「Search/#サーチ2」は2023年の映画。
前作では、PCをはじめとしたデジタルの中だけで完結する編集は今回も健在。
母親が南米の旅行先で突如失踪。母親を探すために娘のジューンはiPhone、スマートウォッチにスマートホーム、SNSと繋がることでアメリカを超えて世界をくまなく捜索するスリラー映画。
前作や「RUN/ラン」のアニーシュ・チャガンティ監督による原案をもとに、前作でも編集を担当したウィル・メリックとニック・ジョンソンが監督を務めた本作。
前作は、父が娘を探していたが、今回は立場が逆で、デジタルネイティブのZ世代がデジタル機器をハックする。
アメリカ女子高生のITリテラシーはよく知らないが、Macを駆使してあらゆるデジタル機器やアプリを巧みに操っていく姿は、日本の女子高生をイメージすると少し違和感を覚える。
また、ITリテラシーが高かったり低かったり、ストーリーの流れによって都合良いと感じてしまう場面もある。
とはいえ、だんだんと真実に迫っていくストーリーはスピード感もエンタメとして満足できる内容に仕上がっていた。
現代人はどこまでデジタルに監視されているのか、どうやってインターネットから自分の身を守っていくべきかも含めて、知っておくべきことも多い。
セキュリティ意識についても加味しながらストーリーを解説する。
Search2 / #サーチ2
(2023)
3.3点
ミステリー
ウィル・メリック、ニック・ジョンソン
ストーム・リード
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映画「Search/#サーチ2」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ジューン | ストーム・リード |
ハビ | ヨアキム・デ・アルメイダ |
ケヴィン | ケン・レオン |
グレイス | ニア・ロング |
パーク捜査官 | ダニエル・ヘニー |
ヘザー | エイミー・ランデッカー |
映画「Search/#サーチ2」ネタバレ考察・解説
あらすじ
©︎映画「Search/サーチ2」
今回の主人公であるジューンの母グレイスはシングルマザーだ。
ジューンの父親は、彼女が幼い頃に死別していると母から聞いているが、父の葬式のことすら覚えていない。
冒頭のシーンで、ビデオカメラに残っている父親とジューンの絡みがあったが、優しかった父親の思い出が消えず、今のジューンに暗い影を落としている。
そんな中、グレイスは最近出来た恋人であるケヴィンと南米旅行に出かけようとしていた。
旅行中はこれ幸いとばかりに友達と酒を飲んではいたが、帰国予定の時間に空港まで迎えにいくも、母親もケヴィンも帰ってこなかった。
コロンビアの失踪事件をどうやって探し出したのか
©︎映画「Search/サーチ2」
ジューンは母の友人であり弁護士でもあるヘザーと連絡をとりつつ、FBIに失踪事件として連絡した。
しかし、失踪したコロンビアでは、FBIが法的な協力関係を結んでいない場所であり、簡単に捜査ができない。
そこで、ジューンは自らグレイスを探し出そうとする。
デジタル機器やITサービスを駆使して母親を探すのだが、これを観たあなたも、膨大なインターネットの中にどんな情報を残しているのかきちんと理解しておく必要があるだろう。
泊まったホテルは分かっていたことから、まずはホテルに電話し、Google翻訳を使いながらスペイン語で会話する。Googleストリートビューでホテルの外観をチェックしながら監視カメラの存在を確かめる。
遠く離れた異国の地がどんな場所なのかはある程度割り出せるのはストリートビューを使ったことがある人ならわかるだろう。
しかし、地理的に離れた南米で現地にもいけないジューンは、Uberのハウスキーパー版からグレイスの助けを請う。簡単に異国の地の人間を雇い、1時間千円程度の賃金で働いてもらうことができるのだ。
低賃金で親身に動いてくれたハビの存在はかなり偶然要素が働いているが、現実にあり得ないことではない。
日本ではLINEが有名だが、iPhoneのFaceTime、WhatsApp、中国などアジア圏ではWeChatだったり、アプリを使えば、ネットが使えるところなら無料で世界中の人と会話できる。
さらに行動を知りたければ、Googleアカウントへのログインすることで、行動履歴を追うこともできる。
この映画を観てはじめてこのことを知ったのであれば、一度自分の設定を確認しておくことをおすすめする。
行動履歴の保存は初期値は停止になっていたはずだが、オンになっていたのであれば、全ての履歴が記録されているかもしれない。
もちろん、今回のようにアカウントを乗っ取られなければ、自分しか見られないので悪い機能ではない。
その時に何をしていたのかを見返すのもおもしろいし、何かを紛失した時に行動履歴があれば見つかりやすくなるかもしれない。
Googleに情報をすべて渡している感覚に気持ち悪さを感じるところもあるものの、そもそもGoogleに自分が興味を持って調べた情報を、すべて検索履歴という形で渡していることは理解しておこう。
裏で勝手に盗み取られているわけではないので、設定は変更できる。
どんな情報をインターネット上に残しているのか把握したうえで、利用することが重要だと理解しておきたい。
そう考えるとアカウントを乗っ取られることの危険性がよくわかる。
母親はリテラシーが比較的高いため、パスワードをサイトごとに変えていたが、ケヴィンのパスワードは割り出せた。
ケヴィンは複数のサイトで同じパスワードを使い回していたためである。
このパスワードを忘れた場合の手続きにも注意したい。パスワードが誰にも分からないようにしていても、特定の手続きによって割り出される可能性がある。
今回の場合、「誕生日」と「小学校の名前」が分かっただけで、パスワードの再発行がいとも簡単にできてしまった。そしてその情報のヒントは自らインターネット上に公開しているのである。
