「鳩の撃退法」は2021年に公開された映画。
元直木賞作家が、田舎町で出会った男の突然の失踪と突如手に入った3,000万円をきっかけに事件に巻き込まれていく姿を描くミステリー。
実体験をもとに小説を描いていく流れなので、主人公の津田が経験した現実と、そこから導き出される推論であるフィクションが混ぜこぜになり、何がリアルか分からなくなること必死の叙述トリック作品。
ストーリーとしてはおもしろいものの、上下巻あるボリュームを2時間に収めるのも無理があり、またミステリアスっぽくもないし、コメディによっているわけでもない中途半端な演出も微妙。
小説で見るべきだったというのが正直な感想である。
叙述トリックをここまで映像化したことは評価できるが、のめり込むほど惹きつけられなかったのは残念だった。
観たものは混乱すること必死なので、「鳩の撃退法」のタイトルの意味や現実とフィクションの境目をネタバレしながら解説していく。
鳩の撃退法
(2021)
ミステリー
タカハタ秀太
藤原竜也、土屋太鳳
- どこまでが現実で、どこからがフィクションなのか
- 一家失踪事件と偽札事件をつなぐ糸を辿っていくミステリー
- 叙述トリックが使われているので小説を読むべき
- 1100ページの原作を2時間にまとめるのは無理がある
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「鳩の撃退法」映画情報
タイトル | 鳩の撃退法 |
公開年 | 2021.8.27 |
上映時間 | 119分 |
ジャンル | ミステリー |
監督 | タカハタ秀太 |
映画「鳩の撃退法」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
津田 | 藤原竜也 |
鵜飼なほみ | 土屋太鳳 |
幸地秀吉 | 風間俊介 |
沼本 | 西野七瀬 |
幸地奈々美 | 佐津川愛美 |
まりこ | 桜井ユキ |
晴山 | 柿澤優人 |
まえだ | リリー・フランキー |
加奈子 | 坂井真紀 |
房州老人 | ミッキー・カーチス |
倉田健次郎 | 豊川悦司 |
堀之内 | 濱田岳 |
多々良 | 駿河太郎 |
大河内 | 浜野謙太 |
川島社長 | 岩松了 |
山下 | 村上淳 |
吟子 | 森カンナ |
映画「鳩の撃退法」あらすじ
かつては直木賞も受賞した天才作家の津田伸一(藤原竜也)。津田はとあるバーで担当編集者の鳥飼なほみ(土屋太鳳)に、書き途中の新作小説を読ませていた。富山の小さな街で経験した“ある出来事”を元に書かれた津田の新作に心を躍らせる鳥飼だったが、話を聞けば聞くほど、どうにも小説の中だけの話とは思えない。 神隠しにあったとされる家族、津田の元に舞い込んだ大量のニセ札、囲いを出た鳩の行方、津田の命を狙う裏社会のドン、そして多くの人の運命を狂わせたあの雪の一夜の邂逅…。彼の話は嘘?本当?鳥飼は津田の話を頼りに小説が本当にフィクションなのか【検証】を始めるが、そこには【驚愕の真実】が待ち受けていた―。
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完全解説 映画「鳩の撃退法」ネタバレ考察・感想
物語のネタバレあらすじ
(C)2021「鳩の撃退法」製作委員会 (C)佐藤正午/小学館
物語は1人の男が失踪したところから始まる。
「一家の失踪事件」「偽札事件」の2つを軸に始まっていて、その糸を繋げていくストーリーだ。
津田がカフェで出会った秀吉という男。翌日から秀吉が失踪したことを知った津田は、それをテーマにして小説を書く。
さらに津田が仲良くしていた房州書店の老人から遺品として3,003万円を譲り受ける。
そのうち3枚が偽札だったことがわかるが、どうやらその2つの事件は密接に絡んでいるのではないかと津田は考えるようになる。
現在進行形で進む事件をミステリーにしながら小説というフィクションに書き起こしていくのだ。
その過程でわかる現実と虚構。それは編集者の鵜飼なほみと同じように私たち観客も混乱の渦に巻き込まれていく。
小説のひとまずの結論は、どちらの事件も倉田というヤミ社会に生きる男が絡んでいたというオチになる。
「一家の失踪事件」では、秀吉の嫁が不倫をしていたことを知った倉田が、その見せしめに不倫相手と妻を消そうと画策したこと。
「偽札事件」では、同じように倉田が偽造しようとしていた偽札のサンプルが、奇妙な偶然から手を離れて津田のところに行ってしまったことで、津田は追われる羽目になるという事件。
これらは津田が「今ある事実から考えて何が自然か」を考えることで導き出した隠された事実だ。
果たしてこの話は現実に起きたことなのだろうか?
