「僕らの世界が交わるまで」は2024年公開。A24製作のエモーショナル系映画。監督は2010年に「ソーシャル・ネットワーク」で主演男優賞にノミネートされた経歴を持つジェシー・アイゼンバーグ。自身の初監督作品だ。
Z世代の息子と、DVシェルターで働く母親の分かり合えない関係性を描いたドラマ。A24らしいエモーショナルな音楽を使い、心に針を刺したような痛みをともないつつも、ほっこりできるヒューマンドラマ。
母・エヴリンを演じるのは、ジュリアン・ムーア。『アリスのままで』など数々の賞を獲得している名女優。息子のジギーはNetflixドラマ「ストレンジャー・シングス」シリーズで活躍中のフィン・ウォルフハード。
社会奉仕に身を捧げる母親と、自分のフォロワーのことしか頭にないZ世代の息子は、いまやお互いのことが分かり合えない。しかし彼らの日常にちょっとした変化が訪れる。それは、各々ないものねだりの相手に惹かれ、空回りの迷走を続ける“親子そっくり”の姿だった・・・・・・!
ジェネレーションギャップ、親のエゴ、子供の思春期、さまざまな問題が発生しやすい親子の問題を、わかりやすく描いた本作品。
2人の価値観は全然別の方向を向いているのだけれど、行動はそっくりなところが微笑ましいハートフルムービーだった。
「僕らの世界が交わるまで」について、あらすじからラストの結末まで解説・考察していく
Z世代の息子と母の確執
僕らの世界が交わるまで
(2024)
4.3点
ドラマ
ジェシー・アイゼンバーグ
ジュリアン・ムーア、フィン・ウォルフハード
- 動画配信者の息子とDVシェルターの母
- どこの家庭にもありそうな親子の問題を描く
- A24製作作品
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映画「僕らの世界が交わるまで」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
エヴリン | ジュリアン・ムーア |
ジギー | フィン・ウルフハード |
ライラ | アリーシャ・ボー |
ロジャー | ジェイ・O・サンダーズ |
カイル | ビリー・ブリック |
アンジー | エレオノール・ヘンドリックス |
映画「僕らの世界が交わるまで」ネタバレ考察・解説
「僕らの世界が交わるまで」あらすじ
Z世代でネットのライブ配信で人気のジギーは、フォロワーからスパチャなどを通じて稼ぎをえられることを誇りに思っている今時の学生。承認欲求が強く20,000フォロワーを集めている彼は、それをリアルの世界でも自慢する。
自分で作曲した楽曲を配信し、視聴者からの寄付によって得られたお金で新たな音楽機材を買い揃えていく。今どきの若者が共感する生き方を体現しているのがジギー。
しかし、ジギーの両親は彼のやっていることを理解を示そうともしない。
母親はDVシェルターを運営し、父親は学者。YouTuberからすれば社会性、権威性の高い位置についていて、2人はジギーの行動を理解することができないでいる。
音楽を聴かせてもらったお金で、音楽機材を買う。そしてさらに良い音楽をリスナーに届けて、お金を稼ぎ・・というループをエヴリンは冷笑的にとらえる。
息子の価値観を資本主義の犠牲者だといわんばかりに、負の連鎖としてとらえている。
とはいえ、配信に必要な環境は用意されていて、否定しながらもその環境をとりあげようとはしていない。ジギーが自室の前に配信中を示すランプを勝手に取り付けても許される程度には自由である。
そんな彼が出会ったのは、クラスメイトのライラ。彼女は、若いけれど人種問題や政治について問題意識が強く、他のクラスメイトと議論を深める。どちらかというとエヴリンたち側にいる思慮深い人間たちだ。
どれほど深い議論をしているのかはわからないが、少なくともジギーよりは知識を持っている。
ジギーはなんとかライラを振り向かせたくて、仲間内の会話に加わろうとするも、その内容は薄っぺらくて表層的だ。
会話にすらならない彼女たちにフォロワー数の話やお金を稼ぐ話をしても、根本的にズレていて、間の抜けた自慢話にしかならない。
