「孤狼の血」は、2020年公開の白石和彌監督の映画。
暴力団対策法成立前の昭和末期、広島を舞台に暴力団同士の抗争を描く。
日本の暗部や底辺にスポットを当てて、闇をえぐり出す作品の多い白石和彌監督作品は、おおよその映画が明るくはない。
「孤狼の血」も同じくその流れを受け継いでいるのだけれど、他の作品と比べてドラマチックな仕上がりで、ただただ暗いだけの作品にはなっておらず、感情的にこみあげてくるものがある映画だった。
白石和彌監督の中でも評価が高い作品であり、数多くの映画賞も獲得している。
この監督の作品をいくつか観てきたけど、確かに評価を受けるのが納得できる出来栄えだ。
おすすめ度
82
孤狼の血
4.0
Filmarks
3.8
映画.com
4.1
Yahoo映画
4.5
カラクリシネマ
- 昭和の男臭い東映らしい映画!
- リアルさとエンターテインメントをあわせもっている
- 役所広司は日本の宝
- 暴力描写にリアリティがない
- 汚くて気持ち悪い
「孤狼の血」映画情報
タイトル | 孤狼の血 |
公開年 | 2018.5.12 |
上映時間 | 126分 |
ジャンル | クライム |
主要キャスト | 役所広司、松坂桃李、真木よう子 |
監督 | 白石和彌 |
「孤狼の血」キャスト
登場人物野崎康介登場人物 | キャスト |
---|---|
大上省吾 -呉原東署 主任 | 役所広司 |
日岡秀一 -呉原東署 大上のメンバー | 松坂桃李 |
嵯峨大輔 -広島県警 監察官 | 滝藤賢一 |
五十子正平 -五十子会 会長 | 石橋蓮司 |
金村安則 -14年前に殺された | 黒石高大 |
加古村猛 -加古村組 組長 | 嶋田久作 |
野崎康介 -加古村組 若頭 | 竹野内豊 |
吉田滋 -構成員 | 音尾琢真 |
瀧井銀次 -右翼 | ピエール瀧 |
上早稲二郎 -呉原金融の経理係 | 駿河太郎 |
上早稲二郎 -尾谷組 組長 | 伊吹吾郎 |
一ノ瀬守孝 -尾谷組 若頭 | 江口洋介 |
永川恭二 -尾谷組 構成員 | 中村倫也 |
高木里佳子 -クラブのママ | 真木よう子 |
高坂隆文 -記者 | 中村獅童 |
「孤狼の血」予告
「孤狼の血」あらすじ
昭和末期の暴力団対策法施行前の抗争を描く。日本の暗部や底辺ににスポットをあてて、闇をえぐり出す作品の多い白石和彌監督が撮る映画は決して明るい作品ではなく孤狼の血もその1つ。しかし、その中でも特に評価の高い作品で、数多くの映画賞を獲得している。
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「孤狼の血」ネタバレ感想・評価・解説
※これより先は核心には触れませんが、あらすじには触れます。
観ていて熱くなる!男が憧れる映画!