それを今から説明していく。
偽札は燃やしたのではないのか?
床屋で使った万札が偽札だと分かったあと、津田が偽札を燃やすシーンがある。
これは「鳩の撃退法」で唯一完全なフィクションとして挿入されている。
燃やしたあとに当たり前のように札束が姿を表すので混乱した人も多いだろうが、実はあのシーンは編集者のなほみの考察。
映画の中ではあまり深掘りされていないが、なほみは直木賞作家を受賞した津田の熱狂的なファン。
小説の内容に対しての考察を述べたに過ぎず、津田はその考えを否定している。
津田はあくまで自分が知る限りの事実をもとに、どう動いたら自然に見えるだろう推論から小説を書いている。
現時点で津田には倉田の望みが分からない以上、燃やすのが得策とは思えないというわけだ。
というわけで、あれはイメージであり、実際には燃やさずに倉田のところまで届けている。
偽札に存在する伏線
(C)2021「鳩の撃退法」製作委員会 (C)佐藤正午/小学館
そもそも、津田が偽札を使わなければ、都市伝説のような存在の倉田に狙われるはずはなかった。そのことを津田が事実に即して考えると以下のような推理が展開される。
そう考えると確かに伏線が上手いこと張り巡らされてて、津田のいう自然の意味がわかるだろう。
- 秀吉が女性従業員から三万円の給料前借りを頼まれる
- 倉田から秀吉に「今日届く”ある物”を預かって欲しい」と伝えられる。
- 妻から妊娠の報告を受けたあと、倉田の依頼を忘れて従業員に店を任せる
- 知らずにきた女性従業員が金庫に入っていた封筒入りの三万円を見つけて、勘違いして持ち去ってしまう。
- 女性従業員はその封筒を彼氏に渡す。
- 金を受け取った男は、デリヘル嬢のまりこに三万円を渡す。
- まりこは、津田に借りていた三万円をピーターパンの本に挟んで返す。
- 津田が奥平を車に乗せたとき、その子供がピーターパンの本を持ってきてしまう。
- 奥平は、以前津田と出会った房州書店で、房州書店の老人に本と三万円を渡す
冒頭で出会った房州書店の親子のくだりや、秀吉の電話のくだりが後半になって伏線となって生きてくるという流れになっている。
ピーターパンの小説の一節にある
「私たちが生きていく間に私たちの上に奇妙な出来事が起こる。しかもしばらくは起こったことさえ気づかないことがあります」
というくだりは数々の伏線が現実に起きていることを示している。
しかし、あくまで小説家津田にとって自然であるべきことであり、こうあれば小説はおもしろいはずだという推論だ。
手をたたく意味
ピーターパンの小話もこの物語には重要な意味を持っていて、いくつか引用される。
秀吉は、映画の中で3回手をたたいている。
- 妻が妊娠していることがわかった日の夜
- 妻と不貞を働いた男の元へ向かう途中の車
- 妻が殺されかける直前
これは、ピーターパンの話の中で、手をたたくと妖精のティンクが助かるような話をしているからだ。
手をたたくだけで事態が好転するのならとワラにもすがる思いで手をたたいている。
妻の妊娠は秀吉にとってどうにもならない絶望だったということを示唆している。
タイトル「鳩の撃退法」の意味
(C)2021「鳩の撃退法」製作委員会 (C)佐藤正午/小学館
津田が最後に本のタイトルについて考える。
これは公式サイトに登場俳優の考察が載っているが、100人入れば100通りの回答があるタイプのタイトルだ。
藤原竜也「まったく分からない。でもニセ札(の撃退法)ということでしょ。非常に僕としてはハイセンスというかお洒落なネーミングを津田自身はつけたんじゃないかなと。最初で最後の大仕事じゃないかなと。
