レリック-遺物-は、2021年に公開されたオーストラリアの映画。
行方不明になった祖母を探しに来た娘とその孫が祖母の家で直面するホラー。
怖いぞ怖いぞと思わせておいて、それほど怖いわけでもなく、シナリオもはっきりしないままで、邦画のホラー映画のようにモヤモヤの残る内容だった。
ただ、単に謎が残るだけでなく、ホラーだけではない要素もきちんと含んでいる点に気づくと面白さは増す。
夜見ているとそれなりに怖いので、ちょっとしたドキドキ感を味わいたくて、それほど心臓に悪い表現もないぐらいのライトな冷や汗を味わいたければおすすめできる。
「レリック-遺物-」
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「レリック-遺物-」映画情報
タイトル | レリック-遺物- |
公開年 | 2021.8.13 |
上映時間 | 89分 |
ジャンル | ホラー |
監督 | ナタリー・エリカ・ジェームズ |
映画「レリック-遺物-」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ケイ | エミリー・モティマー |
サム | ベラ・ヒースコート |
エドナ | ロヴィン・ネヴィン |
映画「レリック-遺物-」あらすじ
森に囲まれた家でひとり暮らしをする老女エドナが突然姿を消した。娘のケイと孫のサムが急いで向かうと、誰もいない家には、彼女が認知症に苦しんでいた痕跡がたくさん見受けられた。そして2人の心配が頂点に達した頃、突然エドナが帰宅する。だが、その様子はどこかおかしく、まるで知らない別の何かに変貌してしまったかのようだった。サムは母とともに、愛する祖母の本当の姿を取り戻そうと動き出すが、変わり果てたエドナと彼女の家に隠された暗い秘密が、2人を恐怖の渦へと飲み込んでゆく…。
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映画「レリック-遺物-」ネタバレ感想・解説
祖母の家では何か起きていたのか
「レリック-遺物-」では2つの問題が起きている。1つ目は祖母の認知症。2つ目は曽祖父から受け継がれる遺物だ。
レリックは副題にある通り、遺物と言う意味が込められていて、曽祖父の代かもしくはもっと前から何か悪いものを受け継いでいる。
そしてその元凶となるのが曽祖父が住んでいたという家であり、そこに住んでいた曽祖父が頭がおかしかったという話だ。
映画の中では全然ヒントがないのではっきりとしたことはわからないままではあるけれど、曽祖父が住んでいた家には何か良くないナニカがいて、その遺物である窓を祖母の家に取りつけたことで祖母の身にも異変が起きたのだ。
そしてそれは体の中に侵入し、あざとなって現れる。祖母が戻ってきたときに介護士が見たのは、呪われたあざだったのだ。
祖母が、1人なのに誰かと話をしているところをケイが見かけるシーンがあるが、それは体の中に巣食う悪意を持つ第三者なのである。
そしてこの映画がもう1つ面白さを発揮するのは、遺物から伝わるホラー要素と認知症を掛け合わせているところにある。
認知症の要素は、物忘れをや徘などの不可解な行動や、不気味な言動をホラーに置き換えて怖がらせているだけではない。
その要素は、もう1つの深みのある物語を作っている。
ホラーだけではないもう1つのテーマとは
「レリック-遺物-」がホラーを通じて語りかけてくるのは、認知症を抱えた親との向き合い方である。
冒頭から感じるこの3世代にわたる親子関係は、あまり良くない雰囲気をまとっている。
娘のケイと母親は連絡は取りつつも一緒に暮らしてもなければ、近況も知らないほど疎遠である。
母に認知症の兆候があると発覚すると、早速母を施設に入れようと考えている。
認知症に対して向き合うことの是非は置いておいて、少なくともケイは、最初から自分で介護しようとする意思はない。
娘のサムとケイの関係もいまひとつで、母親は娘が働き先をやめていたことも知らない。
サムも聞かれたついでに答えた程度で、お互いが疎遠になっていることがわかる。
そこから見えてくるのは、冷え切っている家族関係だ。
現代の問題の1つでもある認知症は、2021年に公開された映画「ファーザー」でも「スーパーノヴァ」でも取り上げられているが、それをホラーに乗せて不気味さだけでなく、悲しさや苦しさを同時に表現してくる。
この部分が見えてくると、単に怖がっていればいいだけのホラーではない複雑な気持ちが絡んでくる。
この物語は祖母、娘、孫からなる3世代の家族の繋がりを描いているのだ。
ラストのベッドシーンでは祖母、娘、孫でベッドに横たわることで、ようやく家族3人の繋がりを感じることになる。
曽祖父から受け継がれた遺物により乱心してしまった祖母により、最後に家族の絆を得られると言うのはなかなか趣深いというかエモいというか複雑な感情になること必至である。
ラストの意味。
日焼け後に皮が剥ける現象。
あれは実はあまり無理やり剥がすのはあまりよくないことらしいのだが、ついやりたくなる行動の1つだ。
途中で破れずに大きな皮を作れた時の達成感はなかなかのもの。
それを「レリック-遺物-」では、祖母に対してやってのける。
まるで日焼け後の皮むきのように気持ちよく体の皮膚や頭皮を剥いていくシーンは圧巻。
もはや皮膚ではなく肉だ。ただれたような肉が気持ちよくペリペリ向けていく様は気持ち悪さとともに深い達成感や高揚感を得られる。
全てを剥いて真っ黒になった祖母と娘と孫の3人で横たわる。
そしてサムはケイの背中にあざを見つけてしまう。遺物は自分の母に移ってきたことを知る。
そしてそれはいずれサムへと伝わってくるということも同時に理解してエンド。
結局その遺物がどういう類いのものなのかは分からないままだった。
曽祖父の家、窓、あざがキーワードになっていることはわかるけれど、怨霊のようなものがいるのか、地縛霊なのか、過去に起こった事件が元になっているのかさっぱり分からないままだ。
ただ、祖母が至る所にポストイットを貼っていたように、自分のことを取り戻そうと必死に抵抗する跡もある。
あざに心を奪われるには一定時間がかかるのだ。
だから身体が完全に奪われるまでの行動を認知症の行動に模して作られたのが「レリック-遺物-」である。
モヤモヤ感は残るのでスッキリはしないのだけれど、「認知症の行動の裏にはこんなホラー要素が隠されているかもしれない」という狙いははっきりと伝わってくる。
説明は少ないけれど、不気味で気持ち悪いホラーを求めるのであればなかなかに悪くない映画だ。
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