「SPREE」は、2021年の映画。
ライドシェアサービス「SPREE」とライブ配信アプリを駆使して、フォロワー獲得のために生配信で人を殺していく話。
テンポの良い映像とコメディ感もあり、それほど不快にならずに楽しめるが狂気の一作。
ソーシャルメディアの大きな問題になっている承認欲求は、時に性的欲求を満たすための犯罪よりも危険なのかもしれない。
68点
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「スプリー」映画情報
タイトル | スプリー |
公開年 | 2021.4.23 |
上映時間 | 93分 |
ジャンル | コメディ、クライム |
監督 | ユージーン・コトリャレンコ |
映画「スプリー」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
カート | ジョー・キーリー |
ジェシー | サシーア・ザメイダ |
カートの父 | デヴィッド・アークエット |
マイルズ | カイル・ムーニー |
ボビー | ジョシュ・オバージェ |
映画「スプリー」あらすじ
母親と二人暮らしのカート・カンクル(ジョー・キーリー)はソーシャルメディアで注目を浴び、スターになることを夢見ているが、現実はうまくいかずぱっとしない生活を送っている。カートは「スプリー」というライドシェアアプリで運転手の仕事をしながらライブストリーミングで注目を集める為に「ザ・レッスン」というおぞましい内容の生配信を思いつく。
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映画「スプリー」ネタバレ感想・解説
「SPREE」はライドシェアの運転者が乗客を殺しまくるイカれた映画だ。だが不思議と胸糞悪さは少ない。
主人公のカートは、空気を吸う感覚で人を殺すわりには、そこまでぶっ飛んでいる風にも見えないからだ。
どことなくグランドセフトオートを見ているような、ゲームの世界にいる感覚だ。
ただし、胸糞悪さはないけれどその代わりにとても気持ち悪い。
カートは殺人をフォロワーを増やすためのきっかけとしてしか捉えていないだけでなく、その視聴者もまたエンタメとして消化しているだけだからだ。
そしてその気持ち悪さの最大の理由は映画の演出的に人を殺すことが悪いことなんだと思わせないところだ。テンポの良い編集とノリの良い音楽や効果音を巧みに使って、人がどんどん殺されていく。
現代のソーシャルメディアによる新たなる依存症を、映画の中で痛烈に皮肉っている形になっている。
この映画の撮影は常にスマホのカメラか車内の監視カメラ視点で撮影されているのだけれど、私たち映画の観客自身もカートワールドの視聴者として見ることになる。
どことなく他人事のような、フェイクニュースを見ているような気分に陥るのだ。
フォロワー数で一目置かれていたジェシーや、コリアンDJ uNoなんかも、カートと同じ不気味さがある。
なんだかんだ彼女たちも人を殺していることに気づいただろうか。
uNoは警官を、ジェシーはカートを。
uNOは拳銃を使ってインスタ映えを狙うし、ジェシーはシリアルキラーとのツーショットを使ってバズる。
みんな最終的にフォロワーが伸びればいいのだ。どんな事をしてもどんな状況にあっても。
フォロワーを楽しませることが彼らの生きる意味なのだ。
フォロワーを獲得し、承認欲求を満たすため、急にタコス屋に行って写真を撮ることもするし、拳銃を見つければそれがホンモノかどうかなんてどうでもよくて映えるかどうかで判断する。
あの世界での弱肉強食はリアルとはまた異なる。ボビーが言っていたように、世の中にはフォロワーを集められるやつと集められないやつがいる。
何をやるかではなく、誰がやるか。だからカートは何人も殺しているのに誰も集められないのだ。
集められないことに怒ったカートは最終的にボビーの配信を転送する形で無理矢理見せつける方法をとる。
YouTubeを見ていても何が再生数に結びつくのかわからない。
かわいさや、カッコ良さ、サッカーや野球などの能力。今まで数値化できなかった世界に住んでいた私たちが手にしてしまったフォロワー、ファボという指標。
新の弱肉強食の世界にインスタグラマーや、ライバーたちは生きている。
ブラックコメディ度合いがエグくて、日本にもあるような10代向けのエグみのある映画。
どことなく漫画家井上三太の描く世界観のような後味が悪いのとも、胸糞悪いのとも違う。ただ観た後に精神的な何かを壊された感覚が残り、気持ち悪さでやる気を失う映画だった。
ブラックユーモアがふんだんに使われていて、ソーシャルメディアらしくスピード感もあるので、こういうタイプの映画に耐性のある人は楽しめることは確かだ。
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