土屋太鳳「思い込みって、人が生きる時の選択肢の自由を奪うと思うんです。「しあわせは、こうあるべき」という思い込みも含めて。思い込みを撃退すれば、いくらでもやり直せるし、いろいろな形のしあわせが生まれるかもしれない。そういう思いを込めて「鳩の撃退法」というタイトルを選ぶと思います。
西野七瀬「津田は小説家なので、タイトルにも印象の強いタイトルを付けたのかなと思います。
風間俊輔「本が出版されれば、倉田たちは新しい行動を取らざるを得ないと思うので、この本自体が、偽札(鳩)作りをしている者達が嫌がること、撃退法という意味ではないかと推測します。
豊川悦司「津田に聞いて下さい。」
考察の中にも言及があるように、鳩というのは偽札を暗示している。
津田が偽札を倉田に返した時、「つがいの鳩が飛んでるのを見なかったか?」と問われる。
全部で3枚あった偽札のうち、2枚はまだ津田が持っていた。本物の1万円札には鳳凰が印字されていることから鳩のつがい(オスとメス)という言い方をしているのだ。
言い換えると「偽札の撃退法」というタイトルになる。
では、撃退法というタイトルはどこからきたのだろうか。
「鳩の撃退法」というタイトルは、秀吉がバーにピーターパンの本を返しにきたとき、秀吉が倉田と一緒にいるところを目撃して決定される。
また、津田は小説の中でハッピーエンドを望んでいる。
ニセモノを駆逐し、この物語の準主役である秀吉の幸せを望んでいるところからタイトルがつけられている。
ラストで混乱する現実とフィクションの境目
(C)2021「鳩の撃退法」製作委員会 (C)佐藤正午/小学館
「鳩の撃退法」は以下のテロップで締めくくられている。
「この物語は実在の事件をベースにしているが、登場人物はすべて仮名である。僕自身を例外として。」
つまり、いくつかのフィクションが混じっていると言っているのだが、現実とフィクションの境目については明示していない。
この物語で語られた現実は大きく分けて3つ。
- 第三者もこの目で見た現実
- 津田自身が遭遇した現実
- 津田が「何が自然か」をもとに導いた現実
先に書いた「偽札を燃やす」行為はそのどれにも当てはまらないので、起こり得なかったことなのだ。
第三者というのは、新聞記事の内容と、フィクションであるという裏をとるためになほみが実際に現地に行って見聞きした部分だ。
少なくとも津田が出ていないシーンに関しては、すべて推論であり、フィクションの域を出ないということを念頭に置く必要がある。
第三者がこの目で見た現実
- 幸地秀吉という男の存在と、妻と4歳の娘がいたこと
- 秀吉一家は失踪しているということ
- ダムの底で男女の遺体が見つかったこと
- 床屋のまえだは実在する店舗
- 沼本という女性が働くカフェがあるということ
- デリヘル「女優クラブ」とその社長
- クリーンランドの存在
- まりこが捨てたビデオカメラに入っていたSDカード
- NPO法人「ネヴァーランド」に3,000万円が振り込まれたこと
- “クラタ”という人物が存在すること
- ピーターパンを返しにきた男の存在
続いて津田が映画の中で語っていた真実は以下。
津田自身が見た現実
- 秀吉の娘は秀吉の子ではない
- 女性従業員が秀吉に給料の前借りを依頼したこと
- 秀吉の妻が妊娠を告げたこと
- 妻が郵便局員と不倫をしていたこと
- 秀吉の店のオーナーが倉田だったということ
- 3万円の偽札の存在
- 偽札を倉田が追っていたということ
基本的に津田が登場するシーンは、津田自身の経験から語られていることだ。
