映画「さよならくちびる」は、主題歌の「さよならくちびる」を秦基博、挿入歌をあいみょんが担当したハルレオというユニットで活躍するハルとレオ、そしてローディ兼マネージャのシマとともにツアーを回る青春ロードムービーだ。
主演は小松菜奈と門脇麦、そしてマネージャのシマは成田凌が演じる。
今をときめくあいみょんが劇中歌を担当しているだけあってその音楽性に共感を呼ぶ声も多く、人気も高い。
事実、2019年Twitterでの映画ランキングでも3位をとるほどの人気っぷりだ。
秦基博やあいみょんの音楽が好きであれば観ておいて損はない。
ただ分かりやすい盛り上がりどころのある映画ではないため、単純に泣きたい、感動したい人向けには作られていない。
時に人の感情は複雑で分かりやすくない。
お互いがお互いを認めているのにすれ違いが生まれ、崩壊する。解散する前の最後のツアーを回る最中、それぞれの中にあるわだかまりを持ちながら進む。
解散したいのか、したくないのか、好きなのか、嫌いになったのか。
おそらく本人でも分からなくなっている感情表現を音楽に沿って表現したストーリーを堪能してほしい。
ロードムービーと音楽要素をはらむ本作はどこかおしゃれで芸術的でもあり、邦画の良さがよく現れている作品でもある。
映画「さよならくちびる」予告
映画「さよならくちびる」あらすじ
音楽にまっすぐな思いで活動する、インディーズで人気の女性ギター・デュオ「ハルレオ」のレオ(小松菜奈)とハル(門脇麦)だが、付き人シマ(成田凌)が参加していくことで徐々に関係をこじらせていく。全国ツアーの道中、少しづつ明らかになるハル・レオの秘密と、隠していた感情。すれ違う思いをぶつけ合って生まれた曲「さよならくちびる」は、3人の世界をつき動かしていく――。
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映画「さよならくちびる」映画情報
監督 | 塩田明彦 |
脚本 | 塩田明彦 |
音楽 | 秦基博、あいみょん |
公開 | 2019年5月31日 |
製作費 | 不明 |
興行収入 | 2,000万円 |
受賞 | TAMA映画賞 最優秀新進男優賞(成田凌) |
ヨコハマ映画祭 主演女優賞、助演男優賞 | |
報知映画賞 助演男優賞 |
映画「さよならくちびる」キャスト
ハル | 門脇麦 |
レオ | 小松菜奈 |
シマ | 成田凌 |
ファン1 | 新谷ゆづみ |
ファン2 | 日髙麻鈴 |
2019年の新人俳優として、成田凌はもっとも注目を浴びただろう。
「愛がなんだ」「チワワちゃん」をはじめ「カツベン」ではついに主役の座をおさめている。
モデルとして活躍するが、俳優ではカッコよさではなく弱々しい一面や男としてのクズっぷりを見せつけ、ユニークな一面を見せている
主演の小松菜奈は「渇き」でその演技力を見せつけつつ、数々の映画に出演する。
「止められるか、俺たちを」ではブルーリボン賞を受賞した門脇麦も、個性豊かな若手俳優の1人だ。
映画「さよならくちびる」ネタバレ感想
感想の前に、私自身、あまり音楽の歌詞に共感を覚えて感動するタイプではないことを伝えておく。
バカっぽい声で、レオをそっちのけで歌詞や曲に共感したといって語りだすインタビュアーとか、
詩に共感して泣き出してしまうファンがすごく印象的で、
そういう感情を理解できない身としては、
「あぁ、こういう人いるよねぇ」とすごく冷ややかな目線になってしまった。
ただ、それを差し引いても良い映画であるのは間違いない。
それは、俳優の持つ魅力と歌詞に重みを持たせるまでのストーリー展開が秀逸だからだ。
この物語は音楽が好きで集まった3人が、それぞれの気持ちにすれ違いが起こり、崩壊をむかえた後、最後にツアーを回りながら再び自分たちの関係に向き合うロードムービーだ。
- ハルはレオが好きで
- レオはシマが好きで
- シマはハルが好き
というそれぞれが好きであるがゆえに関係性が崩れてしまう切ない設定がされている。
冒頭はなぜ仲が悪いのか分からないが、ツアーの道中、徐々に明らかになる関係は単に仲が悪いわけではなく、恋愛という感情が友情すら崩壊させてしまうという事実を知らせてくる。
ハルはとても良い家族に恵まれているがゆえに
- 同性愛という事実をカミングアウトできずに苦悩する
レオはハルの想いを受け入れようとするも同情を嫌がるハルはそれを受け入れられずに拒否される。
対するレオは真っすぐ自分の本能に従って行動する。
タチの悪い男に引っかかって殴られても
シマが他バンドの女を奪って解散してしまっても
ハルが解散を前に感情的になり、「バカみたい」とつぶやいたときも
- バカで何が悪い
と、本能的に、衝動的に行動してしまう人間を肯定する。
いつも素直になれないハルの苦悩を知り、レオはそれを口癖のように言う。
ハルもまた、そんなレオに惹かれているのに自分は理性的にしか行動でしない自分に苦しんでいる。
しかし、ラストでは解散すると言っておきながら、悪びれずに解散を取りやめようと行動を起こす。
ハルは初めて自分のために本能的に行動して物語は終了する。
この一連の流れがありつつのラストのコンサートでは感動もまた大きく曲の良さが増していく。
演出が少しこじゃれてて、感情もはっきりせず、エンタメとは一線を画す分かりづらさがある映画ではあるが、これこそが邦画の良さであり、音楽の持つ良さを存分に引き出した映画であるといえよう。
映画「さよならくちびる」を見たならこれもおすすめ
2019年のTwitter上で人気が高かったほかの映画も抑えておこう。
同年に人気の高い映画は抑えておこう。
成田凌の出演する「愛がなんだ」「チワワちゃん」も抑えておきたい。
この世代の俳優の中では突出して注目を浴びて絶賛されており、今後の活躍が楽しみな逸材だ。
小松菜奈は、その美しい顔立ちや色気を「さよならくちびる」では全く出していない。俳優としての魅力もそうだが女性としての魅力も多いので、是非ほかの映画も見て欲しい。
門脇麦は、地味な顔立ちに見えるが、地に足のついた演技がとても魅力的で、個性たっぷりの俳優だ。
この映画の雰囲気が好きなら「恋するマドリ」や「百万円と苦虫女」あたりもいいだろう。
「恋するマドリ」は若き新垣結衣が主演となり、ちょっとこじゃれてて、独特の雰囲気を醸し出す。
「百万円と苦虫女」では蒼井優主演で、各地へ引っ越しながらその行く先々で色々な人と出会っていく。
こちらも大きい盛り上がりもないが、フワっとした雰囲気で進む映画だ。
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