「エスター ファーストキル」は2023年の映画。
前作から13年。
不幸のあった夫婦がエスターを養子として迎え入れるところから始まる「エスター」。
「エスター ファーストキル」では、孤児になる前の前日譚が描かれ、前作では少し触れられただけの精神病棟の話や前の家族の話を深掘りしていく。
主役は当時12歳だったイザベル・ファーマンが25歳で再抜擢。
9歳の女の子を再度演じるのだが、13年ぶりとは思えないほどの容姿の変わらなさには驚きを隠せない。
エスターはなぜ精神病棟にいたのか、なぜ前の家族は全員火事で死ぬことになったのか。その謎が明らかになる本作。
予測のつかない展開により90分間飽きることなく見ることはできる。しかし、観客に予想させたくないと言わんばかりの脚本は、少しばかりぶっとんでいた。
また、その流れに至ってからの展開も微妙。演出もありきたりなホラー要素を取り入れているだけで、恐怖感も少ない。
なによりも、子供の姿をした不気味なナニカが映画の醍醐味だったのに、それが全く表現できていないのは残念。
内容をおさらいしながらネタバレ考察・解説を行っていく。
エスター ファーストキル
(2023)
2.1点
サスペンス
ウィリアム・ブレント・ベル
イザベル・ファーマン、ジュリア・スタイルズ
- 2009年エスターの前日譚
- 行方不明の娘が4年ぶりに帰ってきたら変だった
- 前作のエスター役イザベル・ファーマンが続投
- 奇をてらいすぎな脚本
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映画「エスター ファーストキル」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
エスター/リーナ | イザベル・ファーマン |
トリシア・オルブライト | ジュリア・スタイルズ |
アレン・オルブライト | ロッシフ・サザーランド |
グンナー・オルブライト | マシュー・アーロン・フィンラン |
ドナン刑事 | ヒロ・カナガワ |
映画「エスター ファーストキル」ネタバレ考察・解説
エスターは何の病気なのか?
前作ですでに明らかになっているが、エスターは、実年齢33歳の成人女性である。
しかし、見た目は9歳にしか見えない体つきをしている。
この見た目に騙された人々が次々に殺害されているわけだが、この病気は下垂体性機能不全と呼ばれる。
簡潔に説明すると、成長に十分なホルモンを算出できず、身長が伸びず幼児体型のままになってしまう病気だ。
また、この病気によりエスターは精神的に不安定な状態となり、人間に対して攻撃的にな人格になっている。
また、本作の初期設定として、エスターは幼い頃に父親からの性的虐待を受けている過去を持つとされている。
なぜエストニアの精神病棟に入っていたのか?
(C)2021 ESTHER HOLDINGS LLC and DC ESTHER HOLDINGS, LLC. All rights reserved.
「エスター ファーストキル」の冒頭は精神病棟に収容されているシーンから始まる。
前作「エスター」で脱出したと報告のあった病院であり、精神病棟に入れられたのは、同じように家族として入り込んだあげく、一家を殺害したためである。
そして、エスターことリーナは、人々を誘惑するという才能を発揮し、脱走を試みる。
病棟の職員を操って病院を脱出し、セラピストを殺した後、行方不明者リストの中から自分に似た子供を探し出した。
その子供の名前がエスターである。
リーナは、エスターに名前を変えて、アメリカにいる家族の元へ行くのだった。
その家族は、母親のトリシア、父親のアレン、そして兄のグンナーの4人家族。4年前に行方不明になったエスターを迎え入れるも、どこか不穏な空気が漂っていた。
なぜ、トリシアはドナン刑事を殺害したのか
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子供にとっても4年間は、見た目を変えるには十分な期間である。赤の他人であれば多少雰囲気が違っていても気づかないかもしれない。
しかし、いくら4年経過したからといって、行方不明の娘になりすますということはなかなか難しい。
母親のトリシアだけでなく、セラピスト、行方不明の捜査をしていた刑事のように、敏感な人たちは同じように違和感を感じていた。
しかし、物語の中盤で大きく話が展開する。エスターによる一方的な殺戮が始まっていくかと思いきや、狂気を発揮したのはトリシアだった。
ドナン刑事はエスターの指紋を調べることで、別人だと確信するも、直後にエスターによってズタズタに刺されてしまう。
しかし、エスターがとどめを刺そうとする前に、銃で撃ち殺したのはトリシアだった。
トリシアは最初からエスターが別人だということを見抜いていた。すでにエスターは兄のグンナーによって殺されていたからだ。
妹に対して攻撃的だったグンナーが、勢いで殺してしまったのだという。トリシアは家族を守るためにその事実を秘密にしたのだ。
事実を知らないのは父親のアレンのみであり、トリシアもグンナーもエスターが別人だということを最初からわかっていて、泳がしていたのだった。
トリシアの目的は家族を守ること。エスターが行方不明になって以来、アレンは人が変わってしまった。
家族が幸せであり続けるためにエスターのフリを続けることを強制するのだった。
ラスト なぜアレンはエスターを選んだのか?
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しかし、お互いが信用ならない殺人者たちであることから、この関係は長く続かない。
エスターが、アレンと親密な関係を築こうとする行為はトリシアの幸せな家族のルールに反していたし、サイコパスの殺人鬼と一緒に暮らすこと自体が狂気じみていた。
トリシアも死んだ事実よりも行方不明の方が悲惨だと言っていたように、エスターを長く生かすつもりもなかった。
そして、アレンが出張に出かけたタイミングで、殺し合いが始まる。
殺し合いの結果、エスターはグンナーを殺し、家に火をつける。
クライマックスでは、トリシアとエスターはともに屋根の上から落ちそうになる。駆けつけてきたアレンがそれを見つけて二人を助けようとする。
この時点ではアレンはまだエスターの正体に気づいていない。
しかし、エスターが母親にやられたと主張し、トリシアが「エスターは大人の女性で、私たちを騙している」といったことで、アレンは察知したのだ。
この火事はトリシアが引き起こしたものだと。
その一瞬の気の迷いにより、トリシアに手を差し伸べるのが一瞬遅れ、トリシアは転落死してしまう。
しかし、アレンも、エスターに入れ歯が入っているのを見てトリシアの言ったことが本当のことだとわかる。しかし、エスターにより突き落とされて死亡。
家族は全員死亡し、エスターだけが生き残る結果となった。
エスターにとっても本意ではなかった。彼女はアレンと共に生きることを願っていたのだ。
エスターの精神状態や内面についてはあまり触れられていないが、「父親からの虐待の過去」をトラウマにもつことで、父親を誘惑する行動が見受けられる。
正体が怪しまれたときに残ることにしたのも、アレンと離れたくないという気持ちからであったし、前作「エスター」でも父親には愛されようとする行動が目立っていた。
しかし、結果的には拒絶されることで殺すという選択をとってしまうのだ。
狂気の悪魔「エスター」の前日譚がわかったわけであるが、最初から正体を知っているわけなので不気味さは薄れている。
また、ホラー要素もありきたりなシーンの連続で、エスターだからこその恐怖感はない。
ファーストキルというタイトルなのに、すでに初めてではない点も含めて色々と残念な部分が目立つ映画だった。
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