映画「この茫漠たる荒野で」は2020年のNetflixで独占配信された映画。
南北戦争終結後の混沌とした南部で、退役軍人であるジェファーソンが、先住民に拉致された少女と出会い、一緒に旅をする中で信頼関係を紡いでいく話。
監督には「ジェイソン・ボーン」シリーズを手がけたグリーングラスに、キャプテンフィリップス以来、再タッグとなるトム・ハンクスが主演の期待作だ。
アメリカに広がる荒野などの原風景の美しさと、西部劇のようなセットの豪華さに加えたロードムービー的要素を楽しめる映画だった。
62点
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「この茫漠たる荒野で」映画情報
タイトル | この茫漠たる荒野で |
公開年 | 2021.2.12 |
上映時間 | 118分 |
ジャンル | アドベンチャー |
監督 | ポール・グリーングラス |
映画「この茫漠たる荒野で」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ジェファーソン | トム・ハンクス |
ジョハンナ | ヘレナ・ゼンゲル |
クリストファー | レイ・マッキノン |
アルメイ | マイケル・コヴィーノ |
ドリス | メア・ウィニンガム |
ウィリー | ビル・キャンプ |
映画「この茫漠たる荒野で」あらすじ
ニュースの読み聞かせを生業とし、町から町へと転々としていた退役軍人。孤児の少女を新たな家族の元へ送り届けるため、テキサスを南下する過酷な旅に出る。
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映画「この茫漠たる荒野で」ネタバレ感想・解説
この茫漠たる荒野での読み方は”ぼうばく”
ぱっと見て漠然(ばくぜん)と読んでしまいそうになるけれど、これは(ぼうばく)と読むのが正しい。
とりとめがないほど広いさま。また、ぼんやりしてつかみどころのないさま。
テキサスから640キロも離れた場所まで10歳程度の女の子と退役軍人が旅をする。
広い荒野で何があるのわからない様を邦題としてつけられているみたいだけど、馴染みがなさすぎてわかりづらいのは否めない。
原題は「News of the World」(世界のニュース)。
ジェファーソンは各地のニュースの読み聞かせをすることで生計を立てている退役軍人だ。ここでいう世界とはアメリカ全土のことを指している。
今は国内どころか世界中のニュースが小さなスマートフォンの中に溢れかえっている時代だけど、今の当たり前がなかった時代は隣町のニュースでさえも簡単には入ってこなかったわけだ。
マスコミなんていう言葉すらない時代。ジェファーソンのような各地を旅しながら情報を集めて広める人間は貴重な存在だったのだろう。
160年前に起きた南北戦争終結後が時代背景になっている。
この4年間の戦争は1961年から1965年まで続き、最終的には北軍の勝利で終わり、奴隷制度が廃止されるきっかけにもなっている。
歴史にどちらが正しいとかはないけれど、ジェファーソンたち軍人は戦いたいわけでもなかったし、戦争のために4年間も妻と離れてしまわなければならなかった。
「この茫漠たる荒野で」ネタバレあらすじ
トムハンクス扮するジェファーソンと、先住民のカイオワ族に拉致されて、6年間そこで育った白人の少女ジョハンナが、故郷に帰る道中で信頼関係を積み重ねていく西部劇版ロードムービーだ。
南北戦争に南側として戦って敗北した退役軍人のジェファーソンは、各地のニュースを集めては読み聞かせをする仕事をしていた。
ある日、何者かに襲撃された馬車を見つけ、そこに取り残されたジョハンナと出会う。
物心つく前に拉致されているため、ジョハンナは英語すら話せなかった。
少女を一緒に連れて、役所に連れていくも担当役員が次に来るのは3ヶ月後だと言われる。自身も妻の元に帰る道中だったため一緒に連れていくことにする。
最初こそ信頼関係が全くなかったけれど、その旅の道中でジェファーソンが懸命にジョハンナを助けることで、徐々に信頼するようになっていく。
現代と違い、法律も整っておらず無法地帯のようなテキサスの地を駆け抜けるにはさまざまな危険がつきまとう。
町と町の間にはだだっ広い荒野が現れ、野宿をしながら少しずつ進んでいく。時には少女を買おうとする一味に命を狙われたりもするし、砂嵐に巻き込まれたりもする。
やっとの思いでジョハンナの故郷にたどり着くも、そこにいた叔父叔母はジョハンナを労働者としてしか見ておらず、働かずに逃げようとするジョハンナを縛りつけてしまう。
一方、妻のもとへ帰ったジェファーソンだったが、妻はコレラが原因で亡くなっていた。
ジェファーソンは、縛られたジョハンナを見て、一緒に読み聞かせの仕事をしながら生きていくことにするのだった。
ジョハンナは生みの親より育ての親
ジョハンナは、6年前に拉致された時に親を殺されている。
その後、カイオワ族の元で育てられ、ジェファーソン、そして叔父夫婦のもとへいく。
ジェファーソンと知り合って間もない頃、彼女はカイオワ族の集団を見つけて助けを求める。彼女は拉致されていたけれど、カイオワ族はおそらくジョハンナを大切に育てていたのだろう。
そして、ジェファーソンとも徐々に信頼関係を結ぶ。
そこには先住民、白人、南軍、北軍という隔たりはない。血のつながりも無関係に彼女は自身と一緒にいて大切にしてくれる人間と生きていく。
トランプ大統領が覇権を握った後、世界は分断されつつある。アメリカは国内ファーストと叫び、イギリスはEUを離脱する。繋がりつつあった世界は再び分断の時代に変わりつつある。
さらに今はコロナの猛威により、精神的な繋がりだけでなく地理的にも完全に分断され未来は不透明なままだ。
アメリカ分断の時代を描いた「この茫漠たる荒野にて」。ぜひ今見るべき映画だろう。
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人間関係に疲れたときにちょうどいい。心温まる映画だった。
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