「蜜蜂と遠雷」は2019年の邦画。
音楽という狭き門に挑む4人の若きピアニストたちによる苦悩や葛藤を描く。
音楽という芸術性なんてたいして知らないド素人だけれど、それでもこの映画の持つ魅力が存分に伝わってきた。
萌芽にありがちな、心の声を口に出して伝えずに、それでいて重要なことは顔の表情や仕草できちんと伝える噛めば噛むほど愛着の沸く映画だった。
映画「蜜蜂と遠雷」予告
映画「蜜蜂と遠雷」 あらすじ
7年前の突然の失踪から再起を目指す元・天才少女、英伝亜夜(松岡茉優)。“生活者の音楽”を掲げ、最後のコンクールに挑むサラリーマン奏者、高島明石(松坂桃李)。人気実力を兼ね備えた優勝大本命、マサル(森崎ウィン)。今は亡き“ピアノの神”からの「推薦状」を持つ謎の少年、風間塵(鈴鹿央士)。熱い“戦い”を経て、互いに刺激し合い、葛藤し、成長を遂げ<覚醒>していく4人―。その先に待ち受ける運命とは。
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映画「蜜蜂と遠雷」映画情報
監督 | 石川慶 |
脚本 | 石川慶 |
原作 | 恩田陸 |
音楽 | 篠田大介 |
公開年 | 2019.10.4 |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 118分 |
映画「蜜蜂と遠雷」キャスト
栄伝亜夜 | 松岡茉優 |
高島明石 | 松坂桃李 |
マサル | 森崎ウィン |
風間塵 | 鈴鹿央士 |
コンクール審査員 | 斉藤由貴 |
小野寺 | 鹿賀丈史 |
明石の嫁 | 臼田あさ美 |
明石につく記者 | ブルゾンちえみ |
ピアノ調律師 | 槇島秀和 |
クロークの女性 | 片桐はいり |
映画「蜜蜂と遠雷」ネタバレ感想
ここに出てくる登場人物は皆、音楽が好きなんだけれど、子どもの頃のような、何も考えず、ただ純粋な気持ちで音楽を楽しむことが難しくなっている。
かつて天才少女と呼ばれた少女。
完璧さを求められて自由に演奏できない男
家庭を持ち、すべてを音楽に捧げられない男
それぞれ個人の理由はあるが大きな理由として、それで生きていくことを意識するからだ。
ただピアノをやっていれば生きていけるわけではない。親がいつまでも食べさせてくれるわけではない。
もし音楽のみで生きていこうとするならば、誰かから必要とされなければならない。
しかし、その門は非常に狭い。
美しい音楽を奏でるだけではとても生活ができない。
とくに顕著なのが既婚者で子どももいて、仕事もある明石だ。
彼はこの境遇を糧としてコンクールを目指していた。
生活に根差した音楽は、音大でずっと音楽漬けの日々を送るやつらとは違う音を出せるはずだと。
その結果、生み出されたカデンツァはおよそ多くの大衆に響く傑作となったはずだ。
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)
の語感に合わせて流れる音は、聞きやすくて素直に良いと思った人も多いだろう。
しかし、それでも芸術性を超えた天才にはかなわない。
音楽を弾かない時間が1日で自分が分かり、2日で批評家が分かり、3日で観客が分かるとされるこの世界では、練習の絶対量が足りない現実がそこにある。
しかし、音楽を本当に楽しむことは難しいのだろうか。
その問いに答えるべく登場したのが風間塵だ。
世界的に有名なピアニストのユウジの推薦を受けて世界中の音楽家たちを試すために、また世界が音楽であふれていることを知っているピアニストに出会うためにコンクールに出場した。
風間は実に楽しそうだった。
ピアノを持っていない彼だったが、無音鍵盤を使っていつもピアノの練習をしていた。
彼にとっては世界は音楽でいっぱいだったから、ピアノの音を直接聞く必要もなかった。
彼の笑顔は純粋で一遍の曇りもなかった。
その風間は世界が音であふれていることを亜夜に思い出させた。
7年前、母親が他界したことで、演奏会で弾くことができなくなった彼女は、その挫折によるプレッシャーで音楽を心から楽しむことができていなかった。
一度は逃げようとした彼女はすんでのところで思いとどまり、コンクールを見事にやり遂げた。
順位は1位マサル、2位亜夜、3位風間だった。
大きなブランクのある彼女は2位だ。1年後はどうなるか分からない。
完璧さでマサルには勝てていない。おそらくコンクールの審査では完璧さが求められる。
風間が世界が音楽であふれている演奏をできるピアニストは亜夜だといった。
しかし、批評家から一番評価されたのはマサルだった。
「私たちは試されている」
ユウジからの推薦状にそう書いてあった。
自由に音楽を創る者か、完璧に弾く者か、それとも一番楽しんだ者か。
生活をしていくために、好きな何かを諦めて、もしくは生活をしていくために好きなものが好きではなくなって行く感覚は大人なら大なり小なり経験があるかもしれない。
確かにそれは在る。
生きるとはそういうことだ。
しかし、本当にその生き方しかないのだろうか。
何かと引き換えに何かを諦めることがどうしても必要なのだろうか。
この映画を観た後にもう一度自分に問いかけたい。
今あなたのしていることは「楽しめているのか?」と。
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石川慶監督による映画。殺人事件の裏側を暴いていく映画だが、ずっと薄気味悪く気持ち悪い雰囲気で展開していく。
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