映画「プレステージ」はクリストファー・ノーラン監督の映画。
18世紀末のマジックショーが舞台で、マジシャンとしてライバル同士の2人がお互いのマジックで出し抜こうとする騙し合いバトルの映画だ。
と思っていた。
真実を覆い隠すことで偉業(プレステージ)を見せる映画なのだと。
だが、実はそうではない。
この映画は誰も欺いていなどいない。
冒頭に出てくる
「実は観客は何も見ていないし、何も知りたくない。騙されていたいのだ」
は重要なキーワードなので、ぜひ覚えておいてほしい。
というわけで、この記事では映画「プレステージ」の解説をする。
映画「プレステージ」予告
映画「プレステージ」あらすじ
19世紀末のロンドンを舞台に、ライバル関係にある2人の天才マジシャンが、お互いの意地とプライドを賭けて戦いを繰り広げる。
filmarks
映画「プレステージ」映画情報
監督、脚本 | クリストファー・ノーラン |
脚本 | ジョナサン・ノーラン |
音楽 | デヴィッド・ジュリアン |
公開日 | 2007.6.9 |
上映時間 | 130分 |
ジャンル | ミステリー |
製作国 | アメリカ |
製作費 | 4000万ドル |
興行収入 | 1億900万ドル |
映画「プレステージ」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ロバート・アンジャー | ヒュー・ジャックマン |
アルフレッド・ボーデン | クリスチャン・ベール |
ハリー・カッター | マイケル・ケイン |
オリヴィア | スカーレット・ヨハンソン |
サラ | レベッカ・ホール |
テスラ | デヴィッド・ボウイ |
映画「プレステージ」ネタバレ考察、解説
「プレステージ」鑑賞後にあなたたちは気づいただろうか。
実はこの映画の中で出てくる会話は、「真実しか言っていない」ことを。
「プレステージ」はマジックをつかった騙し合いだ。トリックを使うため、登場人物が本当のことを言わないという前提に立っているが実は違う。
登場人物は誰も嘘なんかついていない。
マジックは嘘という前提を逆手にとった演出だ。
「実は観客は何も見ていないし、何も知りたくない。騙されていたいのだ」
この言葉は、ステージの観客に言っているのではない。
私たち、映画の観客に向けているメッセージだ。
その言葉通りのまま、私たちは騙されていくことになる。
「プレステージ」では、2人のマジシャンの覚悟と悲哀が描かれる。
その中で起きる大きなネタバレはこの2つだ。
- アンジャーの瞬間移動はリアル
- ボーデンの瞬間移動はトリック
巧みにミスリードを誘ったこの種明かし。いつ頃気づいただろうか。
アンジャーの瞬間移動はテスラの技術
アンジャーの瞬間移動にタネはない。テスラの科学者が作ったホンモノだ。
カーターが瞬間移動のためのコロラドスプリングスの前で裁判所の関係者にこう伝えている。
「これはマジックではない。本物だ」と。
いくつかのシーンでカーターは発言している。
ボーデンは替え玉だが、アンジャーの瞬間移動に関しては、リアルだと。
しかし、私たち(映画の観客)の中にこのセリフを真に受けた人はどれほどいるだろうか。
ここにミスリーディングがある。
マジックの映画なんだから、どこかにタネがあるんだろうな
とか、考えていたはずだ。
だが違う。これはリアルだ。
誰も嘘は言っていない。あなたが勝手に嘘だと思い込んでいただけだ。
ボーデンの瞬間移動は替え玉
ボーデンの瞬間移動についてもそうだ。カーターはずっと言っている。
あれは「替え玉」がいると。
劇中で言うのと同時に私たち観客に向けて伝えてくる。
となると、自然にみんなこう考える。
替え玉だというミスリードだね
カーターは真実を述べている。しかし観客は誰も信じない。
ミスリードに引っかかりたくないという心理をついたミスリードだ。
しかし、もう一度観て欲しい。ボーデンに替え玉がいると匂わせる部分はたくさんある。
- 中国人のマジシャン(チャン・リー・スー)が足の悪い演技をしていると見破るシーン
- 脱出マジックで事故があったとき、結び方を私ともう一人の間で自問自答しているシーン
- アンジャーが日記の中で違う人格の存在を感じているシーン
- 瞬間移動を替え玉だと見破ったカーターの発言
- オリヴィアがアンジャーに伝えた替え玉の存在を伝える発言
- サラとの食事の席でボーデンが発した「秘密は私たちの人生だ」という発言
- サラの死後、オリヴィアに伝えた「片方の僕は愛し、片方は愛していない」という発言
- サラがボーデンに愛されている日とそうではない日があると感じる発言
- 喧嘩の後、サラに向かって伝えた「今日は愛していない」という発言
分かるだろう。
誰も嘘をついていないのだ。ボーデンでさえも。
ずっとみんな真実を言っていた。
シャロンが出てきたタイミングで気づいた聡明な観客もいたかもしれない。
あれ?この怪しい人替え玉じゃないの?
