「プロミシング・ヤング・ウーマン」は、2021年公開のスリラー映画。
アカデミー賞に5部門ノミネートされた復讐エンターテイメント。
泥酔した女性を家に連れて行き、悪事を働く男たちを成敗する痛快復讐活劇だ。
心当たりのある男は震えしか出ない物語。
エンタメだからといって、男のナニを酷い目に遭わせたり、血みどろのグロシーンがあるわけではないので、それを期待しているなら注意しよう。
この映画の肝は、犯罪だと認識していない若い男たちの貞操観念に一石を投じるもの。社会的メッセージとエンタメをうまく合わせているところが評価されている
大学生によくある若気の至りとはどこまで許されるのか、あなたの考える若い頃のちょっとした無茶は誰かを死に追い込むほどに苦しめているのかもしれない。
ネタバレしながら解説していく。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」
損しないサブスク動画配信の選び方
映画を観る機会が多い方のために、損しないサブスクの選び方を教えます。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」映画情報
タイトル | プロミシング・ヤング・ウーマン |
公開年 | 2021.7.16 |
上映時間 | 113分 |
ジャンル | スリラー |
監督 | エメラルド・フェンネル |
映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
キャシー | キャリー・マリガン |
ライアン | ボー・バーナム |
マディソン | アリソン・ブリー |
キャシーの父 | クランシー・ブラウン |
キャシーの母 | ジェニファー・クーリッジ |
エリザベス | コニー・ブリットン |
ゲイル | ラバーン・コックス |
ジョー | マックス・グリーンフィールド |
アル・モンロー | クリス・ローウェル |
映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」あらすじ
キャシー(キャリー・マリガン)は【明るい未来が約束された若い女性(プロミシング・ヤング・ウーマン)】だと誰もが信じて疑わなかった。ある不可解な事件によって不意にその有望な前途を奪われるまでは。平凡な生活を送っているかに見えるキャシーだったが、実はとてつもなく頭がキレて、クレバーで、皆の知らない“もうひとつの顔”を持っていた。夜ごと出掛ける彼女の謎の行動の、その裏には果たして一体何が――?
filmarks
映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」ネタバレ感想・解説
「プロミシング・ヤング・ウーマン」のタイトルの意味
プロミシングヤングウーマンとは、「将来有望な若い女性」という意味。
今回の映画は、医大生で首席だった有望な女性が不意の出来事により、全てを奪われる出来事を描く。
なぜ、医大に通うキャシーがなぜコーヒーショップで働くようになったのか。
なぜ、キャシーは中退することになったのか。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」は、冒頭からどこか不穏な空気と共に、キャシーの行う男への粛清のようなノリが続き、徐々にその謎が明らかになってゆく構図だ。
「泥酔してる女性にも問題が、、」と少しでも思ったら、もう一度考え直してみるといい。
それがきっかけで1人の女性の人生が狂いかねないということを。
キャシーのノートは何を書いているのか
キャシーがことあるごとに引いていた線。日本の場合「正」で表現されることが多いが、回数を表している。
これは、キャシーの壮大なる復讐劇で、酔い潰れる演技をしているキャシーに接触してきた男の数をカウントしているのだ。
その線は色分けされていて、赤色で書かれているのは手を出してこなかった紳士的な男性。
黒と青は意識混濁の女性を連れ帰ってコトに及ぼうとした男性で、その中でも黒は意識がない状態でもおっ始めようとした者で、青は無理矢理にでも同意のもとに行為に及ぼうとした者である。
親友をレイプにより失って以来、キャシーは男たちに絶望して復讐を繰り返していた。アルコールによって、レイプを正当化してくる男性たちへの復讐が目的だ。
明確に犯罪を犯している認識のある人間というより、泥酔で抵抗もできず意識もあまりない女性を陥れようとする捕食者たちが標的で、罪の意識もあまり持たずに若い女性の将来を奪っている奴らが相手である。
だから彼らは、泥酔した女性が急に真顔に戻ったことで性欲すらなくし怯えて終了なのだが、一歩間違えたらそのままレイプ・殺害されてもおかしくない危険行為である。
ただ、キャシーはどこか人生を諦めている風だったので、そのリスクも覚悟の上で行為に及んでいたのはラストシーンを見ればわかる。
キャシーの復讐の目的と内容