逆に言えば、それ以外はすべてが津田が考えた「何が自然か」で導きだされる壮大なフィクション(推論)なわけである。
つまり、ほとんどが津田の頭の中で導き出される空想だ。
そもそも津田自身が全て嘘を言っていて、秀吉の家庭のゴタゴタや偽札事件そのものが壮大なフィクションという可能性もゼロではない。
しかし、小説に以下の一節があるように津田が見てきたことは存在する現実であることを示している。
今夜、たったいま本物の幸地秀吉が現れたのだ。彼は生きていたのだ。きっとそうだ。やっぱり生きていたのだ。自分が書き溜めた原稿の筋書きどおり、やっぱり幸地秀吉は生きていたと言いたいんだ。現実が、小説を裏書きしている、と。
このことから事実は津田が見てきたことのみとなり、あとはその現実に沿って津田の推論を書く。そこには物語上、「こうあって欲しい」という思いも含まれている。
というわけで、私の結論としては津田が見てきたところまでは真実だが、他は全てフィクション(例え推論が一部当たっていたとしても)であるといえよう。
小説では、秀吉は生きていて、家族で幸せに暮らしていると結論づけたいわけであるが、ダムの底に沈んだ男女が秀吉の妻と不貞の男である可能性もある。
そもそもピーターパンを返しにきた秀吉と一緒にいた男が”倉田”かどうかすら分からない。
津田は倉田に一度も会ったことはないのだから。
「鳩の撃退法」は、フィクションなのか現実なのか混乱させるように描いているのが特徴だ。
小説の中の出来事なのか、現実に起きていることなのか、あえて読者を混乱させるような手法で書かれた『鳩の撃退法』は、実写化不可能と言われてきました。
好書好日
だから観る者たちも混乱することになるのだが、劇中でも「事実は小説より奇なり」という”ことわざ”があるように、現実で起きた「失踪事件」や「偽札事件」のほうがよほど奇怪なリアルというわけだ。
実際に映画を観ている私たちにはどちらも小説なのでより混乱するわけだけど、「鳩の撃退法」の中では津田の考察とリアルが混じった「Based on True Story」であり、私たちにとってはあくまでフィクションである。
小説の中で小説を書く叙述トリックのような作品は東野圭吾の「悪意」にもあるが、これもおもしろいのでぜひ見て欲しい。
映画「鳩の撃退法」ネタバレ感想
(C)2021「鳩の撃退法」製作委員会 (C)佐藤正午/小学館
「鳩の撃退法」の原作は上下巻で1100ページある大長編作品だ。
1100ページをいい感じに端折って物語の軸をベースに進めたおかげで、全体的な話の流れは映画だけでもわかる。
しかし、秀吉と倉田の関係性だったり、津田と沼本、床屋のまえだの口の固さなど、深掘りされていたはずの関係性がめちゃくちゃ浅くなっている感は否めない。
この流れなら必要なかったのでは?と思える登場人物さえいたりして、余計な勘繰りをすることになってしまった。
叙述トリックは、小説の真骨頂でもあり、文字だからこそのおもしろさがある。
読者は津田と同じようにどこまでが現実でどこまでがフィクションなのかを混乱しながら考察していくのが楽しい。
小説の一節のように、わたしたち読者が「こうあって欲しい」という想いとともに考察する。
映画にすることでそれがどこまで伝えられたのかは疑問が残る。また、挿入される音楽も映画のイメージと違った。
物語をシリアスにすることなく、おどけているような雰囲気のある音楽性は物語の持つ濃厚さが失われていた。
ストーリーは好きだったので、あと一歩およばずという映画だった。
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