FALL/フォールは、2023年の映画。
地上600mの古びたテレビ塔に登ったクライマーの女性が、ハシゴが壊れて降りられなくなってしまう話。
海底に落ちて帰還できなくなった女性2人組を描いた「海底47m」のスタッフが、今度は地上600mの高さから降りられなくなるという悲劇を描く。
ちょっとした油断で地上に戻れなくなってしまう系パニックは、「オープン・ウォーター」も有名だがストーリーはわりとありきたりになりがち。
雪山のリフトから降りられなくなったB級映画「フローズン」など、ありえそうでありえないシチュエーションスリラーである。
「FALL/フォール」も同じありきたり映画ではあるものの、構成や展開はよく練られていてスリルな展開を楽しめる。
また、600mという高所はなかなかないまでも、高いところから下を見下ろしたときの背筋がゾッとするような恐怖は誰しも一度は経験することであり、高いところで展開するさまざまな恐怖演出は、見ていて何度も目を背けたくなる。
エンタメ映画としてみるなら、おすすめできる作品である。今回はストーリー展開をネタバレしながら解説していく。
FALL/フォール(2023)
3.5点
スリラー
スコット・マン
グレース・フルトン
- 地上600mの塔から降りれなくなるスリラー
- 高所で起きたら怖いことが盛りだくさん
- ストーリーはありきたりだけど構成や演出は良い
- 期待値をあげすぎなければおもしろい
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映画「FALL/フォール」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ベッキー | グレイス・キャロライン・カリー |
ハンター | バージニア・ガードナー |
ベッキーの恋人 | メイソン・グッディング |
ベッキーの父親 | ジェフリー・ディーン・モーガン |
映画「FALL/フォール」ネタバレ感想・解説
なぜベッキーとハンターは地上に戻れなくなったのか?
(C)2022 FALL MOVIE PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
- ベッキーの恋人がクライミング中に事故死
- 恋人の死を克服するため、テレビ塔にのぼる
- 恋人の遺灰をまくため
ことの発端は、ベッキーの恋人がロッククライミング中に事故で転落死した事故。
事故後1年経ってもふさぎこんだままのベッキーを、同じクライミング仲間のハンターは、使われていない塔に登ることを提案する。
恐怖を克服し、遺灰をまくことで、恋人をふっきることに成功したが、帰りがけにハシゴが壊れて戻れなくなってしまうという話。
600mの高さでは電波も届かず、助けも呼べない。
スカイツリーの展望台の高さが450mほどで、世界一高いドバイにある展望台でも555mなので、2人分のスペースしかない場所に立つという異常性がよくわかる。
ロッククライマーとインフルエンサーが混同し、悪ノリをしたあげくに降りられなくなってしまうというのは、ストーリー的にはちょっと無理があるけれど、高く不安定な場所で身動きできなくなったらどうなるか?に人工物を使ったのはなかなかよかった。
ハンターのタトゥー「143」の意味とは?
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- 143は愛しているという意味
- I(1文字) Love(4文字) You(3文字)からつけられている
- ハンターはベッキーの恋人と恋愛関係にあった
ハンターのタトゥーに彫ってあった143という文字。
これは「愛している」を表す隠語である。
I Love Youの単語ごとの文字数を数値化したもので、1990年代にポケベルが流行った時代に生まれた単語。
ポケベルのない現代でも使われているようだ。
ハンターが恋人のダンを見ていた表情と、足に彫られたタトゥーを見て、ベッキーはハンターがダムと関係を持っていたことに気づいてしまう。
地上から600mの不安定な場所で良からぬ不信感が生まれ始めるのかと期待したが、全然そんなことはなかった。
せっかくこの要素を入れるのであれば、ちょっと押すだけでかんたんに死んでしまうこの場所で、もう少し不安感を煽ってもらいたかった。
ハンターはどうやって死んだのか?
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- ハンターは水を取りに行き、そのまま登りきれずに転落死した
- それ以降に登場するハンターはすべてベッキーの幻覚
- ハゲタカにハンターが食べられている夢を見るほど、ベッキーは事実から目を背けていた
地上に取り残されて24時間以上が経過し、2人は限界に近づいていた。
そこで少し下に引っ掛かってしまった水とドローンの入ったバッグを取りにハンターが向かう。
バッグを取ることに成功したが、足を踏み外して落ちそうになってしまう。手を負傷したものの、ベッキーが必死に引き上げてなんとか帰還した。
しかし、実はハンターは死んでいた。という衝撃のオチ。
ベッキーは、1人取り残されパニックになるのを恐れて、自分を守るために幻覚を見ることで真実から目を背けていた。
確かにその後はベッキーが主に行動していたし、ハンターは話し相手としてしか登場しない。
ハゲタカに狙われた時もベッキーは助けようともせずに、ただ見守るだけ。また、ハンターにはハゲタカは向かってこなかった。
600mの高さから中央の支柱も持たずに、手放しでベッキーを見守るハンターにハラハラさせられたがその必要はなかった。
取れたはずのバッグも取ろうとしなかった。手を負傷したことで何もできなくなったのかと思ったがすでに死んでいたのだ。
だから夜中に見たハンターがハゲタカに食べられている夢は、実は落下死した先での真実を見せていた。
このことからもわかる通り、ベッキーは恋人を寝取られた恨みから落としたわけではなくてただの事故。
ますます「このくだりって必要?」と言わざるを得ない。
ベッキーはどうやって脱出したのか?
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- テレビ塔の下では電波が通じることを知っていた
- メールを父に送信し、自分のスマホを地上に落とした
- 落下の衝撃で壊れないようにハンターの靴の中にいれた
- ハゲタカに食べられたハンターの内臓に入れて、ハンターごと落として衝撃から守った
ドローンに手紙をつけて誰かに見つけさせようとする試みは失敗に終わった。
ハンターがまだ生きていた頃、SNSでイイね!をもらったことを知ったため、下では電波が通じていることがわかる。
何メートル下で使えるのかは分からないため、靴下と靴で保護しながらスマホを落下させ助けをよぼうとしたが、不発に終わる。
最後にベッキーは、ハンターが死んでいた場所まで降りて、自分のスマホから父親にメッセージを送り、スマホを下に落とす。
落下時の衝撃で壊れてしまわないように、ハンターのもう片方の靴で保護し、ハゲタカに食べられたハンターの腹の中につっこんで、ハンターごと落とした。
見事に計画は成功し、助けがきて一命をとりとめる。
音楽の煽り方や演出での緊迫感の持たせ方は、しっかりしているのでB級映画っぽさはない。
伏線もきちんと回収されているので見ていて気持ちが良い。
地上600mの高さにハリケーンがきたら助かりようがない気もするが、細かいストーリーは置いておいて満足できるエンタメ系映画として見られるだろう。
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