガブリエル・ラベル |
ボリス伯父さん | シャド・ハーシュ |
レジー・フェイブルマン | ジュリア・パターズ |
ナタリー・フェイブルマン | ジュリア・パターズ |
ハダサー・フェイブルマン | ジーニー・バーリン |
映画「フェイブルマンズ」ネタバレ考察・解説
いつの時代の話?
(C)2022 Universal Pictures. ALL RIGHTS RESERVED.
映画の冒頭は1952年。ニュージャージー州に住むサムという少年が映画を初めて観るところから始まる。
時代背景や「地上最大のショウ」という作品を初めて観たという経験は、スピルバーグ監督の原体験と同じである。
父親に連れられて観た映画に最初はおびえていたが、映画はリアルではなくフェイクであることを知る。
そのことを知ったサミーは、映画の中で列車が車にぶつかるシーンに激しい衝動を覚えた。
一体、どのようにして映画は撮影されているのか?そこから若き少年の好奇心が湧き上がる。
家にあったカメラと買ってもらった列車を使って映画を再現することで、同じシーンをさまざまなアングルで撮ることを学ぶ。
このように、自伝的要素を踏まえて、スピルバーグ監督がたどった映画づくりのいろはについても理解できる内容になっている。
なぜ、サムは母親の不倫を知ったのか?父親は知っていたのか?
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ミッツィは、母親の死後から悲しみに暮れ軽いうつ状態になっていた。バートはミッツィの様子がおかしいことを悟り、サムに助けを求めた。
それは、サムがキャンプで撮影していた映像を編集して見せてほしいというものだった。
サムは自分が撮りたい作品を我慢して、ホームビデオの編集に時間を費やしていた。一コマずつ確認する中で、ミッツィとベニーの雰囲気がおかしいことを知る。
ミッツィの挙動は明らかにベニーと親密な関係にあることを示唆していた。
サムはそのテープとともに事実をミッツィに見せた。父親のバートが気づいていたかどうかについては触れられていないし、サムもそのことは誰にも打ち明けていない。
しかし、この後カリフォルニアに引っ越すことになるが、ベニーと別れたことから、そのときには察していたのではと思われる。
なぜ、サムはローガンを撮影したのか?
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高校3年生になると、アメリカでは卒業の1週間前にズル休みができる日を設けるという文化があるらしい。
そこにクラスの仲間が集まり、ビーチで時を過ごしたわけだが、その思い出づくりとしてサムはカメラを回した。
それは高校生の日常の風景であったはずだが、サムは編集により内容を加工した。
それをプロム(卒業式後のパーティ)で披露したのだが、その内容はローガンを現実以上にかっこよく目立たせるものだった。
サムをいじめていて、嫌いだったはずのローガンを良く見せた理由は、彼にもはっきりとはわからないが、このときサムは、編集をすることで、現実の見方とはまったく違うものが見せられることを学ぶ。
カメラの使い方次第で観客の見方が全く変わることを学んだ。だからサムはローガンを目立たせる目的も特になく、映画づくりに没頭し、その技術を学ぶことに夢中だったのだ。
サムは観客に皆が観たいものを見せた。ローガンというヒーローを見せたのだ。もっとも、ローガンにとってはそのヒーロー像は重荷だったようであるが。
この高校生活はスピルバーグにとっても苦しい時代だった。彼の住む家の周りにはユダヤ人がいないことで、差別はエスカレートした。
この体験があったことで、ユダヤ人であることを恥ずかしく思うようになったと、スピルバーグ監督は語っている。
また、これらの経験は映画「シンドラーのリスト」をはじめ多数の作品にユダヤ人差別の話が含まれている。
ラストシーンで会ったのは誰?
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ラストシーンで、映画監督を目指すサムが面接を受けた男。地平線の撮影の仕方をサムに教えた彼は、ジョン・フォードという監督である。
1910年代から60年代にかけて活躍した監督で、実際にスピルバーグが若かりし頃に撮影技術を学んだ監督の1人だ。
地平線を例に例えて、見たままを映画に撮るだけではつまらないと。
これは、サミーが将来に向けて颯爽と歩いていくラストシーンで早速実践されている。水平線のラインをラスト数秒で急に変えたのは、ジョン・フォードへの敬意を表している。
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