映画「パラサイト-半地下の家族-」は、「グエムル」「殺人の追憶」のボン・ジュノ監督が手掛ける映画。
主演はボン・ジュノ監督作品に幾度も出演しているソン・ガンホ。
ゴールデングローブ賞の外国語映画賞を受賞し、カンヌ国際映画祭のパルムドールにも輝いた話題の映画であり世界各国からも絶賛されている。
韓国の半地下に住む貧困層の一家が会社を経営する富裕層の家庭に入り込み、生計を立てていく内容だ。
そこには韓国が抱える社会問題を切り取り、皮肉たっぷりなユーモアでドラマティックな展開にした一級品のエンターテインメント作品である。
この記事では、ネタバレは避けるが韓国の抱える事情は知っておいた方が映画のおもしろさが全然異なるので、それらについて紹介する。
映画「パラサイト-半地下の家族-」予告
映画「パラサイト-半地下の家族-」あらすじ
全員失業中で、その日暮らしの生活を送る貧しいキム一家。長男ギウは、ひょんなことからIT企業のCEOである超裕福なパク氏の家へ、家庭教師の面接を受けに行くことになる。そして、兄に続き、妹のギジョンも豪邸に足を踏み入れるが…この相反する2つの家族の出会いは、誰も観たことのない想像を超える悲喜劇へと猛烈に加速していく――。
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映画「パラサイト-半地下の家族-」映画情報
監督 | ボン・ジュノ |
脚本 | ボン・ジュノ |
音楽 | |
公開 | 2020年1月10日 |
製作国 | 韓国 |
製作費 | 135億ウォン(約12億円) |
興行収入 | 1.2億ドル(約130億円) |
受賞 | ゴールデングローブ賞 外国語映画賞 |
カンヌ国際映画祭 パルムドール | |
ロサンゼルス映画批評家協会賞 作品賞 |
映画「パラサイト-半地下の家族-」キャスト
キテク | ソン・ガンホ |
パク | イ・ソンギュン |
ヨンキョ | チョ・ヨジョン |
ギウ | チェ・ウシク |
ギジョン | パク・ソダム |
チョンソク | チャン・ヘジン |
ムンクァンジュ | イ・ジョンウン |
ダヘ | チョン・ジソ |
ダソン | チョン・ヒョンジュン |
映画「パラサイト-半地下の家族-」を観る前に知るべき韓国事情
韓国の貧富格差は能力ではなく相続
まずはじめに、韓国は「自力で大富豪にはなれない」という格差が存在している。
富裕層の中では、アメリカや日本と違い自分で企業して富を得るのではなく、親からの財産を引き継ぐ相続による富がほとんどだという。
映画「パラサイト」でも、半地下に住む家族も頭は良いしそれぞれ能力はあるが貧困を余儀なくしている。
富裕層が能力が低いわけでもないが、同じように能力があっても貧しいままでしかない現状がある。
そういう事実が存在していると認識して映画を観ることをおすすめする。
参考:日本と韓国の大富豪は何が違う? 億万長者の成り立ちに見る韓国の経済格差
韓国は貧富の格差が拡大している
韓国では出自の差以上に、貧富の差が増大している。
所得下位20%の世帯の所得が月額132万4900万ウォン(約13万円)で、前年同期比で7.6%も減少したという。4-6月期ベースでは2003年以降、最大の減少幅らしい。所得下位20%の勤労所得は15.9%も減ってしまっているというのだ。
スポーツソウル日本版
また、この記事の中で最低賃金の引上げについても触れている。
韓国では2018年に最低賃金の引上げが相次いでおり、雇用がさらに減っているという。
パラサイトで半地下に住む家族も、一家全員無職だ。
しかし、働かないのではなく働く場所がないという言い方が正しい。
ここを知らないと少しわかりづらい。
日本で無職というとどうしてもいわゆる「ニート」を想像してしまう。
しかし、韓国では無職が社会問題となっており、意欲が能力があって勤め先がない。
映画の中で、主人公がある男の再就職を心配するシーンがある。
このシーンをわざわざ入れる必要があるのか疑問であったが、優しいというだけではなく、それほどに韓国では就職のしづらい現状があるのだ。
ソウル大学は日本の東大よりも倍率が高い
主人公の息子は、ソウル大学に4回受けるも不合格となっている。
大学にも行っていない男が家庭教師をやるなんてすぐぼろが出るだろうと思ってしまうが、実はそうではない。
男が目指していたソウル大学は、東大と並ぶ名門大学だ。
加えて受験の倍率は東京大学よりも高く、韓国は日本よりもさらに超学歴社会だ。
そのため能力が低いから大学に行けないわけではない。
韓国の半地下事情
主人公一家は半地下に住んでいる。
日本ではあまり馴染みがないが、映画を観れば分かる通り、部屋の半分が地面に埋まった住宅だ。
水圧が低いためトイレが住居の高い部分に置かれ、衛生面も悪い。
映画冒頭で町の消毒作業を部屋に充満させようとしたのも衛生面に大きな問題を抱えているからだ。
そもそも町中に消毒をしようとする時点で、かなり劣悪な環境にいるに違いない。
また、Wi-fiを探すシーンも象徴的だ。
日本ではWi-fiを無料で使える空間はまだまだ少ない。
ましてや家の周辺でWi-fiを使える場所が存在するなんてこともあまりない。
しかし韓国ではいわゆる野良Wi-fiというパスワードすらかかっていないWi-fiが存在するようだ。
それらを使って彼らはネットを活用している。
ジャージャー麺は庶民食で韓牛は高級食
韓国で当たり前のように食されるジャージャー麵。
映画の中でも、ジャージャー麵を食するシーンがある。
しかし、富裕層一家は、その中に「韓牛」を入れる。
韓牛とは、韓国で育てられた牛のブランド名のこと。
日本でも和牛は高いイメージがあるが、韓牛はさらにその上を行く価格のようだ。
映画「パラサイト-半地下の家族-」ネタバレなし感想・考察
映画のポスターがホラー要素強めではあったが、「パラサイト」は韓国の貧困問題におけるテーマを扱った社会派作品だ。
観る前に、韓国事情をある程度知っておくと、細かい要素まで楽しむことができるので一読しておくことを勧める。
ユーモアをまじえて話を展開しているため、若干ライトな作りにはなっている。
しかしこの苦しさを出てくる登場人物の誰に向ければ良いのかすら分からず、さらに心を苦しめる。
この映画は、考えれば考えるほど心をえぐりとっていくだろう。
韓国の抱える社会問題は映画仕立てにはなっているものの決して楽観視できない事態だと認識させられる。
映画「パラサイト-半地下の家族-」を見たならこれもおすすめ
映画「パラサイト」は、日本公開は2020年だが、韓国や一部の国では2019年に公開されている。
2019年のTwitter上で人気が高かったほかの映画も抑えておきたい。
日本の貧困層を描いた作品としては「万引き家族」も有名だ。
「パラサイト」も「万引き家族」も貧困=不幸という図式ではないところもおもしろい。
お金がなくても幸せにはなれる。しかし、周囲はそれを許してくれない。
このもどかしさを観ることができる。
2020年のアカデミー賞は、「パラサイト」も話題に上がっているが、「ジョーカー」も有力候補だ。
2020年1月末にはレンタルも開始されるため、是非ともアカデミー賞前に鑑賞して自身の評価を下して欲しい。
ボン・ジュノ監督の映画、「殺人の追憶」や「グエムル」は日本でも有名であり、特に「殺人の追憶」は評価も高いので、「パラサイト」が気に入ったのであればこちらも見てみる価値はある。
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