「ただ、悪より救いたまえ」は2021年公開の韓国映画。
韓国の闇社会に生きる男たちの戦いを描いたノワールもの。
タイで臓器売買目的で誘拐されたインナムの娘とそれに巻き込まれて死んだ母親。
生き残りの娘を助けるために単身で乗り込む元殺し屋インナムの救出劇と、引退前に殺した男の弟に狙われる復讐劇が複雑に絡み合ったアクション映画。
弟演じる殺人鬼は、「イカゲーム」でうだつの上がらない男を演じたイ・ジョンジェ。
大泉洋のようなルックスの男がタトゥーを全身にまとい、おどろおどろしさを演出したのはまさに圧巻。
「なぜ、クリスマス・イヴに上映したのだ」というツッコミはあれど、韓国映画の質の高さを実感できる一作だ。
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「ただ悪より救いたまえ」映画情報
タイトル | ただ悪より救いたまえ |
公開年 | 2021.12.24 |
上映時間 | 108分 |
ジャンル | クライム |
監督 | ホン・ウォンチャン |
映画「ただ悪より救いたまえ」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
インナム | ファン・ジョンミン |
レイ | イ・ジョンジェ |
ユイ | パク・ジョンミン |
ハン・ジョンス | オ・デファン |
ソ・ヨンジュ | チェ・ヒソ |
キム・チュンソン | ソン・ヨンチャン |
シマダ | パク・ミョンフン |
先生 | 白竜 |
コレエダ・ケイスケ | 豊原功補 |
映画「ただ悪より救いたまえ」あらすじ
凄腕の暗殺者インナムは引退前の最後の仕事として、日本のヤクザ・コレエダを殺害する。コレエダの義兄弟だった冷酷な殺し屋レイは復讐のためインナムを追い、関わった者たちを次々と手にかけていく。一方、インナムの元恋人は彼と別れた後にひそかに娘を産みタイで暮らしていたが、娘が誘拐され元恋人も殺されてしまう。初めて娘の存在を知ったインナムは、彼女を救うためタイへ急行。そしてレイもまた、インナムを追ってタイへとやって来る。2人の戦いは、タイの犯罪組織や警察も巻き込んだ壮大な抗争へと発展していく。
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映画「ただ悪より救いたまえ」ネタバレ感想・解説
(C)2020 CJ ENM CORPORATION, HIVE MEDIA CORP. ALL RIGHTS RESERVED.
「ただ悪より救いたまえ」の始まりは日本が舞台。
豊原功補演じるコレエダを暗殺する場面から始まる。「ヤクザと家族」でもイヤーな感じのインテリヤクザを演じた豊原功補だが、今回はあっけなく殺害される役回りとして登場。
この他に白竜も登場したり、邦画界のヤクザの常連が出てくるのも日本人には見どころの1つだ。
そして日系韓国人コレエダの弟、レイを演じているのが、イ・ジョンジェ。
「イカゲーム」で優男を演じたのはどこへやら。
今回は完全にイカれた韓国マフィアになりきり、虫けらのように人を殺していく。
「イカゲーム」をみた人なら、そのギャップのすごさに惚れてしまうこと間違いなしだ。
で、アニキの敵討ちという体でインナムは狙われていくわけだけど、この映画にはもう1つのストーリーがある。
それは、インナムが臓器売買目的の誘拐犯から、実の娘を助けるという展開だ。
殺し屋稼業のため家族を作ることができなかったインナムだったが、その昔愛した人との間に子供がいた。
母娘はタイで暮らしていたが、ベビーシッターの手によってさらわれ、母親は殺されてしまう。
その目的がタイの闇社会に巣食っている人身売買。
邦画「闇の子供たち」でも取り上げられているが、健康な身体の子供たちの臓器が、他の先進国に住む病気の子供達のために売られていくのだ。
2008年に公開された「闇の子供たち」から10年以上経過しているが、人身売買の問題は全く解決していないことを物語っている。