暴力団の存在をリアルに感じたときに、決してかっこいいとは思わないだろうし、恐怖の対象にしかならないのだけれど、それが映画となると印象が全然違ってくる。
それは、バイオレンス要素だ。
北野武監督の「アウトレイジ」のように、バイオレンスの持つかっこよさがこの映画にも出ている。
登場人物は皆、自分の保身かメンツを考える輩ばかりなのだけれど、死が身近にある場所にいる人間の覚悟や、アウトローが持つ異常性は、男が興奮する要素を兼ね備えている。
ただ、暴力行為が横行するだけの映画だと、「凶悪」のように胸くそ悪く陰鬱な気持ちになるばかりだが、「孤狼の血」では、大上にとっての信念とヤクザたちの覚悟、そして警察内部での暗部が入り乱れ、ドラマチックに仕上がっている。
大上のような人間になりたいかと問われると、「NO」としか言葉が出てこないのだけれど、自分の信念を貫き通す男たちの生き様にはやはりしびれるものがある。
「孤狼の血」は、ミニシアターで上映される映画のようにシュールでありつつも、血をたぎらせるような感情を呼び起こさせてくれる熱い映画でもある。
まさに、邦画を好きで良かったと思える映画である。
松坂桃李をはじめとした役者の凄み
「孤狼の血」の主役は、役所広司だ。
「渇き」であったよなクセのあるヤバい役どころを演じている。
外道のような行動は良くも悪くも彼の魅力を引き立てる。
しかし、何と言ってもここは松坂桃李だ。
彼のあどけない顔で暴力団の中でよろしくやっていくのはかなり無理があるはずなのだけれど、暴力団と関わっていく中で、裏の世界を知り、この世に正義など存在しないことを悟り、己の無力さと屈辱を味わったうえで変わっていく表情の変化に注目して欲しい。
「孤狼の血」の続編「凶犬の眼」の制作が予定されているが、裏と表の世界を知った日岡がヤクザの世界とどう接していくのか楽しみだ。
ヤクザの親玉だけど好かれない役で毎回登場する石橋蓮司や、めちゃくちゃ良い人を演じる一方でめちゃくちゃ怖い人を演じる江口洋介。
白石監督作品によく登場する音尾琢真や今や映画に引っ張りだこの中村倫也など、魅力のある俳優がたくさんそろっているのもこの映画が評価を受けている要因の1つだろう。
暴力団対策法とは
映画を観るうえで、時代背景について知っておくとより楽しめる。
映画の設定は、昭和の終わりごろ。
今よりも暴力団の存在が大きく、時にそれは堅気の人間にも危害が及んでいたほどだった。
平成3年に暴力団に関する法律が成立するまでは、大上のような人間が綱渡りしながら均衡を保っていたのだ。
昔の映画やマンガなどで、「誰に断って商売してるんだ!?」とか立ち退きさせるために飲食店に嫌がらせ行為をするようなシーンを見たことないだろうか。
反社との関わりを減らすのは、日常生活でも見かける。
契約時にも、「反社ではありません」のチェックをつけたり、反社と関わった人間は、その関係性に関わらず大バッシングを受けるまでに至っている。
そのような行為を違法としたのが、暴力団対策法である。
それまでは大上などの警察が、堅気を守るために時には違法行為をしてまで対応していたことだ。
もちろん、これら犯罪行為がなくなることはなく、一般市民の目に触れにくい地下に潜っていくことで、犯罪の実態が見えにくくなるという問題も指摘されているが、それでも住みやすい世の中にはなっている。
映画の中でもあるように、法律で悪事を縛ることは、一見平和になるように見えるけれど、それは闇をより深い所に潜らせる結果にもつながっている。
この映画を見て何が正しくて何が間違っているのか分からなくなる。
果たして暴力団は必要悪なのだろうか。
これをうまく操り、ヤクザ同士の均衡を保ちながら間を取り持っていた山上のような存在こそが必要悪なのかもしれない。
「孤狼の血」は実話ベースの物語?続編は?
「孤狼の血」は、そのリアルな描写から、本当にあったのかと思うけれど、これは実話ではない。
場所も広島の呉原という実在しない場所を設定している。
原作は柚月結子原作で、「孤狼の血」以外にも「凶犬の眼」や「暴虎の牙」など3部作になっている。
第2作となる「凶犬の眼」は続編として制作が予定されている。
ちなみに白石和彌監督の「凶悪」や「日本で一番悪いやつら」は、実話に基づく話である。
見るに堪えないのは暴力行為よりも豚!
ヤクザを取り上げた映画なので、暴力行為はもちろんある。
その描写はそれほど酷ではないが、やはりそれでも痛々しい部分はたくさんあるし、観たくない気持ち悪い映像もいくつか存在する。
血が出たり、銃で撃たれたり、気を失うまで殴られたり、白骨化する手前の死体を見たりと、その気持ち悪さにはいろいろあるが、私が一番不快な気分になったのは豚だ。
いつも食糧として食べている豚が、他のどの暴力よりも不快であり、食欲を失せる存在だった。
豚の糞の描写や、それを人に食わせるシーンなどはどうしても受け入れがたく、これが原因でこの映画を嫌いになる人もいるのではないかと思うほどだった。
それ以外は邦画としての良さと、エンターテイメントとしての良さを併せ持つ、非常に完成度の高い映画だったと言える。
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