「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべてを狂わせるガール」は2017年の大根仁監督による映画。
「モテキ」や「バクマン」「まほろ駅前番外地」手がけ、日常の中にあるちょっとしたユーモアを切り取って、センスの良い表現にできる人だ。
大根仁監督作品に出てくる俳優は、みなキャラが立つし、新しいトビラが開かれていく。
妻夫木聡なんかは、これ以上開くトビラはあるのかというほどに幅広い役柄を演じているけれど、情けなくもあり、微笑ましくもあり、感傷的にもなるキャラを見せてくれた。
同じくなんでもこなす新井浩文は、コミカルなキャラクターを演じ、水原希子はひたすらにエロい。
日本では奥ゆかしさに称賛を受けることが多いので、いま日本でここまで性を出せる女優はなかなかいない。
奥田民生のように我が道を行くような人生を生きたいというのが今回のテーマなのだけれど、水原希子はすでにその人生を歩んでるような気がするし、映画の中でもやはり自由だった。
映画「奥田民生になりたいボーイと出会った男すべてを狂わせるガール」予告
映画「奥田民生になりたいボーイと出会った男すべてを狂わせるガール」あらすじ
奥田民生を崇拝する35歳、コーロキ。おしゃれライフスタイル雑誌編集部に異動になったコーロキは、慣れない高度な会話に四苦八苦しながらも次第におしゃれピープルに馴染み奥田民生みたいな編集者になると決意する!そんな時、仕事で出会ったファッションプレスの美女天海あかりにひとめぼれ。 その出会いがコーロキにとって地獄の始まりとなるのだった…。あかりに釣り合う男になろうと仕事に力を入れ、嫌われないようにデートにも必死になるが常に空回り。あかりの自由奔放な言動にいつも振り回され、いつしか身も心もズタボロに…。コーロキはいつになったら奥田民生みたいな「力まないカッコいい大人」になれるのか!?そしてもがく先にあかりとの未来はあるのか!?
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映画「奥田民生になりたいボーイと出会った男すべてを狂わせるガール」映画情報
監督 | 大根仁 |
脚本 | 大根仁 |
原作 | 渋谷直角 |
音楽 | 岩崎太整 |
主題歌 | 奥田民生 |
公開日 | 2017/9/16 |
上映時間 | 99分 |
製作国 | 日本 |
映画「奥田民生になりたいボーイと出会った男すべてを狂わせるガール」キャスト
コーロキ | 妻夫木聡 |
あかり | 水原希子 |
ヨシズミ | 新井浩文 |
美上ゆう | 安藤サクラ |
編集長 | 松尾スズキ |
倖田シュウ | リリーフランキー |
江藤 | 天海祐希 |
映画「奥田民生になりたいボーイと出会った男すべてを狂わせるガール」ネタバレ感想・解説
あかりの正体とは
コーロキは、奥田民生の我が道を行くような、その力まないカッコいい生き方に憧れてていた。
しかし、あかりと出会い、その想いとは裏腹に振り回されっぱなしの逆の人生を歩んでしまう。
あかりのようないわゆる魔性と言われる女性ってたまにいて、女性に問わず、「アメとムチ」の使い分けがうまい人は人をどんどん狂わせていく。
急に怒ったかと思ったら、ふいに甘えてきたり、相手の気持ちを考えずに行動するようでいて、言って欲しい言葉をちょうどいいタイミングで放り込んできたりする。
相手側も焦らされたあげく、とびきりのご褒美をもらえるものだから、そのために必死で行動してしまうのだ。
これを計画的にやっている最たるものが洗脳なのだけれど、今回のあかりはそこまで打算的な女ではない。
しかし、天然にもそれが得意なあかりは、次々にアメとムチを放り込むことで相手の主体性を奪っていく。やがてあかりの求めることだけを考えて生きていく。
恋愛経験があるものなら、似たような経験がある人もいるかもしれない。
こういうのは、男女に関係なく片想いの場合だったり、付き合っていてもお互いの愛情に差がある場合に陥りやすい。
ただ、あかりは男を惑わすのが得意なのではなく、相手の求めるモノを察知する力が強いのだ。だからこそ、女子会でも人気で、そこでは女性のフェロモンを出すのではなく、カッコ良くておもしろい女性になれる。
そしてそれは演じているわけではなく、本気で楽しんでいるだけだ。
あかりは、3人の男と同時に付き合っていた。というより、付き合っていると男達が勝手に思っていた。
コーロキにとっては彼女であり、ヨシズミにとっては寝取り返した女性であり、編集長は全てを知った上で彼女と一番親密な関係を築いていると。
最終的には全て男たちが勝手に勘違いしていただけであり、
あかりは「あなたたちが言って欲しいことを言ってた」だけなのだ。
それは悪い捉え方をすると魔性の女なのだけれど、誰よりも他人のことを考えて行動してきた結果である。そこに悪意はないけれど、短期的な欲求には応えられるものの、長期的な視点で物事を考えられず、惨劇を招く結果となってしまう。
ラストにコーロキが流した涙の意味
良くも悪くもいろんな恋愛経験は人を成長させる。コーロキは激しい失恋から、がむしゃらに仕事に没頭し、相手が求めているコーロキを演じることに成功する。
その結果、「余裕のある大人」に他人から見えるようになったのだ。
それは、奥田民生にはなれていないけれど、他人からは奥田民生のように見えるようになったということだ。
ラストシーン、蕎麦屋でラジオから奥田民生の音楽が流れる。
まだ純粋に奥田民生のようになりたいと憧れていたコーロキが笑顔でそばを食べている情景がよみがえる。思わず汁をこぼしてしまい、高そうなスーツに染みてしまう。
仕事に成功し、他人から憧れの存在になった。全てを手に入れたと思っていた自分だが「こんな自分になりたいわけではなかった」と虚しさとともに涙をこぼす。
家路に帰る途中、あかりを見かける。
編集長が過去の恋愛話で言っていたような、イケメンの外国人と肩を並べ、男があかりに自分のタバコを吸わせてる姿を見て自分と世界が違うことを感じる。
自分が等身大でいられる美上のもとに帰るのだった。
人生はこうやってもがき苦しみながら、どこか妥協して、自分を納得させながら生きていくものだ。
ネットストーカーは誰でもなるかもしれない
この映画は、ネットストーカーの怖さも描かれている。
iPhoneを会社に置き忘れたため、毎晩行っていた連絡が急に途絶える。
そのタイミングでヨシズミとの関係に不安を覚えついついLINEを送ってしまう。
LINEが既読にならないことから、次々に最悪な展開を妄想しはじめ、いつの間にか現実かのように思い始める。
メッセージの数は増え、幾度も電話し、やがて会社に直接連絡したり、仕事場までやってきてしまう。
コーロキ視点で描かれているから、それほど怖くは見えないけれど、これを第三者が、あかりの視点で見たらどう思うか。
少し前のタイミングで、ヨシズミが同じことを行っていたが、あれってじゅうぶん気持ち悪いし、場合によっては恐怖すら感じる。
コーロキのような普通の人が簡単に陥ってしまうのがネットストーカーだ。
あかりのように、男を操ってしまうところに元凶があるわけだけど、別に彼女はそれほど悪いことをしているわけでもないし、法的に争えば負けるのはコーロキだ。
こういう普通の人がかんたんにストーカーのようになってしまうことは、ネット社会の問題点ではある。
ミニオンズのイオンカードを作るといつでも映画を1,000円で観ることができます。
家族や友だちでも使うことができますよ!
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