さらに「闇の子供たち」では、臓器を購入する側の人間像も登場し、怒りの感情の矛先をどこに向けていいのかわからなくなる。
エンタメにうまく昇華させた「ただ悪より救いたまえ」とは違って社会派作品となっているため、鑑賞するならその暗さは覚悟して欲しい。
そして、臓器売買を事実を知ったインナムは、子供を追ってタイに乗り込んだところ、それを知ったレイもタイに乗り込んできて、警察も含めて大乱闘が始まるというのがこの映画の骨子。
本筋である娘を助けるという目的の中で、レイに追われるというサスペンス要素も混じり合い、ストーリーがグチャグチャになりそうではあるが、実際はシンプルに作られているからとても観やすい。
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悪が悪を呼び込み、悪と戦う。
娘を助けるという大義名分をもとにタイマフィアを敵にするのではなく、ここはあえて雑魚扱いしてインナムとレイの強さを誇示することで彼ら2人のアクションシーンがより際立つ。
ユーミンを助けたいという善の心と、インナムとレイの強きもの同士の戦いを見たいという欲求、そして子供を利用して金を儲けようとする悪をバッタバッタと薙ぎ倒していく爽快感。
それぞれのストーリーは別段目新しいわけではないが、娘を助けるために父が奮闘する、という流れの中に、あえてレイという追っ手を差し込むことで、新鮮味を持たせていく。
一対一の関係性を作るのではなく、あえてレイという第三者を差し込むことで話の構成を飽きさせないところもさすがである。
需要のあるストーリーを混在させて、エンタメとして昇華させる韓国映画の上手いやり方だ。
「イカゲーム」を見ていても感じるが、彼らはあらゆる映画のおもしろい要素を取り込んで、1つのストーリーに収める天才集団だと感じる。
そのアクションシーンもさながら見どころ。敵役として出てくるタイマフィアの雑魚たちをインナムとレイがバッタバッタと瞬殺していく。
スローモーションと早回しをうまく使って展開されるアクションシーンは、目新しさがあるわけではないが、そこに痺れる憧れる。
後ろからはレイが、前からは警察からの銃撃に蜂の巣にされるカーアクションも見事。
さらに、ハンドガンでレイの乗る車に銃撃をかましフロントから車に乗り込む様は現実的にはありえないむちゃくちゃなシーンではあるものの、アドレナリンを垂れ流してくれる。
悪と悪がカオスっていて大混戦なのがアクションとしての見どころだ。
そうかと思えば娘を助けたときに、手術直前の医師たちを一発で打ち殺し、速やかに助けるような静かなアクションもあって飽きさせない。
また、アクションシーンはグロい描写はあまりない。レイのおぞましいまであろう拷問シーンはほとんど見せないので、目を背けたくなるような場面もなく比較的安心してみられるのも良きところ。
それよりも、痛いと思わせる間も無く一撃で人を殺していく2人の身体能力のすごさに圧倒されるアクションシーンが魅力なのだ。
「命乞いをする奴らの目を見るためにやっている」という殺人マシーン、イ・ジョンジェの狂いっぷりは敵ながらもある種の魅力を感じてしまうし、「イカゲーム」の優男がここまで別人に変貌する役者としての能力の高さにも惚れ惚れする。
ラストの手榴弾で自爆というのは、「レオン」を意識してるなぁと思いつつ、こういう人気のある「要素」を散りばめながら調和させていく様がたまらなくいい。
クリストファー・ノーランの音楽を多く手がけるヨハン・ヨハンソンが作り出しそうな濃厚な重低音の音楽が、アクションシーンの魅力をさらに引き出し、ノワールの世界へと没入していく感覚も最高だ。
エンタメ映画といいつつ、「レオン」のように万人受けするような映画ではない。日本、韓国、タイの闇社会を見せつけるおどろおどろしいノワールアクション映画である。
日本はなぜクリスマス・イヴに公開したのかは疑問だが、イヴだからと恋愛映画や、ファミリー映画を見るというありきたりの行為に飽きた人にはおすすめの映画だ。
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