「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」は2021年の映画。
ファッションデザイナーになる夢を叶えるために田舎からロンドンに上京したエロイーズが、60年代にタイムスリップ。ロンドンで歌手を目指した女性サンディにシンクロするタイムリープ要素のあるスリラー映画。
「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督による新作は、60年代の音楽や007に代表されるオマージュシーンが多数組み込まれ、映画ファンからの人気は高い。
スリラー、ホラーとしての怖さも残しつつ、全体的なテイストは美しめ。あくまで映像と音楽にこだわった映画として作られている。
また、スリラー要素であるストーリーもしっかり作られているので深く知らずに観に来た人も満足できる内容になっている。
急なタイムスリップの説明はなく、どこかファンタジーの要素を感じる部分もあるので、そこに幾分かの気持ち悪さを感じつつも楽しめる映画だった。
オマージュや犯人までを解説しながらレビューしていく。
「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」
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「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」映画情報
タイトル | ラスト・ナイト・イン・ソーホー |
公開年 | 2021.12.10 |
上映時間 | 116分 |
ジャンル | スリラー |
監督 | エドガー・ライト |
映画「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
エロイーズ | トーマシン・マッケンジー |
サンディ | アニャ=テイラー・ジョイ |
ジャック | マット・スミス |
ミス・コリンズ | ダイアナ・リグ |
ジョカスタ | シノーヴ・カールセン |
映画「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」あらすじ
ファッションデザイナーを夢見るエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学する。しかし同級生たちとの寮生活に馴染めず、街の片隅で一人暮らしを始めることに。新居のアパートで眠りにつくと、夢の中で60年代のソーホーにいた。そこで歌手を夢見る魅惑的なサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)に出会うと、身体も感覚も彼女とシンクロしていく。夢の中の体験が現実にも影響を与え、充実した毎日を送れるようになったエロイーズは、タイムリープを繰り返すようになる。だがある日、夢の中でサンディが殺されるところを目撃してしまう。さらに現実では謎の亡霊が現れ、徐々に精神を蝕まれるエロイーズ。果たして、殺人鬼は一体誰なのか、そして亡霊の目的とは-!?
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映画「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」ネタバレ感想・解説
登場するオマージュ
(C)2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED
「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」にはさまざまなオマージュが登場する。
舞台は60年代のロンドンだが、エンタメ界ではハリウッドもイギリスも話題作が多いためか、注目を浴びている。
エロイーズが最初に登場するコーンウォールという地方は、いわゆる田舎町でありエロイーズの服装もあいまって時代設定がわからないと感じる人も多い。
しかし、エロイーズが着けていた「Beats by Dre」のヘッドホンから現代の話なのだということがわかる。
参考:spotern.com
ただ、エドガー・ライト監督はオマージュは意識しているわけではなく、自然と滲み出てしまったとのことから、特定の何かを示しているわけではない。
でも脚本には、オマージュを意識した書き込みはしていないんだ。皆がオマージュだと思うような点は、僕も大好きな映画の要素だから、自然と出てきてしまうんだよね。
引用:cinemore
ホラーとしては控えめのスリラー映画
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「ラストナイト・イン・ソーホー」は夢の中で美しい女性に成り代わるファンタジー要素から始まり、それがだんだんと悪夢へと変わっていくスリラー映画だ。
ロンドンのファッション専攻の大学に合格したエロイーズは、夢を抱きながら都会にやってくるが、そこに田舎とは異なる空気を感じてしまう。
エロイーズが好きな60年代のファッションを嘲笑う同級生。田舎とは違う治安の悪さ漂う街並みと空気。楽しみにしていた感情はどこえやら、全く馴染めずに浮いてしまう。
そこでエロイーズは、居心地が悪い場所からさっさと逃げ出すのだった。
心機一転、古びたアパートを自分で借りて1人で住み始める。老婆が管理人のアパートは、古びてはいたものの、60年代の世界観が再現された部屋だった。その部屋に住むことを即決し、すぐに引っ越すエロイーズ。するとその夜、夢を見るのだ。
しかし、それは夢のようであるものの現実感を感じる感覚。60年代の世界に飛ばされたエロイーズは、ロンドンでダンサーを夢見たサンディになりきるのだった。
ここまではまるでファンタジー。そこで出会った男に口説かれて、夢のようなひとときを過ごす。
朝のアラームとともに目を覚ますが、美しいシンディのドレスにインスピレーションを受けたエロイーズは、実技としてのデザインにも反映され、身も心もサンディになりきり始める。
しかし、だんだんとサンディの立場が不穏になるにつれて、エロイーズの精神状態も乱れていく。
エロイーズの母親が登場する意味
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エロイーズの母親はメンタル的な疾患をかかえて自殺している。
冒頭、祖母がロンドンに出ていく娘を心配するシーンがあるが、今から孫娘が同じ道を辿る可能性があるという伏線とともに、娘を見守り続ける母親も描かれる。
母親がどういう経緯で自殺に至ったのかは描かれていないが、早々に居心地の悪い環境から逃げ出したエリーは同じ道を辿ることはなかった。
しかし、その選択は、より禍々しい狂気の中へと巻き込まれることになり、エロイーズを苦しめることになるのだ。
そんな母親は、エロイーズの前にたびたび現れる。鏡に映る女性が母親であるが、全くふれられることはない。しかし、それはエロイーズに不思議な能力があることも示唆している。
もちろん、実態はないのでサンディの悪夢に巻き込まれても、母親が何かの助けになることはない。
しかし、母親はエロイーズに同じ道を辿らせないためのストッパーとしても存在していて、エロイーズもまた現実と過去を区別する役割として存在しているのだ。
ラストの犯人とダイアナ・リグに捧ぐの意味
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冒頭に「ダイアナ・リグに捧ぐ」のテロップが表示されるが、これは犯人であるミス・コリンズが2020年に死去したことから急遽追加となったもの。
ダイアナ・リグは、1960年代に「女王陛下の007」を演じていて、「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」がまさにその時代の映画なのだ。
そんな彼女が演じたのが、サンディ自身。エロイーズが見た夢ではサンディはジャックに殺されたはずだったが、実はサンディがジャックを殺していた。
ジャックはサンディを口説いていたものの本気ではなかった。ダンサーとして成功させることを口実として、サンディを客にアテンドしようとしていたのだ。
数々の男からアプローチされ、逃げ場のなくなったサンディは、ジャックを刺し殺した。その後も数々の男たちを葬り、その家に埋めたことで、エロイーズは悪夢を見ることになる。
ゴーストとして登場する無数の男たちはエロイーズに救いを求めていたのだ。
で、サンディはどうなったかというと、実は生きていて、ミス・コリンズとしてアパートメントの管理人になっていたというオチ。
きらびやかなネオンがいろどる60年代のロンドンは、うんざりするような男たちがあふれていた闇のような過去があるという話。
60年代の音楽を多用し、今をときめくアニャ=テイラー・ジョイと、トーマシン・マッケンジーによる共演は絵的にも豪華で贅沢。
アニャは完成された美を披露するが、トーマシンは、アニャの初期作品「スプリット」のような垢抜けてない美少女感もグッド。
エンタテインメントとして楽しめる映画になっている。
ちなみに、トーマシンは「オールド」、アニャは「スプリット」と、シャマラン監督に出演していて、どちらもおもしろいのでおすすめ。
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