「パーフェクト・ケア」は2021年公開の映画。
法の抜け穴を利用して、富裕層の老人から資産を奪い取る捕食者として生きていた法廷弁護人のマーラ。
しかし、ある日ターゲットにした老人が、実はロシアンマフィアと繋がっていだことから始まるクライムスリラー。
主演は映画「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイク。
底知れぬ度胸を持つロザムンド・バイク扮するマーラが、悪い女を演じながらロシアンマフィアとやりあう流れは、話のテンポがめちゃくちゃいいので、2時間なんてあっという間。
アメリカの法定後見人制度の問題点を指摘しつつ、頭も度胸もキレッキレのロザムンドパイクによって最高なエンタメ性を発揮。
悪者が凋落していく過程を楽しんでいた途中から、雰囲気が変わってくるところもこの映画の魅力の1つ。
「ゴーン・ガール」好きなら間違いなしの傑作だ。
「パーフェクト・ケア」
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「パーフェクトケア」映画情報
タイトル | パーフェクトケア |
公開年 | 2021.12.3 |
上映時間 | 118分 |
ジャンル | コメディ、スリラー |
監督 | J・ブレイクソン |
映画「パーフェクトケア」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
マーラ | ロザムンド・パイク |
ローマン | ピーター・ディンクレイジ |
フラン | エイザ・ゴンザレス |
ジェニファー | ダイアン・ウィースト |
映画「パーフェクトケア」あらすじ
法定後見人のマーラ(ロザムンド・パイク)は、判断力の衰えた高齢者を守り、ケアすることが仕事だ。常にたくさんの顧客を抱え、裁判所からの信頼も厚いマーラだが、実は医師やケアホームと結託し高齢者たちから資産を搾り取る悪徳後見人だった。パートナーのフラン(エイザ・ゴンザレス)とともにすべては順風満帆に思えたが、新たに獲物として狙いを定めた資産家の老女ジェニファー(ダイアン・ウィースト)をめぐり、次々と不穏な出来事が発生し始める。そう、身寄りのないはずのジェニファーの背後にはなぜかロシアン・マフィア(ピーター・ディンクレイジ)の影が……。迫りくる生命の危機、まさに絶体絶命、マーラの運命は果たして――⁉
映画「パーフェクト・ケア」公式
映画「パーフェクトケア」ネタバレ感想・解説
「パーフェクト・ケア」は実話?
「パーフェクト・ケア」の主役マーラの職業は法定後見人。あんまり馴染みがないかもしれないが日本にも存在する制度だ。
認知症、知的障がい、精神障がいなどによって判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度
東京弁護士会
もちろん前提は弱者を守るための制度なわけだけど、それを悪用したのがマーラ。
医者や老人ホームと結託し、元気な老人を障害者認定させ、老人ホームに軟禁させる。
この制度の怖いところは後見法定人が彼らの資産に対して強い権限を持つところだ。
これは、脳の機能が低下(いわゆる認知症)していると見られた場合、自分の意思でお金を使えなくなる可能性があるということだ。
その判断をする医者を抱き込み、本人の預かり知らぬところで勝手に病気認定され、権限を奪われてしまう。
この映画は実話ではない。
ただし、実際にアメリカの後見人制度で起きている問題をもとに着想を得たと監督は伝えている。
そんな悪徳後見人のマーラは、裕福な高齢者を見つけては彼らの資産を奪い取って荒稼ぎしていた。
「貧乏で苦労したから、悪いことをして私腹を肥やている金持ちからお金を奪い取ってやる」などといった動機付けなどない。
ただ、自分が捕食する側にまわるためだけの目的で行動している。
ある日突然、家の前に警察がやってきて、法的根拠のある紙切れを突きつけられ軟禁されるなど、どれほどの恐怖だろうか。
今回は、その行為を平然とやってのける人間が主役だ。
マーラはただの悪者なのか?
「パーフェクト・ケア」は、このテーマをもとにロシアンマフィアと悪徳後見人のバトルに展開していく。
冒頭では捕食者だったマーラがさらに強大な捕食者に狙われるのだ。
「悪いことをやってるヤツにバチが当たる」的な満足感が観るものを魅了していく。
しかし、それだけでは終わらないのがこの映画のおもしろいところだ。
身寄りのない富裕層の老人のジェニファーを同じ手口で老人ホームに軟禁したところ、実はバックにロシアンマフィアがいたという事件が起こる。
しかし、マーラはひるまない。
ただものではない老人だとわかっても決して解放しないし、膨大なカネを見せられても、それ以上に存在するジェニファーの持つ資産全部を奪いにかかる。
電話すらかけさせず、人権を無視したような扱いを指示する。
最終的には精神病棟に送り込むという強硬手段にでる。
ちなみに、ロシアンマフィアと繋がりがあるとはいえ、ジェニファーはマーラに何かしたわけではない。
ロシアンマフィアがどれだけ悪行を重ねていようとも、この件に関しては「どう考えてもお前が悪いやん」案件だ。
しかし、マーラの信念に触れていくうちに別の感情が芽生えはじめていることに気づく。
マーラが持つのはカネに対する強欲さだけではない。資本主義という枠組みの中で捕食者であり、絶対王者であるライオンであることを唯一の信念とする行動に、ついつい引き込まれていくのだ。
いつのまにか、嘲笑っていた対象に魅了されていることに気づく。
たまたま高齢者という意味での弱者がターゲットだっただけで、相手がロシアンマフィアだろうがマーラの信念は変わらない。
マーラは、相手の強さで態度を変えない。
結託していた医者が殺されても、老人ホームが襲わても奪われる側にまわるつもりは微塵もない。
弱肉強食の資本主義で勝つために、マフィアですら捕食しようとするのだ。
その覚悟がもっとも伝わるのが、ロシアンマフィアのローマンに捕まった場面。
死が迫る瞬間にも一歩も引かないマーラの眼力たるや、明らかに有利なはずのローマンの歩が悪いように見えてしまうほどだった。
「死ぬ」ということをリスクとして捉えずに、いかに自分が捕食者に回るかだけで行動するマーラの姿に惹かれてしまうのである。
「パーフェクト・ケア」のラスト
そしてここからがまたすごい。死の淵から九死に一生を得たのに逃げようとせずになお組織を潰そうとする。
パートナーのフランと協力して、ローマンを拉致。意識を失ったローマンを山中に置き去りにするという手段に出る。
ちなみにローマンは、「スリービルボード」にも出ている人物で、小人症で小柄だけどめちゃくちゃ存在感のある俳優。
かろうじて生き延びたローマンは、マーラの圧倒的に捕食者であろうとする姿を見て、10億と引き換えに手を組もうと提案する。
その提案は、介護業界の全てを牛耳り、国中から富を得ようとすること。
そしてそれは成功した。マーラはチンケな後見人から実業家として上り詰めた。本の表紙を飾り、誰が見てもマーラは成功者だった。
しかし、圧倒的な成功者に上り詰めたマーラは、以前老人ホームに入れて資産を奪い取った老人の息子に撃たれてしまう。
ここでようやく我に返るだろう。この女は悪女だったと。
健康的な老人から無理矢理金銭を剥奪するだけでなく、息子でさえも母親との面会すらできないようにした冷徹な人間なのだと。
マーラは冒頭のシーンで、汚い言葉を使って罵倒している。この哀れな男の立場で描いていたならとんでもない巨悪なのだ。
「パーフェクト・ケア」は資本主義を痛烈に皮肉りつつ、テンポが良くてスリリング。
マーラという人間はとても認められないが、信念を持った人間への憧れを感じずにはいられない映画だった。
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