映画「フォードvsフェラーリ」は2020年に公開された映画。
フランスで行われる自動車の24時間耐久レース。イタリアの名車フェラーリが連続優勝している時代にフォードが参入した頃の実話を描く。
アカデミー賞で編集賞と音響編集賞を獲得するほどにそのレースシーンの迫力はすごい。
でもこの映画はクルマに興味がない人でも楽しめる。
クルマに興味がない私が言うのだから間違いない。
80点
「フォードvsフェラーリ」映画情報
タイトル | フォードvsフェラーリ |
公開年 | 2020.1.10 |
上映時間 | 153分 |
ジャンル | アクション |
監督 | ジェームズ・マンゴールド |
映画「フォードvsフェラーリ」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
シェルビー | マット・デイモン |
ケン・マイルズ | クリスチャン・ベイル |
リー・アイコッカ | ジョン・バーンサル |
モリー | カトリーナ・バルフ |
ピーター | ノア・ジュープ |
ヘンリー・フォード2世 | トレイシー・レッツ |
レオ・ビーブ | ジョシュ・ルーカス |
映画「フォードvsフェラーリ」あらすじ
ル・マンでの勝利という、フォード・モーター社の使命を受けたカー・エンジニアのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)。常勝チームのフェラーリに勝つためには、フェラーリを超える新しい車の開発、優秀なドライバーが必要だった。彼は、破天荒なイギリス人レーサー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)に目をつける。限られた資金・時間の中、シェルビーとマイルズは、力を合わせて立ちはだかる数々の乗り越え、いよいよ1966年のル・マン24時間耐久レースで長年絶対王者として君臨しているエンツォ・フェラーリ率いるフェラーリ社に挑戦することになる。
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映画「フォードvsフェラーリ」ネタバレ感想・解説
クルマに興味がなくてもおもしろい
私は男だけれど、はっきり言うと車に興味がない。30歳を越えた頃にあるきっかけで多少興味を持つようになったけど、それまではアルファードや、ボクシーの違いも知らなかったほどだ。
もちろんトヨタやホンダは知っている。フォードやフェラーリも名前は知ってるけど車種はほとんど知らないし、いわゆる男子がかっこいいクルマよりも、スズキのラパンのかわいさが好きだった。
もちろんル・マンなんて見たこともないし、クルマのレース自体まともに視聴したことがない。
でもこの映画は実におもしろかった。昔のクルマカッコいいよね的なファン向けの話ではなく、ストーリーがきちんとできていたからだ。
事実に基づくストーリーだから、なおさら興奮と緊張の中、2時間30分と言う長い時間をあっという間に視聴できた。
クルマに興味のある人ならば、60年代の名車が並んでデッドヒートを繰り広げるシーンにワクワクするだろうけど、私の視点はレース中は「死」と言うワードばかりが頭によぎる。
テスト走行中、ケンの乗るクルマが炎上したとき、「ドアさえ開ければ助かる」と言っていてた。
それなのに、ル・マンのレースの初っ端からトンカチでドアを叩きつけるという死亡フラグを立てたり、クルマがもたないよって言われてるのに7000回転出したり、そもそもスピードの向こう側のような表現は、漫画「特攻の拓」で死んだ誠さんと同じフレーズなんだよ。
「一寸先は死」でしかないこのレースで、死亡フラグ立てまくりで進んでいくものだから、いつ炎上するのか、いつクラッシュして大破するのかとハラハラドキドキしかしなかった。
おそらくあの登場人物の中ではシェルビーでもケンでもケンの息子でもなくケンの妻に近い気持ちを味わっていただろう。
妻はケンがレースに参戦することには前向きではあったけれど、それでも300km超えのスピードで走るレースなんていつでも肝を冷やしていたに違いない。
その恐怖と戦いながらラストまで観た時は色んな感情があふれ出た。
そして突然の死。
フラグを立てておきながら、あえて無視する斬新なスタイルだと感心していたところにこれである。
その直前まで、ハッピーエンドでいい話だと思っていたのに見事に裏切られた。
事実に基づくストーリーなので、内容を知っている人もいるだろうけど、「フォードvsフェラーリ」は知らずに観た方が楽しめる映画だ。
恐怖と戦うか、興奮して楽しむかは車が好きかどうかで変わるけど、少なくともバックグラウンドをきちんと説明し、クルマ好きの彼に連れられてきた女子でも楽しめる映画だということには違いない。
7,000rpmを超えたスピードの向こう側の世界に理解は得られる保障はないけれど。
ケンの決断がドラマになる
ストーリーがいい。それはケンという男の生き様に共感を得ることができるからだ。
ル・マンでフォードがTOP3の独走が確定したときラストを並走して同列1位にする愚策を経営陣は提言する。
当然、シェルビーは怒るしケンも同じように1位を独走する気だった。でも最後は並走を決断する。
偏屈で他人に自分を合わせられず、うまくいかなかったケンが、初めて人に合わせることを決断した瞬間だ。
ル・マンのレースから一度は追い出した副社長の命令を守ったのだ。
その結果はなかなか散々なものだったけれど、これが正解かどうかは問題じゃない。ケンが自らを変えようと考えて決断した結果が観客の心を動かす結果となった。
2020年なら大炎上案件
というわけで、完全に1位だったはずなのに、あえて並走という形で同列1位を譲ったケンだけど、まさかの2位という結果に。
後方からスタートしたからという話だったけど、2020年なら間違いなく大炎上案件だろう。
明らかにケンが勝ってて、勝ちを譲ったのに1位になれないなんて無茶苦茶だし、記者も本当の1位は誰か分かってるはずなのに、なぜか集まってこない。
当時の観客はケンはドジだったねで済む話だったのだろうか。今ならSNSでケンが一言呟けばフォードの信用はガタ落ちだったろうし、そもそも並走するよりも誰が1番早いかを決めた方がおもしろいと思うのはわたしだけだろうか。
ちっちゃすぎるマット・デイモン
ル・マンのレース中、シェルビーはフェラーリチームの時計を盗んだり、部品の一部を落とし慌てさせたりと、セコい嫌がらせをする。
勝ちにこだわるのは分からなくとないけれど、人間が小さい。フェラーリチームはあくまでライバルだし、露骨な嫌がらせを受けたわけでもない。
レースを商売という視点で見ている経営陣が仕掛けるのならまだ分からないでもないけれど、クルマが好きで真剣にレースに向き合ってきた人がとる行動にしては違和感だらけだった。
せめて嫌がらせをするなら副社長が手がけたフォード社のチームに対してだろう。
複数の人間に同じクルマを売って代金だけちょろまかそうとしていたし、彼の品性はイマイチ欠ける印象だった。
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