木村拓哉と二宮和也の主演映画を「関ヶ原」や「日本の一番長い日」の原田眞人が映像化。
原作は雫井脩介。上下巻にわたる長編小説を2時間にまとめているので、到底収まりきる内容ではない。
だから人物の掘り下げや、ストーリー展開には疑問がつく場面もあるが、その問題をクリアするために原作の大改編をおこなっている。
原作は王道ミステリーなのに対して、映画ではもっと大きな現政治の体制や思想色が強い。
原田眞人独特の温度感は、決してミステリー特有の続きが気になるハラハラ感を演出せず、出来る限りありのままを演出する。
音楽も多用せず、独特な音調で進むけれど、観客を飽きさせないように、何でもない話をするだけのシーンでは、意味ありげに踊りを入れてみたりする。
そのため、変に難解になってしまうが、ストーリー自体はそれほど難しい話ではない。
所詮、正義なんてものは愛と情による差別でしかないよねって話だ。
映画「検察側の罪人」予告
映画「検察側の罪人」 あらすじ
都内で発生した殺人事件。犯人は不明。事件を担当する検察官は、東京地検刑事部のエリート検事・最上と、刑事部に配属されてきた駆け出しの検事・沖野。最上は複数いる被疑者の中から、一人の男に狙いを定め、執拗に追い詰めていく。その男・松倉は、過去に時効を迎えてしまった未解決殺人事件の重要参考人であった人物だ。最上を師と仰ぐ沖野は、被疑者に自白させるべく取り調べに力を入れるのだが、松倉は犯行を否認し続け、一向に手応えが得られない。やがて沖野は、最上の捜査方針に疑問を持ち始める。「最上さんは、松倉を、犯人に仕立て上げようとしているのではないか?」・・・。 互いの正義を賭けて対立する二人の検事。彼らの戦いに、待ち受けていた決着とは——。
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映画「検察側の罪人」映画情報
監督 | 原田眞人 |
脚本 | 雫井脩介 |
公開年 | 2020.4.10 |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 123分 |
映画「検察側の罪人」キャスト
最上毅 | 木村拓哉 |
沖野啓一郎 | 二宮和也 |
橘沙穂 | 吉高由里子 |
丹野和樹 | 平岳大 |
弓岡嗣郎 | 大倉孝二 |
小田島誠司 | 八嶋智人 |
千鳥 | 音尾琢真 |
松倉重生 | 酒向芳 |
運び屋の女 | 芦名星 |
最上奈々子 | 山崎紘奈 |
諏訪部利成 | 松重豊 |
白川雄馬 | 山崎努 |
映画「検察側の罪人」ネタバレ感想
人を裁くっていう行為はそれほど高尚なものでもなくて、検察が「自分の描いたストーリーが通るかどうかが全て」であり、真実なんてものはそこに存在しない。
人間は全ての真実を語ることもないし、客観的に話すこともない。
その代わりに検察が客観的に判断して正義を明らかにしようというのが司法が存在する意味でもある。
とはいえ、結局検察官も人間であるから、しばしば自分にとって都合の良い展開にもっていこうとする。
それは、その検察官にとっての正義かもしれない。被害者のためを思って動いているかもしれない。
しかし、すべては自分の中の主観的な正義感でしかないのである。
最上は自分自身の正義を語っていたし、その正義を語る最上を沖野は尊敬していた。
しかし、事件に私怨が絡み、自分ごとになった途端に都合の良い方向に動いていく。
愛憎により人は簡単に正義を書き変える。
感情で物事を考えると、被害者遺族やその関係者が、時効を迎えた憎き犯人を前にして「もう時効だからね」と納得し、許せるはずもない。
その犯人に苦しみを与えるためには、他の影響を差し置いても行動する。
第三者だから、「いや、今回の犯人とは別だし〜」とか、「犯罪者にも人権が〜」とか客観的に判断できるわけで。
当事者にそれはできない。
最上も同じように自分を慕ってくれた人の復讐のため、自分が殺したのではぬるいと、死ぬまで苦しい思いをさせようと、本当の殺人犯を自らの手で殺してまで犯人に仕立て上げようとする。
客観的な検察の立場ではなく、主観的な復讐者の立場に立っているからだ。
これを沖野は非難し、辞職してしまう。
沖野が信じていた「最上の正義」は、「正義を信じている人」の正義だったからだ。
では「正義を信じている人」は、偽善となるのだろうか。
