「ペインアンドグローリー」は2019年のスペイン映画。スペインでは有名な映画監督、ペドロ・アルモドバルがアントニオ・バンデラスを主演に制作した映画。
年老いた映画監督の苦悩を描いていて、盛り上がりどころがあるわけではない。少し退屈さはあるけれど、この映画の魅力は映像としての美しさと、ちょっとした心の機微変化である。
60点
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「ペイン・アンド・グローリー」映画情報
タイトル | ペイン・アンド・グローリー |
公開年 | 2020.6.19 |
上映時間 | 113分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | ペドロ・アルモドバル |
映画「ペイン・アンド・グローリー」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
サルバドール | アントニオ・バンデラス |
アルバート | アシエル・エチェアンディア |
ジャチンタ | ペネロペ・クルス |
フェデリコ | レオナルド・スバラグリア |
映画「ペイン・アンド・グローリー」あらすじ
脊椎の痛みから生きがいを見出せなくなった世界的映画監督サルバドール(アントニオ・バンデラス)は、心身ともに疲れ、引退同然の生活を余儀なくされていた。そんななか、昔の自分をよく回想するようになる。子供時代と母親、その頃移り住んだバレンシアの村での出来事、マドリッドでの恋と破局。その痛みは今も消えることなく残っていた。そんなと32年前に撮った作品の上映依頼が届く。思わぬ再会が心を閉ざしていた彼を過去へと翻らせる。そして記憶のたどり着いた先には・・・。
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映画「ペイン・アンド・グローリー」ネタバレ感想・解説
「ペイン・アンド・グローリー」ネタバレあらすじ
主人公のサルバドールは、30年前に「風味」で有名になった映画監督。
父と子の思い出を描いた「ハニーボーイ」のように映画の中では50年前の少年時代の回想と現代とが交錯しながら進んでいく。
サルバドールは、近年、脊髄の痛みを始め身体の不調に悩んでいた。そんな時「風味」の再上映を行うイベントを持ちかけられ、出演者のアルバートに登壇を依頼する。
若かりし頃の考え方の違いから仲違いして会っていなかった2人だが、お互いが歩み寄りを見せ始める。
アントニオはヘロインに手を染めていた。以前は見向きもしなかった薬物だったけれど、脊髄の痛みで苦しんでいたサルバドールはヘロインに手を出してしまう。
イベントへの登壇を引き受けたアルバートは、サルバドールと仲を深めていく。そしてサルバドールはヘロインに依存しつつあった。
イベント当日。サルバドールはヘロインにハマりドタキャンする。かかってきた電話から、サルバドール目当てで会場にやってきた観客の質問に答えるが、当時のアルバートとの確執を暴露し、アルバートと再び険悪になる。
アルバートと会えなくなったサルバドールだったが、もらっていたヘロインをやめられず、自らバイヤーと接触してヘロインを手に入れるようになる。
しかし、サルバドールは仲直りのためにアルバートと再び会う。以前アルバートが家に来たときに気に入った脚本の権利を彼に与え、彼自身の名義で舞台を開くように言った。それはサルバドールの自叙伝のようなものだった。
アントニオが舞台を上演すると、サルバドールの仕事仲間でもあり、当時愛し合っていたフェデリコがやってくる。それがきっかけでサルバドールとフェデリコは久しぶりに会う約束をする。
サルバドールはこの日ヘロインをやらなかった。毎日吸っていたヘロインをフェデリコと会う前に捨てた。
フェデリコと会ったサルバドールは病院に行く。ヘロイン依存症からの克服と、さらにずっと悩みのタネだった体中の痛みも治そうと努力するためだ。
そして、喉の痛みの原因となっていたシコリを取るために手術を受けるのだった。
幼少時代貧しかったサルバドールは、洞窟の中に住み、神学校に通っていた。教育を受けたおかげで読み書きや算数ができた。ある日文字を書くことができない左官工のエドゥアルドと出会い、家の修繕の代わりに家庭教師を引き受けることになる。
絵がうまかったエドゥアルドに一度絵を描いてもらったことがある。その絵が50年の時を経てアート展に展示されていた。
サルバドールはエドゥアルドの裸を見たことでゲイに目覚めていた。彼にとってエドゥアルドは特別な人だった。50年の時を経てサルバドールはその絵を手に入れた。
彼が次に書く脚本は「初めての欲望」だった。
「ペイン・アンド・グローリー」の魅力
冒頭で話した通り、ストーリーのおもしろさに期待をしているとちょっとしんどい。歳を重ね体がボロボロになった映画監督の苦しみと懐古の物語は、しかしながら地味さは隠せない。
スペインというあまり親しみのない地が拍車をかける。アメリカ映画であれば、映画を通じてその文化にも触れているのでなんとなく理解できる部分もあるけれど、スペインのことはほとんど知らない。
コカインどころかヘロインまで常用していたり、貧しい人が洞窟暮らしをしていたり、70年代のいい大人が読み書きもできず、子どもに教えてもらうという日本にない価値観をこれでもかと出してくる。だから魅力的なストーリーだったり、感動的な演出を期待してはいけない。
ではこの映画は駄作なのか?いや、そんな事はない。この映画の魅力はいわゆるエンターテイメントの世界にはない。
2時間ほどの映画の中で話が退屈さを感じたとして、惹きつけられるものがあったのではないか。
美しいインテリアの数々に、独特のカラー。貧困地区にある洞窟の神秘的で調和された世界。そしてバックで流れる音楽は不協和音を奏でつつも絶妙なバランスの中で映画の世界を演出している。
そこが「ペインアンドグローリー」の最大の魅力だ。
アメリカの現代アートをふんだんに詰め込んだ「ノクターナル・アニマルズ」のように映画と芸術を融合して動く美術館のような作品である。
その魅力をベースにして、キャラクターたちも魅力的に描いている。ヘロインなんて劇薬をキメる初老のおっさんなんて魅力なんて1ミリもないはずなのに、無造作な髪でさえ計算され尽くしているかのように調和されている。
万人受けするような映画ではないけれど、一部の者には深くささるであろう映画だ。
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