「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」は2023年公開のデヴィッド・クローネンバーグ監督によるSF映画。
「ザ・フライ」を担当し、数々のアート的な映画を撮影してきたクローネンバーグ監督が、環境に適合した人類の未来を描く。
その未来は人類が痛みを感じなくなった世界。加速度進化症候群を患うソールは、体内で増やした臓器にタトゥーをほどこし、それを衆人環境で摘出するアーティストとして活躍していた。
プラスチックしか食べない子供、より強い刺激を求めて自傷行為にはしる人間たち。狂ったディストピアな未来で待つのは希望か破滅か。という話。
平気で腹をかっさばいて、内臓を取り出す行為がいくつか見受けられるため、アート的な映像とはいえそこそこグロい。痛々しい場面も多数あるので、苦手な人は注意が必要。
世界観の説明が極端に薄いので一度で理解するのは難しい。クライムズ・オブ・ザ・フューチャーの世界観やソウルの持つ病気、ラストに起こったことの意味まで考察・解説していく。
クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
(2023)
2.8点
SF
デヴィッド・クローネンバーグ
ビゴ・モーテンセン
- 痛みのない世界での人類のあり方を描いたディストピアSF
- 体内で臓器を生み出すアーティストが人間のさらなる進化へ導く
- グロ注意のデヴィッド・クローネンバーグ作品
- 世界観への説明が少ないので理解が難しい
クライムズ・オブ・ザ・フューチャーを視聴するには
配信サービス | 配信状況 | |
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映画「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ソール・テンサー | ビゴ・モーテンセン |
カプリース | レア・セドゥ |
ティムリン | クリステン・スチュアート |
ラング | スコット・スピードマン |
ウィペット | ドン・マッケラー |
コープ | ウェルベット・ブンゲ |
映画「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」ネタバレ考察・解説
クライムズ・オブ・ザ・フューチャーの世界観
(C)2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.
「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」は、年代は定かではない近未来で起きている。
この時代の人類は進化を遂げて痛みに鈍感になっていた。痛覚がなくなった人類は自分の身体を傷つける行為に興味を持ちはじめていた。
ピアスやタトゥーなんて生やさしいレベルのものではなく、メスで身体を引き裂き、体内に何かを埋め込むような手術を当たり前に行っていた。
またそれをパフォーマンスとして見せることでショーとして人気を博していたのがソウル・テンサーやカプリースである。
人類は痛みに対して何も感じなくなったのではなく著しく鈍くなっているようだ。その結果、激しい痛みをともなうはずの行為に対して快感を得るようになっていった。「手術は新しいセックスの形」と話していたように、感じるためにはより強い刺激が必要とされていた。
「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」では、すでに人類は進化を遂げているため、その世界観は当たり前の光景として現れる。
そしてソウル・テンサーやブレッケンといったさらなる進化の可能性について描かれるため、基本的な世界観についての説明が少なく、現代人の私たちが観ると理解が追いつかない。
痛みの鈍化は快楽の鈍化も同時に引き起こしてしまった。ソウル・テンサーがキスを交わすシーンでは、「古いセックスのことはわからない」と述べる場面があるが、すでに近未来では通常のセックスによる快楽は衰退していると言える。
人類はより強い快楽を求めるあまり、手術や身体の切断を求めていくディストピアが映画の世界観である。
ソウル・テンサーとは
(C)2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.
ソウル・テンサーは、「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」時代の現代アートクリエイターだ。
相棒のカプリースと共に自分の臓器を使ったパフォーマンスを行っており、その人気はカリスマ的である。
現代アートは「なんでもあり」だと言われることがあるが、人類が進化した結果、タトゥーを入れた内臓を取り出すことがこの時代のアートである。
「耐え難い痛みを引き起こす体に対する怒りの現れ」を表現したというわかるようなわからないようなアート的世界観を手術という形にしてパフォーマンスする。
すでに人類全体は今よりも進化を遂げている未来が「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」であるが、ソウル・テンサーはさらにその先をいくニューノーマルとして描かれる。
ソウル・テンサーは、加速度進化症候群により臓器の増殖を可能にしている。臓器をコントロールし、体内で増殖することができる。そして現代人が皮膚にタトゥーを入れるのと同じように内蔵にタトゥーを入れてパフォーマンスとして取り出す。
しかしこれは症候群という名がついているように、病気に近いように見える。その証拠にソウル・テンサーは常に咳きこんでおり、食事もままならない。
一方で、自傷行為は政府から認められたものではないらしく、ソウル・テンサーは常に監視されている。
また、刑事にも協力することで自身のアーティスト活動にいそしんでいる。
ラングの目的とは?
(C)2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.
