アナザーラウンドは2021年日本公開のデンマーク映画。
アカデミー賞2021にて作品賞にノミネートされ、国際長編映画賞を受賞した映画。
毎日冴えない生活を送っている高校教師が「人は生まれつき血中アルコール濃度が0.05%不足している」というノルウェーの心理学者の仮説を実証しようとする話。
世界幸福度ランキングで第2位のデンマークにおいて、幸福じゃない方の4人組が取った行動は酒を飲むことだった。
最初は一見うまくいくようにみえるが、だんだんとおかしくなっていって、まぁそりゃそうなるよねというオチ。
ストーリーにひねりはないが、さすがは北欧。演出はピカイチ。
みんな大好き北欧の家具が全てのシーンに余すところなく映し出され、高校の職員室でさえ美しいインテリアに囲まれる。
生まれつきオシャレな空間に生きる人々の生活を見ているだけでもおもしろい映画だ。
アナザーラウンド
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「アナザーラウンド」映画情報
タイトル | アナザーラウンド |
公開年 | 2021.9.3 |
上映時間 | 117分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | トマス・ヴィンターベア |
映画「アナザーラウンド」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
マーティン | マッツ・ミケルセン |
トミー | トマス・ボー・ラーセン |
ピーター | ラース・ランゼ |
ニコライ | マグナス・ミラン |
映画「アナザーラウンド」あらすじ
冴えない高校教師マーティンとその同僚3人は、ノルウェー人哲学者の「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため実験をすることに。朝から酒を飲み続け常に酔った状態を保つと、授業も楽しくなり、生き生きとする。だが、すべての行動には結果が伴うのだったー。
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映画「アナザーラウンド」ネタバレ感想・解説
高校教師が1日中酒を飲みながら授業をしていたら生徒はどう思うだろう。
「アナザーラウンド」は、4人の教師がほろ酔い状態で授業を行おうとする社会実験ドラマだ。
それは、アルコール血中濃度を常に0.05%に保つこと。
その濃度は多少の体格差はあるけれど、ビール一杯程度のほろ酔い状態だ。
有名な小説家ヘミングウェイは、実はアルコールを身体に入れた状態で数々の創作物を書いていたという。
それ以外にも名だたる著名人たちが、アルコール依存症だったと言われており、その仮説もいわゆる暴論ではない。
だからオレたちもやってみようよと、男子のバカなノリでやり始めた一日中アルコール生活は意外にもうまくいく。
日本人的感覚からすると、教師にクリエイティブさなんて必要もない気がするのだけれど、さすがは北欧の国デンマーク。
クリエイティブさは重要らしい。
ちなみにYouTuberの東海オンエアも似たような実験をやっているので、その結末も見るとおもしろい。
どちらの結末もおおかた同じだ。
「アルコール飲みながら生活していて支障は出ないの?」と誰もが思うだろう。まさかこんなとんでも理論うまくいかないよね?と。
安心して欲しい。答えは当然の如くYESだ。
いや、うまくいかないよそれは。酒を飲んだことがある人なら当たり前のようにわかるはず。
ただ、「アナザーラウンド」の中では確かに一度はうまくいく。
ほろ酔い状態で、ちょっと精神的に高揚してきて楽しくなる感覚は確かにわかる。
ビール一杯で気持ち悪くなってしまうような人は別として、それなりに飲める人は一杯なら外見や振る舞いで判断できるほどは変わらない。
精神的にも楽しくなってくるし、プラス思考にもなる。気も大きくなるので普段なら言わないようなこともスラスラ出てきたりする。
相手の顔色を伺うことも減り、頭の片隅にあったけど言わなかったことまで話し出す。
教師が生徒に卒業試験で酒を飲ませて口頭試験に臨んでいたけれど、緊張で本来の力を発揮できないケースにおいては有効なこともありうる。(ちなみにデンマークでは18歳以上はアルコールOKらしいので、法律的にはおそらくセーフ)
毎日のストレス社会をほろ酔いでプラス思考になれば、それがそのまま続くのだとしたら、なにかうまくいきそうな気もしないでもない。
しかし、アルコールの怖さはここからだ。検証のように人はアルコールを飲むと一時的にはクリエイティブになったとしよう。
でもそれと同時に理性が薄れて「人はバカになる」のだ。
だから彼らはうまくいったことを良しとして、アルコール血中濃度をさらに高めていく。足りないのは0.05%だと言っているのに、上乗せして酩酊状態になっていく。
途中、家族のためにアルコール生活をやめようと決めるも、一度アルコールに毒されてしまうと簡単には断つことはできない。
最終的に仲間の1人がアルコール依存症となり溺死する。
アルコールを身体に入れながら水の中に入ることの危険性はシラフなら分かるはずだが、アルコールを入れてバカになった人間には分からないのだ。
この実験は常にほろ酔い状態でいれば成功するのかもしれない。
しかし、それと同時に依存症の危険と常に隣り合わせであり、理性を蝕んでいくアルコールはやがて失敗する。
バカになるから「まだ飲める」って思ってしまうのだよね。
だから酒で失敗する人は後を絶たない。
デンマークは幸福度第2位の国家
デンマークでは高校で卒業試験がある。日本ではのらりくらりやっていても普通に卒業できてしまうけれど、なかなかハードな卒業試験が待っているそうだ。
その代わりに高校卒業まではあまりテスト自体がないらしい。
また、日本のように大学への入学試験があるわけではなく、卒業試験の成績次第で専攻が決まってしまうので、彼らは必死になる必要がある。
作中で、生徒が泣くほど苦しんでいたのもそのせいだ。
ちなみに筆記試験だけでなく、口頭試験も多いようで、自主性や、自立心は確かに育つけれど、これをこのまま日本に導入したら辛いなぁと正直思う。
ラストでトラックに乗って、卒業間近の生徒がはしゃぎまくっていたけれど、卒業のタイミングでバスに乗って各生徒の家を回って、飲んで食べてはしゃぐのが恒例行事だそうだ。
この後彼らは1年間ほどやりたいことをやって大学に進むという。
それまでの過程も自由で、勉強する人もいれば海外旅行したり、アルバイトしたり、自分が何をやりたいのかを考える時間がたくさんある。
別に1年でなくても期間を伸ばしても良い。
日本のようにレールから落ちたら途端に人生のハードルが上がっていくわけでもない。
経験に価値を置いているので、社会的にもプラスと評されている。
それが実現できるのは高い社会福祉と高い税金なわけだけど、国民の幸福度は世界1位のフィンランドに続いて2位。
個を重んじる西洋の考え方からさらに競争社会を排除した北欧という国の文化は日本とは真逆すぎておもしろい。
福祉に関しては日本も充実している方だけれど、レールに乗っていることが前提だ。
ただ、ここに登場する幸福度第2位の国民である4人の教師たちは誰もが楽しそうではなかったので、一概に幸せは測れないなとも思う。
あとはもうとにかく美しい家具や調度品を楽しんで欲しい。オシャレな映画としていて意識したわけでもないはずだが、全てが美しい。デンマークのデフォルトなのだ。
日本でも人気の高い北欧のインテリア。ルイスポールセンのPH5の照明を始め、数々のインテリアを見るだけでも目の保養になる。
最後の音楽に合わせた酩酊ダンスなんかも含めて、デンマークの良いところが出た映画だった。
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