一方、DVシェルターを運営する母・エヴリンは、社会奉仕に重きを置く考え方で、弱き人間や困っている人間を助けることに生きがい、そして使命感を感じてもいる。
だから遠い国の人間たちと繋がり、歌をうたってお金をもらうという現代的で、いかにも資本主義的な生き方をする息子のことを理解することができない。
ジギーが小さい頃は、抗議活動へ連れて行ったりするなど、自分が考える正しい生き方を伝えようとしたが、その想いは伝わらずに、すれ違いが続いていることに、悲観的な感情を持っている。
そんなエブリンが出会ったのはジギーと同じ高校で、父親が母親にDVを受けたこと母子でシェルターにやってきたカイル。
カイルは母親に優しく献身的。ジギーが断ったシェルターでの手伝いを心良く引き受けてくれる同年代のカイルに、エヴリンは理想の息子像を重ね合わせていく。
彼の将来を案じ、高校卒業後の進路についてアドバイスする。カイルは、父の稼業を手伝い、車の整備士として働く道を考えていたが、奨学金を利用した進学にも前向きだった。
息子との確執もあいまってエヴリンは必要以上にカイルに入れ込んでいく。
2人の共通点とラスト
2人は価値観は違うものの、親子であり、行動パターンがよく似ている。だからこそ2人は衝突する。
ジギーはライラに、エヴリンはカイルにのめり込み、相手とコミュニケーションを取ろうとするがうまくいっていない。相手とうまく噛み合わない。
相手のテリトリーに踏み込みがちで、「こうしたら嬉しいはずだ」を自分の価値観の中でしか考えることができないため拒否反応を示される。
また、一つのことにのめり込むと他のことをないがしろにしてしまうところもそっくりだ。
父親の退官日のお祝いを忘れてしまうシーンは、この2人に振り回されつつ、空気のように生きていた父親の悲哀を感じてしまった。
しかし、2人とも他者に喜びを与えることを生きがいとしているのが重要なポイントで、善き人でありたいと考えている。
ジギーは自分の力でお金を稼ぐことに喜びを覚えるし、フォロワー数を自慢するなど表面的に見ると鼻持ちならない嫌なやつと見えかねない。
しかし、実際はただ、お金を儲けて遊びまわりたいという利己的な欲求をもっているわけではないことは、映画を通じて彼の人間性を見ればわかる。
お金は欲しい。お金にならないボランティアに興味はない。それは一見して利己的のようにみえるが、ジギーは自分についたフォロワーへの影響力を通じて社会に貢献したいとも考えている。
お金を稼ぐことができれば、社会を変える影響力をさらにつけることができると信じている。しかし、ライラの詩を利用して音楽を作り、それを配信してお金を稼いだとき、ライラの目にはそれがとても卑しいものに映ってしまった。
見方によっては、被害者を利用してお金儲けをしたと捉えられても不思議ではない。ジギーは全く考えていなかったが、相手の価値観を尊重できなかったことがこの行動からわかる。
また、エヴリンも同じようにカイルに親切心の押し売りをしたことで傷つくことになる。
カイルは別に大学に行きたいなんて考えてもいなかった。エヴリンに薦められたことで前向きな意見を口にした理由は、母親を守るために他ならなかった。
DVシェルターの長であるエヴリンの誘いを断れば、母親がそこにいられなくなることを危惧したからだった。
相手の表層的な面を見て先走ってしまったことに傷つき涙する。
2人とも相手を喜ばせようとしただけなのに、結果がともわなかったのだ。
しかし、この経験を通じて2人は成長する。相手の価値観に理解を示すようになる。
最後にエヴリンはジギーの配信を見返し始める。そこには、息子の努力の結晶が映っていた。20000フォロワーは単なる数字ではない。幼少期から毎日コツコツと配信した結果である。
ジギーは、ライラを通じて母親が行ってきたことのすごさを感じとった。シェルターには、彼女の功績を称えた賞状が並び、一朝一夕にできることではないと学ぶ。
自分もまた、今のフォロワーたちと信頼を重ねて増やしてきた。
お互いのやっていることは違うけれど、人を幸せにしたいという気持ちは同じなのだ。
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