「劇場」は、2020年公開の行定勲監督の映画。
コロナの影響により延期していたが、ミニシアターとAmazonプライムでの同時上映という異例の試みにより公開された映画。
演劇の夢をもつ永田とそれを支える恋人の沙紀との関係を描く。
人間関係に永遠はなく、不変なものもない。物事を経験していくと同時に歳をとるからだ。
変わることがいいのか、変わらないことがいいのか、2人を通してこちら側に問いかけてくるような映画だった。
松岡茉優は言わずもがな、山崎賢人の演技力を堪能できる傑作だ。
総合評価
80
劇場
3.9
Filmarks
4.1
映画.com
3.7
Yahoo映画
4.2
カラクリシネマ
–
Rotten tomatoes
–
IMDb
- 松岡茉優と山崎賢人との演技力がすごい
- 胸が痛くなる人物像
- 又吉ワールド全開
- 男がダメ男すぎる
- お涙頂戴のセリフが受けつけない
「劇場」映画情報
タイトル | 劇場 |
公開年 | 2020.7.17 |
上映時間 | 136分 |
ジャンル | 恋愛 |
主要キャスト | 山崎賢人 松岡茉優 |
監督 | 行定勲 |
原作 | 又吉直樹 |
映画「劇場」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
永田 -演劇で成功することを夢見る | 山崎賢人 |
沙紀 -永田の彼女 | 松岡茉優 |
野原 -永田と同じ劇団を主宰 | 寛一郎 |
青山 -永田の元劇団メンバー | 伊藤沙莉 |
小峰 -劇団「まだ死んでいない」の脚本家 | 井口理(King Gnu) |
映画「劇場」予告
映画「劇場」あらすじ
夢を叶えることが、君を幸せにすることだと思ってた—
演劇を通して世界に立ち向かう永田と、彼を支えたいと願う沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った。「一番 会いたい人に会いに行く。こんな当たり前のことが、なんでできなかったんだろうね。」
filmarks
映画「劇場」ネタバレ感想・評価・解説
※これより先は核心には触れませんが、あらすじには触れます。
松岡茉優の底知れぬ演技力
カメレオン俳優として20代の女優の中では松岡茉優がずば抜けている。
近年の作品だけでも、「ひとよ」では頭が悪そうだけどユーモアがある女性を、「蜜蜂と遠雷」では、影のあるピアニストを、「万引き家族」では親とうまくいかずに風俗で働く女性を演じている。
サイコパスだとか、とびぬけて明るいぶっ飛んだキャラクターではない。
全部のキャラクターはそれほど珍しいわけではない。
どこにでもいる女性
しかしその違いを完璧に演じ分けている。
ちなみに私は「桐島、部活やめるってよ」の、イケてる女にすり寄り、強いモノには弱く、弱いモノには強い、コバンザメ的立場のキャラクターがイチオシだ。
そして「劇場」では、夢を追いかけて生活力のない、いわゆるヒモ男を支える女性を演じる。
これがまた超絶かわいくて、超絶愛おしい。
作中、何度か山崎賢人が「彼女が笑う姿が好きだ」という感想が入るが、まさにその通りで何でもない会話やくだらない行動を、彼女の笑いはすべて包み込んでくれる。
この完璧なまでの肯定は最高の癒しである。
沙紀という役は、松岡茉優以外には考えられない。
アニメから脱した山崎賢人の実力
それでは、山崎賢人はどうだろう。
彼は映画に引っ張りだこなのだけれど、そのほとんどがアニメの実写化だ。
少女コミックのイケメン役からジョジョなどのキワモノまで実に幅広い役をこなしている。
炎上しやすい実写化をどんどんこなしていくのは、役の依頼を断らず、ネットの意見を気にしない性格だからという。
その役柄からあまり目立ってはいないが、彼はそのキャラクターになりきるのが実にうまい。
「四月は君の嘘」のどこか頼りないけれど芯は持っている有馬公正から「キングダム」の野心に燃えたキャラクターまで完璧になりきっている。
映画としてのおもしろさはともかく、彼の俳優としての力はホンモノだ。
そんな山崎賢人が「劇場」で演じるのは、普通の人間だが、松岡茉優と比べても全く遜色ないほどの存在感を発揮している。
才能がないと分かっていて、それを知られるのが怖くて、プライドが高くて、みんなと一緒に楽しむことができないほどひねくれていて、そんな自分をすべて包み込んでくれる沙紀に甘える男。
そんな自分がみじめで、自信がなく、他の男が近寄る度にヤキモチを焼き、イライラして八つ当たりしてしまうような男を、沙紀から笑顔を奪い、悲しませるような男に最高にイライラしてしまうが、それでいてどこか共感してしまう男の心の苦しみを演じ切っている。
又吉直樹の描く人間の魅力と嫌悪感
「劇場」は極めて男性目線の作品だ。
同棲生活の描写が大半にも関わらず、その描写には性的なシーンは一切出てこない。
セックスどころかそれを匂わせる雰囲気すら出さない。
キスシーンすらない。
強いて言うなら、寝ているときに手をつなぐ程度だ。(あのシーンは笑えた。まさに永田の素直になれない一面と、沙紀の包容力が良くわかるシーンだ)
好意を寄せる男女が1つ屋根の下で暮らせば当然のごとく、起きうることをこの映画では描かれない。
男というのは案外プラトニックな一面を持っていて、原作者の又吉直樹と行定勲監督の描く世界観がマッチして美しくも儚い雰囲気で彩られている。
その登場人物は実に魅力的なのに嫌悪感を抱かせる。
彼女の母親をはっきりキライと言い放ち、人の気持ちも考えずに発言し、常に斜に構えて行動力のない永田。
そんな彼を包み込むと言えば聞こえはいいが、どんな行動も否定せず甘やかしてしまう都合が良い女で、
最終的には自分自身を追い込んでしまう沙紀。
そんな2人に不快感や嫌悪感を抱くと同時に、どことなく自分自信に向けられているような気がして苦しくもある。
それもこれも又吉直樹の描くキャラクターが人間の持つ内面を丸裸にしていて、そこに魅力を感じるのだ。
この映画に共感できる人は少ないのかもしれない。
しかし、この映画の登場人物を否定できるほど、私たちはキレイではないし、正しくもない。
暗すぎず、明るすぎない、感情的でもないし、淡々としすぎてもいない。
この映画は私たちの日常と隣合わせにある普通の人間の物語だ。
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