医大を中退し、ニーナが亡くなってから7年。将来を約束された若い女性は全てを捨て、ただただ男に復讐をするだけの女になっていた。
そしてある日バッタリと出会った同じ医大生だったライアンから、ニーナをレイプした張本人のアルが戻ってきていると知り、彼女は復讐に動き出す。
復讐の相手は5人。ニーナの友人のマディソン、大学勤務のディーン・ウォーカー、法律家のグリーンとレイプしたアルとその友人ジョー。
ニーナに相談されたのに呆れて取り合わず、あろうことかオオカミ少年呼ばわりしたマディソン、毎週同じような被害の相談と同じようにスルーしたディーン。
ニーナの後ろめたい写真を陪審員にばらまき、陪審員の感情を操作したグリーン。そしてニーナを衆人環境でレイプしたアレクサンダーとジョー。
復讐の前にキャシーは必ず最初に確認していた。「ニーナを知っているか」と。
そしてあの事件のことを少しでも後悔していることを期待していた。しかし、法律家のグリーン以外は事件のことをほとんど忘れて過ごしていた。
ディーンはアルのことは覚えていたけど、ニーナのことは覚えていなかった。しかもアルに対してはポジティブな感情さえ抱いていた。
それゆえに彼女は復讐した。マディソンを泥酔させ、見知らぬ男がホテルの部屋に連れ込んだ。
ディーンの娘をニーナと同じ目に合わせているかのように振る舞った。グリーンは後悔していることを確認したので見逃した。車の外で待っていた男は復讐のために雇った人間だが、何をしようとしていたのかはわからない。
ちなみにマディソンは本当に昏睡状態でレイプされたのかだが、キャシーの言う通り、本当に何もされていないだろう。
明確な描写はないものの、依頼した男に金を渡しているし、そもそも憎きレイプという犯罪の片棒を彼女が担ぐはずがない。
ディーンと同じように、もし自分の身に降りかかったらどういう気持ちになるかを理解させたかったのだ。
そしてアルやジョーには自ら乗り込んで命を賭して復讐した。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」のラスト
キャシーは一度は復讐を諦めて真っ当な人生を歩もうとしていたはずだ。
復讐に生きていたときは、自暴自棄そのものだった。道の真ん中に駐車し、それを咎められると逆ギレするほどに無茶な行動もあった。
しかし、ライアンと出会い、ニーナの母親と話すことで、自身もまた幸せでありたいと考えるようになった。社会への復讐は薄れて前に向こうとしていた。
そんなキャシーだったはずなのに、マディソンに見せられたビデオがきっかけであらためて失望してしまう。
それは、アルとジョーがニーナをレイプした動画だった。そこにはライアンもいたのだ。
ライアンはただの傍観者であり、事に及んでいなかったが、それはキャシーにとっては関係ない。残酷な犯罪現場で笑っている恋人の顔が許せるはずはなかった。
それに、みんなニーナのことは忘れているのに、レイピストのアルは覚えている。しかもポジティブな意味でだ。
「プロミシングヤングウーマン」がこの日を境にすべてを失ったというのに、関係者は真っ当な人生を生きていて、幸せそうに暮らしているのだ。
ラストはハッピーエンドではなかったが、心ある者の動きによって、アルやジョーは捕まった。
この映画は、アルやジョーのように明らかな犯罪行為をしておいて、罪の意識薄く、若気の至りで済ませてのうのうと生きている奴らへの女性の怒りだけではない。
彼らへの犯罪行為への意識を引き上げるだけでなく、飲み会終わりに持ち帰りをしたことのある世の男性全てへの警笛だ。そんな危険なところへノコノコ出かけていて酔っ払った女性が悪いで済まされるには、その代償は大きすぎる。
マディソンのような割り切った女性だってもちろんいるが、若いからと言って、相手の気持ちを考えずに事を起こすことへの危険性をよく理解するべきだとこの映画は伝えている。
まぁ、不倫すると損しかしない世の中になっているというのに、一向に減らないのは性欲を理性で抑えるのが非常に難しいからなのだけれども。
その、ただでさえ理性で抑えられない下半身に酒をプラスしてしまうことほど危険なモノはないなと。
ちなみに30代の未婚女性が家族と暮らすというのは、アメリカではとても異常な状態らしい。
日本でも確かにある程度の年齢を重ねると同じような風潮にはなるけれど、それでもまぁ、わりと普通にいる。
アメリカやイギリスのような個人を尊重する国では引きこもりになるのではなくホームレスになる方が圧倒的に多いらしい。30になっても誕生日に友達を呼んでパーティをしないといけないのかと思うと面倒くさいなと感じてしまった。
ただ、医大にも通った娘が中退してコーヒーショップに勤めて、夜な夜な徘徊していたら親としてもしんどいだろうというのは確かだ。
マディソンがうまいこと泥酔したなとか、あれだけ男を陥れていればもっと早くに痛い目に見ただろうとか、細かいシナリオに気になるところはあるものの、エンターテイメントも混ざった復讐劇と思えば刺激的で突き刺さるもののある映画だということには間違いない。
コメント