「カモン カモン」は2022年に公開された映画。
ジャーナリストのジョニーが妹の息子ジェシーと一緒に過ごすなかで絆を深めていくハートフルムービー。
ジョニーが住んでいるLAから、ジェシーの住むNYへ渡り歩くのでロードムービー要素も入る。
手がけたのは映画の製作から配給まで手がけるA24。
感情を揺さぶる映画を作るのがうまいA24だけれど、その中でも突出しているのが恐怖を煽る新感覚ホラーと、寂しくて切なくて、でも少しだけ心温まるようないわゆるエモい映画。
「カモンカモン」はエモい映画として、地味だけど温かみのある傑作だ。
主演は「ジョーカー」のホアキンフェニックス。今回は人生に絶望感はないが、ちょっと寂しげな中年を演じる。子役もこちらの親心をくすぐるような演技がうまいウッディ・ノーマン。
友人のようで親子のような関係性の彼らを見ていると「ハニーボーイ」を思い出す。
モノクロ映画仕立てで、大きな盛り上がりどころもない。いわゆるエンタメさを求めるならこの映画は向いていない。
しかし、モノクロでもわかる構図の美しさや、インテリアのセンスはひしひしと伝わるし、音楽もエモくて素晴らしい。
ぜひ、楽しんでほしい映画の1つである。
「カモン カモン」
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「カモン カモン」映画情報
タイトル | カモン カモン |
公開年 | 2022.4.22 |
上映時間 | 108分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | マイク・ミルズ |
映画「カモン カモン」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ジェシー | ホアキン・フェニックス |
ジョニー | ウッディー・ノーマン |
ヴィヴ | ギャビー・ホフマン |
ロクサーヌ | モリー・ウェブスター |
ファーン | ジャブーキー・ヤング=ホワイト |
映画「カモン カモン」あらすじ
NYでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニーは、妹から頼まれ、9歳の甥・ジェシーの面倒を数日間みることに。LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ 独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録 音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。仕事のため NYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行く ことを決めるが…
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映画「カモン カモン」ネタバレ感想・解説
「カモン カモン」はハートフルムービー
(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.
ジャーナリストとしてNYで働いているジェシー。ある日、妹ヴィヴの夫が精神病を患ったことが原因で妹は病院で看病することに。留守の間9歳の息子を預かることになったジェシーと、甥っ子ジョニーが絆を深めていく話だ。
舞台はロサンゼルス、ニューヨーク、オークランドにまたがるので、ロードムービー的要素も備えている。9歳にとって数千キロも離れたアメリカの西海岸から東海岸まで渡るのはちょっとした冒険に違いない。
しかし、ジョニーは旅行や冒険のようなワクワクした感情を持っていない。母親が一緒に行動してくれないことで疎外感を感じ、父親の容態も良くない中で未来への不安を持ち合わせている。
分かりやすく泣いたり落ち込んだりするわけではないが、ところどころジョニーは精神的に不安定になり、ジェシーを困らせる。
子供に自立をうながすアメリカでは、子どもでも1人で寝させるのが当たり前だが、ジョニーはジェシーのベッドに入って寝ようとする。
全然寝ずにずっと話続けたり、店の中で隠れてジェシーを慌てさせたり。しかしそれは、ジョニーなりのストレスの表れだということも理解していているジェシー。
そんなジョニーの不安を悟りながらジェシーは必死に彼に安心を与えようとするのだ。
「カモンカモン」は大げさな表現はほとんどない。怒りや不安、焦燥みたいなものはジョニーや、ヴィヴから感じるもののドラマチックになることもなければお涙頂戴もののストーリーにも発展しない。
途中、ジョニーが突然ですが姿を消してジェシーが慌てふためく展開があるが、ものの数十秒で解決するので安心して良い。
しかし、子を持つ親なら分かるだろうが、目を離した隙にいなくなる子どもは確かに焦る。
9歳ならある程度分別がつくので、日本なら店内で少し目を離すぐらいは気にならないが、ジェシーの慌てようはアメリカの治安の悪さを物語っている。
別に大事になるわけでもなく、ドラマチックな音楽が流れるわけでもない。ラストシーンですすり泣く声が聞こえることもないだろう。
しかし、ラストまで見終わるとじんわりと心が温まり、同世代の子供を持つ人であれば、子どもとの時間が楽しみになるほどには優しい気持ちになれる。
私は、モノクロの映像は見にくさを感じるのであまり好きではないけれど、「カモンカモン」はちょうどよかった。現代の話をあえてモノクロ映像にすることで、おとぎ話に入り込んだような世界に変えてくれる。
わたしたちが住む息苦しい時代ではなく、優しい世界へと連れてってくれる印象を受ける。
「カモン カモン」は実話?
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「カモンカモン」は実話ではない。だが一部はマイクミルズ監督と息子との間の実際の関係に基づいている。
そしてリアリティをより演出しているのが、ジャーナリストであるジョニーが子どもたちにインタビューをしている点。
この部分は演技ではない実際のインタビューに基づいているため、台本があるわけでもない。ジョニーとジェシーはもちろん演技であるが、それ以外の部分を現実に寄せることで、ドキュメンタリーかのように作られているのだ。
ミルズ監督の映画は、子どもの内面を浮き彫りにする。彼らの不安や怒り、何に喜びを感じ、未来をどう感じているのかを大人に伝えてくれる。
インタビューの中ではさまざまな背景を持つ子どもたちに話を聞く。人種、貧困、民族、性別。彼らに未来についてどう考えているのか話を聞くのだ。
この映画はどちらかに偏った映画ではない。あくまでジャーナリストの立場として中立的に描いている。
だから子どもたちの意見はさまざまで、未来に希望を抱く者もいれば、恐怖を感じている子もいる。映画のラストに至っても希望の映画とも絶望の映画とも言っていない。
しかし、そこに愛があり、寂しさがあり、いろんな経験や感情が行ったり来たりしながら成長したり立ち止まったりするのだ。
参考:Is C’mon C’mon Based on a True Story?
「カモン カモン」というタイトルの意味
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タイトルの「カモンカモン」であるが、これにはさまざまな意味がある。「おいでよ」的なポジティブなものもあれば、「やめてくれ」といったネガティブなものまで。
そして、この映画では「招待」というようなポジティブな意味を孕んでいると、マイクミルズ監督はインタビューの中で答えている。
しかし、タイトル自体にそれほど意味があるわけでもなく、およそ直感的に決められたものである。
映画の中でもニューヨークに連れてきたが寂しさを感じてしまったジョニーに対して、ジェシーが「おいおい、ウソだろ」みたいな感じで使っていたり、「一緒に行こうよ」というノリで使われたりしている。
参考:Mike Mills Says the Title of C’mon C’monWas Inspired By French Composer Eric Satie
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