ファイル共有ソフト「Winny」。2000年代前半を過ごした若者たちは少なくとも名前ぐらいは聞いたことあるだろう。
インターネットが一般家庭まで普及しはじめ、でもまだ全世帯に当たり前に存在するほどでもないギリギリの時期、Winnyというファイル共有ソフトが大きな盛り上がりを見せていた。
日本だけでなく世界中で利用され、違法な音楽ファイルや動画がネット上に蔓延し、大問題となっていた。匿名性が高いため、その中には機密書類も紛れ込み、単なる著作権の問題では済まされなくなった。
しかし、2004年、開発者の逮捕という衝撃的な事件が起きた。この映画は、逮捕から裁判までの一連の流れを追うとともに、その背後に見え隠れする京都府警の思惑や利権に焦点を当てる。
まだSNSといえば2ちゃんねるというアングラなものしかなく、メディアや地上波が情報を牛耳っていた時代、「違法なファイルを蔓延させるモノを作った製作者は悪」と決めつけていた人も多い。
しかし、本当にそうだったのか?なぜ開発者の逮捕が起きたのか?裁判の流れを振り返りながら当時の状況を掘り下げていく。
Winny
(2023)
日本中を騒がせたネットの事件の闇
3.5点
ヒューマンドラマ
松本優作
東出昌大、三浦貴大
- Winny開発者逮捕の裏側を暴く
- 仮想通貨の前身となる技術を1ヶ月で作った男の逮捕
- 無罪を勝ち取るまでにかかった7年の道のり
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映画「Winny」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
金子勇 | 東出昌大 |
壇俊光 | 三浦貴大 |
仙波敏郎 | 吉岡秀隆 |
北村文哉 | 渡辺いっけい |
金子勇の姉 | 吉田羊 |
秋田真志 | 吹越満 |
映画「Winny」ネタバレ考察・解説
「Winny」とは?
Winnyとは、P2Pという技術を用いたファイル共有ソフトで、個人のパソコン同士でファイルのやり取りができる画期的な技術を使っていた。
個人でファイルをやり取りするなんて当たり前じゃないかと思うかもしれないが、メールで何かを添付したり、YouTubeに動画をアップするのも、企業のサーバーを介している。
メールであれば、企業が管理するサーバーを経て個人へ渡るし、YouTubeもGoogleが管理している巨大なデータセンターを通っている。
P2Pで代表的な例はLINEだ。チャット上で共有されている動画や写真は、LINEが管理しているわけではなく、二つの端末の中で管理している。
iPhoneのAirDropもそうだ。だからシステムダウンという概念がほぼなく、データを溜め込むサーバーも必要ないので、管理費を安く抑えられる。
LINEが無料で使える理由の1つにこの技術を使っていることが挙げられるだろう。
また、仮想通貨もP2Pの技術が使われている。そこが中央集権的な銀行が不要だといわれる理由であり、データを管理する必要がないため匿名性が高いと言われる。
その先駆けとなる技術を2002年に作ったと聞けば、何となくその凄さがわかるのではないか。
開発者の逮捕は正当なのか?
金子氏を演じた東出昌大を見ると、本人は全く悪意なくWinnyを作ったことがわかる。まだパソコンが高すぎて買えない時代に本屋でプログラミングの本を立ち読みし、電気屋でプログラムを組むほどに没頭していた。
彼の技術力はホンモノで、Winnyの開発も1カ月程度だったという。プロトタイプを作り、2ちゃんねるを使ってフィードバックを得て、次の開発に繋げる。ユーザーファーストのアジャイル手法をとった開発は当時としては画期的だった。
しかし、金子氏は、2004年に京都府警に逮捕されてしまう。
デジタルな世界は今でこそ普通だが、それでもまだリテラシーの差は大きい。しかし、まだガラケーのこの時代、インターネットは家の中やネットカフェでしかできなかったため、若者でさえも常に使う人は少なかった。
デジタルデータの商習慣が全く整っていないころに、著作権で守られていた製作物の状況は一変した。
多くの利権が損害を被ることで、悪質なユーザーは逮捕者まで及んだ。匿名性が高く、違法なモノを扱っているため、コンピュータウイルスも拡散させやすい。職場でWinnyを使っている人間たちの機密情報も流出した。
職場のパソコンで違法なファイルを扱うなど、リテラシーが上がってきた現在ではあまり考えにくいが、当時はそんな状況だったのだ。
しかし、あくまで違法なファイルを扱っている人間が悪いのであって、技術を開発したものには罪はない。包丁で人を刺したら、捕まるのは刺した人であって、包丁を作った人ではない。
日本人で、この技術を作れることは誇るべきことである。もしかしたら仮想通貨の技術も日本がリードしていたのかもしれないし、アメリカ一強のIT企業の状況も少しは変わっていたかもしれない。
当時は、GoogleよりもYahoo、Appleは iPodを発売した頃だし、Amazonも書籍の取り扱いがメイン。Facebookはサービス開始さえしていない。
これらがデジタルな世界を完全に掌握してしまった現在、中央集権をもたない仮想通貨の技術に再び注目が集まっている。
2002年に今でも使える技術を作り上げた恐るべき人物が金子氏だったのだ。
しかし、未知なるナニカに人は恐怖を感じる。今を壊そうとする者にフタをし、締め出そうとする。それを守ろうとしたのは、2ちゃんねるでその技術を目の当たりにした人間たちや、一部の技術者だけだ。
Winnyの裏で起きていた事件の一つに警察の裏金問題がある。吉岡秀隆演じる仙波敏郎は実在の人物で、愛媛県警で横行していた裏金問題を内部告発した人物だ。
一般市民の架空の名前や金額、日付などを書かせ、カラ計上して裏金を作る。その行き着く先は署長の懐だったという。この問題は、大きな問題となり、警察の信用は失墜していた。発覚したのは匿名性の高いWinnyで証拠が流出したのがきっかけだ。
用意されたモノを良いことに使うのも悪用するのも使う側の人間たちだ。
実在した2つの事件を合わせ、Winny開発者の逮捕という矛盾をつきつける。
金子氏は無罪になれたのか?現在は?
金子氏は一審では有罪判決を受けた。映画はそこで幕を閉じるが、7年かけて無罪を勝ち取ることになる。
金子氏は技術者として、未来の技術者が萎縮してしまわないように闘い続けた。開発した技術が悪用されることで開発者が逮捕されるのであれば、日本におけるテクノロジーの発展は絶望的になる。
金子氏は後継者のために自分を犠牲にして闘ったのだ。しかし、無罪を勝ち取った1年半後、金子氏は心筋梗塞により急死する。
2013年、42歳という若さだった。
日本がテクノロジーで一戦にいないこの状況は、金子氏の事件がもしなければもっと違っていたのだろうか。
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