しかし、カーターの「替え玉」発言で、思い直した人もいるのではないだろうか。
カーターが簡単に「替え玉」がいるなんて言ってしまったから、みながミスリードされてしまった。
だって、このタイミングで発言されたら、よほど残念な脚本以外はオチに替え玉以外から選ぶだろう。
しかし、「プレステージ」はこれを逆手にとってなお、替え玉を真実としたのだ。
シーン別どっちのボーデンでShow?
となると、度々出てくるボーデンに対して、ホンモノのボーデンはどっちなんだ?ということが気になるだろう。
瓜二つのボーデンだが、性格は全然違う。
1人はサラを愛し、家族を愛する心の優しいボーデン。もう1人は自由を求めアンジャーへの対抗心を持つ負けん気の強いボーデン。
そもそも、ホンモノという定義すら怪しいので、サラを愛していたボーデンを「サラボーデン」、オリヴィアを愛していたボーデンを「オリヴィアボーデン」として、シーンごとにどちらのボーデンが演じていたのか見てみよう。
ちなみにボーデンがいつから替え玉がいたのかというと、中国人のマジシャンを見に行く前からだと考えている。
自身がやっているからこそ、ボーデンはトリックを見破ったのだ。
オリヴィアボーデン
彼はこだわりがあり、負けん気が強い。カーターともやりあっている。サラを愛していたボーデンが表のように感じていたが、このときすでにオリヴィアボーデンから私たちは観ていたと思われる。
オリヴィアボーデン
マジックショーでの縛り方にこだわっていたボーデンは、リスクのある縛り方をしてマジックの失敗をしてしまっている。
サラボーデン
かなりショックを受けた様子で葬式に来て詫びている。アンジャーにどういう風に縛ったのかと問い詰められるも、彼は答えられず。だって縛ったのは自分ではないから。
サラボーデン
そもそもここで恋に落ちているのでこれはサラボーデンしかいない。鳩への独り言からすると、マジックは手を汚すことが当たり前だと感じているが、心には優しさを感じる。
オリヴィアボーデン
このシーンで、サラは、妊娠したことを告白するが、ボーデンは早速「ファロンに言おう」という。自分よりもむしろファロンが喜ぶような言い方だし、その後にサラにも愛しているという言葉ががウソであると見抜かれている。
オリヴィアボーデン
銃弾掴みの最中、変装したアンジャーに復讐される。この出来事が復讐の連鎖へと繋がっていくし、ラストシーンでサラボーデンに「アンジャーにかまうな」と忠告されていたことから、これはオリヴィアボーデンだ。
サラボーデン
銃弾掴みでケガをしたときにサラが、「またケガがひどくなっている」と言っていたが、サラボーデンは、オリヴィアボーデンと同じケガの状態にすべく、自分の指をわざと切断している。サラにとっては再びケガをしたように感じてしまっても無理はないだろう
オリヴィアボーデン
アンジャーへの復讐を考えて実行しているのはオリヴィアボーデンだ。サラボーデンは、アンジャーとは関わらないようにしたかったが、負けん気の強いオリヴィアボーデンのおかげでここまでこじれてしまった。
オリヴィアボーデン
ここで彼はオリヴィアが気になり始めている。同じ人間なのに愛する人が違うというのがサラへの不信感へと繋がり悲劇の最後を迎えることになる。