ラングは「食料がなければプラスチックを食べればいいじゃない。」というイカれた発想の元に人類をプラスチックを消化できる身体にしたトンデモ人物。
ラングたちは手術により食料を食べる必要がなくなった。彼らはプラスチックを摂取して消化できる身体を持つことが人類のさらなる進化の形だと考えていた。
テクノロジーを駆使することで、人類をまだ見ぬ先へ進めるのが彼らの目的だ。それは食糧難だけではない。
「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」では、公害やゴミ問題が蔓延するディストピア的世界観が示唆されている。
プラスチックによるゴミは現代の環境問題の1つになっているが、それならプラスチックを食べられれば全て解決だという逆転の発想をしたのがラングである。
その結果、プラスチックしか食べない子供・ブレッケンが生まれた。映画の冒頭で映し出されプラスチックのゴミ箱を食べていた男の子だ。
しかし、母は子供を愛することができず、クリーチャーと呼んだ。その結果、実の子供を殺してしまう。
我が子を殺すかどうかは別としても、プラスチックしか食べない子供を多様な社会として許容するのは確かに無理がある。
ラングはソウル・テンサーに自分の子供を解剖し、内蔵を皆に見せたいと依頼する。人間の食糧を食べる必要がないニューノーマルな人類の内部はどれだけ美しいのかを見せつけ、人類を次の進化へ導きたいと考えていたからだ。
しかし、実際にブレッケンの身体の中は、見るに耐えないものであった。おびただしい数の内蔵に不気味なタトゥーがほどこされ、ドロドロしたヘドロのような液体がへばりついていた。
自分たちの思想を広めようというラングの目的は失敗に終わり、ライフフォームウェアのバーストとルーターに殺されてしまう。
ラングが殺された理由
(C)2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.
「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」は、すでにニューノーマルとなった世界観で、さらなる先の進化へ進もうとする人類と旧人類の戦いがテーマになっている。
既得権益を持つ旧人類側の政府は、政府に反抗する組織を潰そうとする。
つまりラングやナサティア博士たちである。人類が食糧を必要としなくなった未来は多くの産業構造を劇的に変えてしまうだろう。その変化を危惧した政府により2人は殺されたのだ。
ライフフォームウェアを経営するバーストとルーターにより殺害されているが、2人はソウル・テンサーのベッドや食事を補助するための機械を作るかたわら、政府に雇われて裏稼業も行っている。
そして、ブレッケンの内蔵にタトゥーが施されていたのは、国立臓器登録局が関わっていることを示唆している。同じようにタトゥーを入れた臓器を管理しているティムリンが、事前にブレッケンの臓器を交換し、ラングの狙いを潰したのだ。
このことについて明確な説明はないままであるが、刑事のコープと話した後、その狙いを知ったソウル・テンサーは政府に失望する。
ちなみにソウル・テンサーが使っていた食事を補助する装置は実に有能で、人体の欠陥を検知し、必要に応じて人間の体をサポートする機械である。その証拠にナサティア博士が死んだ後は全く動かずただの椅子と化していた。
化け物のような不気味な形はディストピアのイメージを膨らませる一方で、テクノロジーの進歩は現代では想像もつかないほど発展していることがわかる。
ラストの意味
(C)2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.
ソウル・テンサーは人類の新たな可能性としてラングの望む世界に興味を示していた。
その結果、映画のラストではソウル・テンサーがラングが製造していたプラスチックバーを食べることで物語は終了する。映画の途中でプラスチックバーを食べた男性が死んだように、誰しもが適合できるものではない。しかし、ラストシーンでのソウル・テンサーは初めて幸せそうな笑顔を見せていた。
進化するにしろ死ぬにしろ、長い苦しみから解放されるソウル・テンサーは幸せを感じていたのだ。
映画を通じて彼は人類の食事を食べることに苦労していた姿が何度も映し出されている。つねに咳きこみ、肉体は限界を迎えていた。
おそらく消化器官に問題を抱えていたと思われるソウル・テンサーが、プラスチックを消化できる肉体に興味を示したのも無理はない。
デヴィッド・クローネンバーグはインタビューの中でこう語っている。
「ダーウィンが進化について話したとき、彼はそれが徐々に優れたものに導くとは話していませんでした。進化はより良いものに進むことを意味しない、何か異なるものに進むことを意味するのです。」
引用:Variety
プラスチックを食べる行為、そしてその子供に価値観を押し付ける行為は、現代的価値観ではもちろん、未来の人類たちも抵抗を示す。新しい進化の形は、多くの人類が拒否反応を示すのは世の常である。
私たち現代人から見れば、ラングの行為は明らかに狂っている。
しかし、映画のラストではこの世界を新たなユートピアとして描こうとしている。少なくとも加速度進化症候群に悩み、苦しんでいるソウル・テンサーにとっては。
果たしてゴミ問題をなくすため、人類がゴミを食べられる未来は希望があると言えるのだろうか。
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