セキュリティ性が高いサイトであれば簡単にはできないが、わりと簡単にできてしまうところもある。だからこそパスワードの使い回しは厳禁なのだ。
ここで、もう一つの問題は、ケヴィンがGoogleの2段階認証を設定していなかったことである。
Googleアカウントは情報の宝庫だ。いくらサイトによってパスワードを変えていても、パスワードの記憶機能を利用していれば、Googleアカウントを乗っ取られたら終わりである。
そのため、2段階認証は必ず設定する必要がある。パスワードが漏れてログインを試みられたとしても、自分が管理しているスマホから承認しなければ乗っ取りは完了しない。
今回、ケヴィンは2段階認証も設定せず、パスワードを使い回すというITリテラシーの低い人間だったからこそ、ジューンは先に進めているのだ。
Googleアカウントからは、行動履歴、購入履歴を把握できるし、メールや検索履歴からどんなアプリを使っているかも割り出すことができる。
行動履歴だけは把握していたようで、コロンビアについた後、トラッキングを停止している。
しかし、付近の工具店で鍵を購入し、恋人同士が鍵をつけて願掛けするロックブリッジに行ったことまでは、突き止めることができた。
それらはすべてパスワードを同じにしていたから起きたことだ。
また、セキュリティ性の高いチャットアプリは、パスワードを変えていたものの、Googleアカウントを乗っ取りさえすれば、パスワードリセットで初期化できてしまうのだ。
グレイスがコロンビアにいないことをどうやって突き止めたのか
©︎映画「Search/サーチ2」
そしてデジタル的な情報を追うだけでなく、至るところに監視カメラが存在し、スマホでいつでも高画質な動画を取れる。70億総マスメディア時代の現代では、2人が何者かに拉致されたこともSNSを通じて知ることができる。
しかし、実はこの女性は別人だった。グレイスがコロンビアに向かったというアリバイ作りのために仕組まれていた。
ケヴィンは、ジューンに写真を何通か送っていたものの、グレイスの正面からの写真はなかった。
遊び呆けていたジューンがそんな違和感に気づくはずもなかったが、メッセージを見返していてようやく気づいた。
その写真はすべてグレイスの顔が分かりにくくなっているが、一枚だけiPhoneに備わっているライブフォトの機能を利用して撮影されていた。
これは、シャッターボタンを押す(写真を撮影する)瞬間の前後1.5秒づつ、合計3秒の映像と音声が保存される機能だ。
顔が見えないよう撮影したつもりだったが、その直後に振り返った映像が残っていて、母は飛行機にすら乗っていないことを知る。
また、その後ついにグレイスのGoogleアカウントのアクセスにも成功する。
グレイスのパスワードはサイトごとに違っていたが、ある規則性があった。そして彼女もまた2段階認証を設定していないがために、パスワードが入力された時点でログインされてしまったのだ。
このようにサイトごとにパスワードを変えたとて、規則性を持たせていると突破される可能性があることも知っておいた方がいい。
特定の単語や数字を組み合わせて使っている場合、そこからランダムに当てられる恐れがある。
ジューンはたまたまヒットしたが、悪意のある人間が使えばブルートフォースアタックというテクニックを使って推測される単語をひたすら組み合わせてパスワードを割り出すといったことも可能だ。
プログラムを使えば自動化できるため、時間もかからない。
移動履歴や近くの防犯カメラから、母親はLAから出ずに連れ去られていたことがわかった。自宅からLAまで乗せたUberの運転手が犯人だった。
その運転手はジューンの父親だった。彼はまだ生きていた。
冒頭のシーンで、あたかも父親は死んだように見えていたが、それは母親のウソだった。冒頭のビデオカメラのシーンには続きがあった。ジューンがいなくなった後、夫婦喧嘩が始まった。それはとても険悪なものだった。
このまま一緒にいることで身の危険を感じたグレイスは、娘を助けるために、名前を変えて父親から逃げていたのだ。
また、そのときに助けてくれたのが、友人のヘザーだった。
グレイスがジューンの移動履歴を把握したがっていたのも、連絡をかかさず、1人にしなかったのも父親から守るためだった。
ラストの結末:どうやってジューンは助かったのか?
©︎映画「Search/サーチ2」
ジューンの家にやってきた父親を見て驚愕する。今まで死んだと思っていた父親が、いきなり目の前に現れたからだ。
しかし、ケヴィンと同じ刑務所にいたことを知り、父親が首謀者だと勘付く。助けを求めようとするも拉致され、祖父の家に閉じ込められる。
そこは父とのビデオ映像にあった場所だった。
最後の揉み合いのあと、グレイスは撃たれ、父は首を刺され絶命した。しかし、部屋に鍵をかけられたため、出られないという状況でジューンが利用したのはSiriだった。
拉致される前に自宅のパソコンで見ていた映像は、この家の監視カメラだった。そのカメラは音声も拾う。パソコンの側にはiPhoneも置きっぱなしだった。
つまり、ジューンは監視カメラを通してSiriを呼んだのだ。そこから警察に電話をかけて救出されることとなった。
音声アシスタントがデジタル機器の向こう側で勝手に反応してしまうことを利用したとっさの機転だった。
一連の出来事は「ノンフィクション」としてNetflixでドラマ化され、バズったらしい。悲劇をエンタメに昇華させていくスタイルも皮肉りつつ物語は終了を迎える。
Macもスリープ設定にしてなかったり、Googleの2段階認証を使っていないなど、ところどころでは都合が良い展開を感じるものの、総合力は高く楽しめる映画である。
どうか、この映画を見たら、改めてパスワードについて考えてほしい。見ればわかる通り、パスワードさえしっかりしていれば、よほどのことがない限りは安全なのだ。
- パスワードは複数サイトで使いまわさない
- 複数サイトで類似の単語や記号を使わない
- 2段階認証は必ず設定する
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