オリヴィアボーデン
アンジャーの替え玉となったルートをそそのかし、利用したのはオリヴィアボーデンだ。ちなみにここで彼は替え玉に主導権を乗っ取られたと話していることから、影の側にみえる彼こそがホンモノのボーデンなのかもしれない。
サラボーデン
このときはサラに疑われていることをとてもショックに思っており、ファロンは逆にサラのことを疎ましく思っている。
アンジャーボーデン
アンジャーに捕まり生き埋めにされたのはサラボーデンだ。オリヴィアボーデンは、生き埋めとなった彼を助けた後、レストランに行ってそのことを意気揚々と話して、サラの不信感をより強めることになった。
アンジャーボーデン
サラが自殺する前、ボーデンと口論している。その中でサラに「愛しているか」と問われ、「今日は愛していない」と発言している。
オリヴィアボーデン
アンジャーを出し抜こうとして、逆にはめられて捕まっている。牢獄の中でファロンに対してサラのことや娘のことを謝っていることから、絞首刑になったのは、オリヴィアボーデンだ。
ボーデンは双子なのか?
ボーデンには瓜二つの顔がいた。まずこの前提がなければこの話は成り立たない。
では、ボーデンは双子だったのか、兄弟なのか。
答えは「テスラ」だ。
もう一度言う。この映画で嘘は1つもない。
シャロンを捕まえたとき、ボーデンがアンジャーに渡したメモは「テスラ」だ。
つまり、ボーデンはアメリカにわたりテスラの技術ですでに分身を作っていた。
というよりも彼は自分の分身だとは気づいておらず、自分にとてもよく似た人間を見つけたのだろう。
分身の存在はテスラも気づいていなかったため、偶然の産物でできた分身を利用して二人で生きていくことにしたのだろう。
プレステージ ネタバレ考察・解説まとめ
マジックに人生をかける。その行為はとても尊いものだ。だがそれゆえに若さゆえに彼らはそれに囚われる。
彼らの人生は「観客のあの表情」を観るためにあるのだ。
この映画は展開が早くて深く考えてる余裕がないのもミスリーディングを誘う要因になっている。
展開が早いだけでなく視点も多い。アンジャー殺しの罪で捕まったボーデンの視点から、牢獄でアンジャー日記を受け取って読み始めるとアンジャーの視点も混じる。そこで、アンジャーが日記を書いている現在と、過去の回想へと視点が変わっていく、実に複雑な構成となっている。
あなたたちは一体、いつ「替え玉」だと気づいたのだろうか。
しかし、私はこういう映画を観て思う。
「実は観客は何も見ていないし、何も知りたくない。騙されていたいのだ」
と。
ミニオンズのイオンカードを作るといつでも映画を1,000円で観ることができます。
家族や友だちでも使うことができますよ!
映画「プレステージ」を見る前にこれもおすすめ
5分で話を忘れてしまう男「メメント」
時間を逆転するとは違うけれど、なかなか複雑なストーリーを構成は秀逸。正直に言うと、プレステージよりもさらに秀逸な映画だ。
わたしたちがやってくる「アス」
脚本のおもしろさを観たいなら「アス」もおすすめ。ホラーだが、びっくりする恐怖というよりじわじわとした恐怖を感じることができる。話の展開が秀逸で伏線もはりめぐらされた良質ホラーだ。
コメント