沖野もまた、再び最上に会うことをためらっていたように、会ってしまえば最上のとった行動をすべて責められないことを理解している。
それでも客観性を排除し、感情論で行動した最上のことを、規律を重んじる彼にとってそれは賛同できない。
それが最後の咆哮へとつながっていくのだ。
最上は、ゆきと同じ誕生日である「せっかちで直情的だけど、規律と秩序を重んじる」沖野に理解してほしかったのかもしれない。
真実を探す正義と自分の正義に固執する正義、そのどちらも当事者による正義なのである。
映画「検察側の罪人」を見たならこれもおすすめ
マスカーレードホテル
木村拓哉 x 長澤まさみ x 東野圭吾
タイトル | マスカーレードホテル |
公開年 | 2019.1.18 |
上映時間 | 132分 |
ジャンル | ミステリー |
主要キャスト | 木村拓哉、長澤まさみ |
監督 | 鈴木雅之 |
都内で起こった3件の殺人事件。すべての事件現場に残された不可解な数字の羅列から、事件は予告連続殺人として捜査が開始された。警視庁捜査一課のエリート刑事・新田浩介(木村拓哉)はその数字が次の犯行場所を示していることを解読し、ホテル・コルテシア東京が4番目の犯行場所であることを突きとめる。しかし犯人への手掛かりは一切不明。そこで警察はコルテシア東京での潜入捜査を決断し、新田がホテルのフロントクラークとして犯人を追うこととなる。そして、彼の教育係に任命されたのは、コルテシア東京の優秀なフロントクラーク・山岸尚美(長澤まさみ)。 次々と現れる素性の知れない宿泊客たちを前に、刑事として「犯人逮捕を第一優先」に掲げ、利用客の“仮面”を剥がそうとする新田と、ホテルマンとして「お客様の安全が第一優先」のポリシーから、利用客の“仮面”を守ろうとする尚美はまさに水と油。お互いの立場の違いから幾度となく衝突する新田と尚美だったが、潜入捜査を進める中で、共にプロとしての価値観を理解しあうようになっていき、二人の間には次第に不思議な信頼関係が芽生えていく。そんな中、事件は急展開を迎える。追い込まれていく警察とホテル。果たして、仮面(マスカレード)を被った犯人の正体とは・・・。
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映画よりもドラマに多く出ていたキムタクだけれど、最近は映画に出演して成功をおさめている。そのままに歳をとって大人になっても尖っているキムタク節はやはり彼だからこそなせる業だ。
関ヶ原
原田眞人節の関ヶ原!
タイトル | 関ヶ原 |
公開年 | 2017.8.26 |
上映時間 | 149分 |
ジャンル | 時代劇、ヒューマンドラマ |
主要キャスト | 岡田准一、有村架純 |
監督 | 原田眞人 |
西暦1600年10月21日。長く混迷を極めた戦国時代に終止符を打ち、その後の日本の支配者を決定づけた、戦国史上最大の天下分け目の決戦“関ヶ原の戦い”。その決着に要した時間はたったの6時間だった。 豊臣家への忠義から立ちあがり、史上最大の合戦に挑んだ石田三成。権力に燃え、天下取りの私欲のために戦う徳川家康。圧倒的に有利と言われた三成率いる西軍はなぜ負けたのか? そこには “封印”された真実が隠されていた! そして、三成を命を懸けて守り、愛し続けた忍び・初芽との許されない、淡い“恋”の行方は・・・。 様々な権謀が渦巻く中、多勢に流されず 己の「愛」と「正義」を信じ、貫き通そうとした“純粋すぎる武将”三成を中心に、「愛」と「野望」の激突が、今幕を開ける!!
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ほんとにリアルに時代を描こうとしたらクセのある方言と変わらないくらい聞き取りづらいのは仕方ないかもしれない。
リアルに戦いを見せようとすると派手なバトルや知略による逆転劇より、地味で堅実だけども機械のように戦うのも仕方ないことかもしれない。
天下分け目の大戦だからといっても分かりやすく盛り上げようとしない原田眞人監督は決して大衆向けではないが、じわじわくるおもしろさがある。
原田眞人監督が岡田准一を起用して関ヶ原を映画化。検察側の罪人と同様に独特な雰囲気なので観る人はやっぱり選ぶ。いかんせん何を言っているのか分かりづらいので日本語字幕をつけた方が楽しめる。
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