映画「君の膵臓を食べたい」は、住野よる原作の小説を映画化した作品。
教師になった男が、自分が在籍していた高校に赴任し、高校時代に膵臓の病気で亡くなった女子との思い出を振り返る青春映画。
よくある思春期と最愛の人の死を絡めた重たい恋愛映画だと思っていたら全然違ったので、誤解している人は一度手に取ってみて欲しい良作。
映画「君の膵臓を食べたい」予告
映画「君の膵臓を食べたい」 あらすじ
高校時代のクラスメイト・山内桜良(浜辺美波)の言葉をきっかけに母校の教師となった【僕】(小栗旬)。彼は、教え子と話すうちに、彼女と過ごした数ヶ月を思い出していく――。膵臓の病を患う彼女が書いていた「共病文庫」(=闘病日記)を偶然見つけたことから、【僕】(北村匠海)と桜良は次第に一緒に過ごすことに。だが、眩いまでに懸命に生きる彼女の日々はやがて、終わりを告げる。 桜良の死から12年。結婚を目前に控えた彼女の親友・恭子(北川景子)もまた、【僕】と同様に、桜良と過ごした日々を思い出していた――。そして、ある事をきっかけに、桜良が12年の時を超えて伝えたかった本当の想いを知る2人――。
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映画「君の膵臓を食べたい」映画情報
監督 | 月川翔 |
脚本 | 吉田智子 |
原作 | 住野よる |
主題歌 | Mr.Children |
公開年 | 2017.7.28 |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 115分 |
映画「君の膵臓を食べたい」キャスト
山内桜良 | 浜辺美波 |
志賀春樹 | 北村匠海 |
滝本恭子 | 大友花恋 |
ガム君 | 矢本悠馬 |
志賀春樹(12年後) | 小栗旬 |
宮田一晴 | 遊助 |
滝本恭子(12年後) | 北川景子 |
映画「君の膵臓を食べたい」ネタバレ感想
魔性の女、咲良の真意
前半はとにかく浜辺美波の咲良がかわいくてたまらない。
表情だけでなく、話し方や仕草までがいわゆる魔性の女だ。
これで彼女が将来もある女子高生なら、
「最高で最低の女」
という烙印が押されること必至なのだけれど、気づけば膵臓の病気パートに入り、「あぁ、そうだった。この夢のような日常は、辛い現実から目を背けていただけだ」だということを見せつけられる。
後半に突入すると、もう一つのやりたいことリストにある
「彼氏以外の人といけない事をする」
などという破壊力抜群の攻撃しかけてくるが、それは流石に草食男もブチ切れる。
どんな草食男であろうと、いくら見た目で人を判断しない男だろうと、少なくとも見た目がクラスで3番目にかわいい女子に抱きつかれてまともな思考回路が働くはずがないわけだけど、この草食男はひたすら耐えるのだ。
「病気」
その一言が彼に重くのしかかっていて、
この映画の核になる「星の王子様」の話にあるように
「サヨナラをして悲しませるぐらいなら、仲良くならない方が良かった」
と、意地でも一線を超えないし、自分が悲しむことに耐えられないから名前も呼ばず、特別にも感じないようにしている。
彼は臆病で、人と関わる事を拒み続ける。
咲良は、そんな王子様にたいして、キツネのように
「かんじんなことは目に見えない」
と彼にささやく。
そう、「君の膵臓を食べたい」は、「星の王子様」の現代版であり、桜良の死は草食男への生贄のような存在だ。
草食男に咲良の死を通して生きる意味を語る映画なのだ。
咲良のありあまる魔性の女の行動は、決して彼女がやりたくてやっているだけではなく、このキングオブ草食男に生の喜びを思い起こさせるためにあるのだ。
王子様にキツネとして気づかせてあげることこそが、彼女のやりたいことリストなのだ。
「星の王子様」は命の意味を問う名作
「星の王子様」たる草食男を主軸として、「君の膵臓を食べたい」は、ストーリーを展開していく。
1943年に書かれたフランスの絵本。数千万人の犠牲者を出した第二次世界大戦の中、命についてかかれた名作で、膵臓の病気を患う咲良もこの本のことが好きだ。
春樹と咲良は、王子とキツネの関係であり、先ほども言ったが、実は春樹が成長していく物語であり、咲良の魔性の行動は、キツネである咲良が春樹という王子の中で生き続けるためだ。
星の王子様でキツネが説いたように、数あるバラの中の一本だった桜良を、いつの日にか特別な一本にしたとき彼は本当に大切なモノを知ったのだった。
必死で気づかないように、人と関わることを避けてきた彼が、桜良と関わり、いつの日にか桜良のために行動していくことで、冒頭に星の王子様の1節
「かんじんなものは目に見えない」
ということを知るのだった。
宝探しにしてしまったせいで遅れた12年間
咲良は最後のメッセージを宝探しにしてしまった。そのせいで春樹は12年間自分を肯定できずにいた。
あのメッセージは実はめちゃくちゃ天才的だ。
桜良は人と分け隔てなく付き合える分、自分が持っていないモノを心から尊敬できる人間だ。
この「星の王子様」のテーマに沿って、春樹に人と関わることの大切さを伝えたかった。
しかし、その人間性を否定するわけでもなく、肯定し、そして尊敬し、そうなりたいとまで言っている。
独りでいることを「強さ」とした上で、それでも誰かを好きになって、心を通わせて欲しいと伝える。
これで心の動かない人間はいないだろう。だってあなたは肯定されつつ、それを他の人に分け与えて欲しいと伝えているのだ。
なんて天才的な人心掌握術だろう。
しかし、この手紙を目にすることはなく、時間が過ぎてしまった。
これが、高校生のあの時代に分かっていたらどうだろうか。
もっと自己を肯定し、人と向き合って関わることができたのではないだろうか。
30歳になってそれを知る、遅くはないが、もっと早く知るべきことだったのではと。
なぜ、あんな大切なことをあんな分かりづらい場所に隠していたのかと言うのか。
それは桜良がやはり、春樹のありのままに惹かれていたことは本音だったからだろう。
桜良は自分の伝えたいことを伝えて、春樹に変わって欲しかったと同時に、その春樹自身のことを好きであり、だからこそ見つけても見つけなくてもいいのかと思ったのかもしれない。
春樹と咲良は好き同士だったのか
イエスかノーかで答えるとしたら間違いなくイエスなわけだけど、そんな簡単な思春期の青春話でもない。
人と関わることを苦手とし、自分が他人の領域に踏み込むことをしない春樹と、人と関わることが好きで、他人を差別したりしないクラスの人気者の咲良。
対局にいるはずの2人が、お互いが持っていない部分に惹かれ、尊敬し、その人自身になりたがる。
高校生なんて愛とか恋とか、欲望のまま生きているところがあるけれど、そういう次元の話なんかではなく、2人はもっと高次元の、恋愛感情ではなく、人として惹かれ合っている。
星の王子様に出てくる、王子とキツネの関係そのものだ。
だからこそこの映画は素晴らしいのだ。
通り魔の犯人は誰なのか
咲良は、本当に最後の旅行の直前に通り魔によって命を奪われてしまう。
そのあまりの無慈悲さにただの通り魔ではなく、ストーカーになりかけていた同じクラスメイトの元カレを疑う声も多いようだ。
しかし、間違いなくこの犯人はただの通り魔であり、本筋には全く無関係の存在だ。
今日という日は同じなんだ。いくらもうすぐ失われる命だろうと、まだ何十年も生きる可能性があろうとも。
命は突然失われる。
という事実をこの映画は伝えている。
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